安全衛生管理体制ってどんな制度? 3つのポイントを解説!

多くの職場で実施されている「安全衛生管理体制」。どのような制度なのか知っていますか? 安全衛生管理体制とは一定の条件を満たしている職場で実施しなければならない制度で、従業員が安全に、そして健康に働くことができるよう職場内を整える為の制度です。しかしながら、その詳しい内容について知らない方も多いと思います。

そこで本日は、労働安全衛生法によって規制される安全衛生管理体制について詳しく解説致しましょう。安全衛生管理体制の具体的な内容や安全衛生管理体制を整備するための取り組みなどについてもご紹介しますので是非参考にしてみてください。

1. 労働安全衛生法ってどんな法律?

安全衛生管理体制を規制している法律。それが労働安全衛生法です。しかしながら「労働安全衛生法って労働基準法のことでしょ?」と思う人もいるようですね。実は、労働安全衛生法は労働基準法とは全く別の法律です。では、労働安全衛生法とはどのような法律なのでしょうか? 3つの点をご解説しましょう。

1-1. 労働災害を防止を徹底

私たちが普段行う仕事の中には危険な仕事もたくさん存在しますよね。そのような仕事を行う時に心配になるのが労働災害です。労働災害によって従業員が怪我をしたり病気になったりすると仕事効率は悪くなり、会社の評判も下がってしまうことでしょう。このような状況にならないようにするために労働安全衛生法は存在しているのです。事業者はこの法律を守って、

  • 労働災害の防止
  • 労働災害にいたりかねない作業の防止
  • 他の業者の労働災害防止に協力する

という義務があります。

1-2. 労働者の健康管理の徹底

あなたの職場では定期的な健康診断が行なわれていますか? もしそうなら、あなたの職場は労働安全衛生法を良く守っている職場だと言うことができます。なぜなら、労働安全衛生法では事業主が働く従業員の健康管理を正しく行なうよう義務付けているからです。それには毎年行われる健康診断やその正しい結果の通知等が含まれます。

労働安全衛生法によって、私たちは安全で衛生的な職場で働くことができるのです。労働安全衛生法にはこのような目的があります。そしてこれら目的を達成するために安全衛生管理体制の実施が義務付けられているのです。では、安全衛生管理体制にはどのようなことが含まれるのでしょうか?

2. 安全衛生管理体制とは?

安全衛生管理体制をわかりやすく言うなら、「従業員の安全と健康を守るために会社内にある組織」ということができるでしょう。ですから組織に組み込まれている人たちは従業員の安全と健康を守るために自分の責任を果たさなければなりません。では、安全衛生管理体制に組み込まれている人たちの役割についてご説明しましょう。

2-1. 統括安全衛生責任者

安全衛生管理体制を取りまとめる責任を担っているのが統括安全衛生責任者です。統括安全衛生責任者は事業所内の危険な箇所を見極めて怪我や健康被害を防ぐ処置をしなければなりません。また、安全衛生の計画を作成し、それを実施し、実施内容を評価する必要があります。

労働災害が発生してしまった場合は、その原因を調査して再発しないように努めなければなりません。この他にも従業員に対する安全教育や定期的な健康診断の実施計画等を取りまとめる必要があります。統括安全衛生責任者には、

  • その事業所を管理する責任や権限を持っている者(部長や工場長等)

を専任する必要があります。

2-2. 安全管理者

安全管理者とは事業所内で働く従業員の安全を監督する者のことです。作業場全体に注意を払い、危険な作業を行っている場合は直ちに改善する必要があります。また、従業員たちの安全教育を徹底することが必要です。

安全管理者になる人は、

  • 理科系大学・高専を卒業し、実務経験が2年以上で国の研修を修了している
  • 理科系学科の高校を卒業し、実務経験が4年以上で国の研修を修了している
  • 労働安全コンサルタントの資格を持っている

のいずれかの条件を満たしていなければなりません。

2-3. 衛生管理者

衛生管理者とは事業所内で働く労働者の健康や職場の衛生状態を管理する者のことです。衛生管理者は事業所内で従業員の健康に悪影響を与えそうな場所を見極め、必要な改善を行います。そのため、定期的に事業所を回って衛生環境に問題が無いかチェックする必要があるのです。

また、事業所で働く従業員に、自分たちの健康を守るために必要な衛生管理方法について教育する責任もあります。衛生管理者になる人は、

  • 第1種もしくは第2種衛生管理者
  • 衛生工学衛生管理者免許の取得者
  • 医師
  • 歯科医師
  • 労働衛生コンサルタント
  • 厚生労働大臣が定める者

という条件のいずれかを満たしていなければなりません。

3-4. 産業医

産業医は事業所で働く従業員の健康や作業管理の維持管理を行うのが仕事です。従業員の健康に直接関わる仕事が多いため、医学に対する知識が必要になります。また、事業所内で健康被害が発生した場合はその原因を調査し再発防止に努めなければなりません。産業医になる人は、

  • 労働者の健康管理を行うのに必要な知識についての研修を修了した者
  • 産業医の養成を目的とした産業医科大学を卒業し、実習を履修した者
  • 労働衛生コンサルタントで保険衛生試験に合格した者
  • 大学で労働衛生に関する科目を担当する教授・准教授・講師である者。(以前そうだった者も含む)
  • 厚生労働大臣の定める者

という条件のいずれかを満たしている必要があります。

3. 安全衛生管理体制をしっかり整備するために

従業員の安全と健康を守るために欠かせない安全衛生管理体制。それをしっかり整備するためには会社としてどのようなことに取り組めばいいのでしょうか? では、役立つポイントを2つご紹介しましょう。

3-1. 誰を専任するか考える

安全衛生管理体制をしっかり整備するためには、その枠組みを作ることが大切です。ですから、社内で誰を専任するのかということをしっかりと考えなければいけません。資格を持っているだけでなく、危機管理意識の強い人を専任する必要があります。そうすることによってしっかりとした安全衛生管理体制を作ることが出来るのです。

3-2. 従業員を教育する

安全衛生管理体制の枠組みが整ったなら、今度はそれをもとに従業員の教育を行う必要があります。

  • 事業所内で安全に作業するために必要マニュアルの整備
  • 従業員一人一人の安全と衛生に関する意識を高めるミーティングの実施
  • 安全や衛生に危険が迫りそうなことに関する対応策の検討

等を行なう必要があるでしょう。安全衛生管理体制は設置するだけでは不十分です。従業員全員が安全意識を向上させるのを助けること、これが安全衛生管理体制の目的なのです。

まとめ

いかがでしょうか? この記事では、労働安全衛生法とそれに含まれる安全衛生管理体制について3つのポイントをご紹介しました。

労働安全衛生法とは?

  • 労働者の安全と健康を守るためにある法律。労働基準法とは別。

安全衛生管理体制とは?

  • 労働安全衛生法に含まれる制度。
  • 従業員の安全と健康を守るために会社内で組織する必要がある

安全衛生管理体制を実施するためには?

  • ふさわしい人材の選定と労働者に対する教育が必要

労働安全衛生方で定められる安全衛生管理体制とはこのような制度です。正しく理解するために是非お役立てください。