
労働衛生の3管理とは? 重要性や取り組み方のポイントを解説
安全で健康的に仕事をすることは、労働者の権利でもあります。労働者が安全に、健康的に仕事をするためには、労働衛生の3管理を守ることが大切です。
そこで今回は、労働衛生管理や労働衛生対策についてご紹介します。労働衛生対策をしっかりと行うことは、結局は会社の利益につながると言いますが、それはいったいなぜでしょうか? また、衛生管理者の役割にはどんなものがあるのでしょう?労働衛生管理者の方や労働衛生管理者の資格取得を目指している方は必見です。
1.なぜ、労働衛生対策は重要なのか?
この項では、労働衛生対策の重要性をご紹介します。長引く不況から、利益追求を第一にする企業が増えていますが、労働衛生対策を怠るとこんな怖いことが起こるかもしれません。
1-1.事故の防止
労働衛生対策をおろそかにすると、必然的に職場の事故発生率が上昇します。これは何も、危険な物を取り扱っている職場だけに起こる問題ではありません。
たとえば、長時間勤務やサービス残業を続けた結果、心身のバランスを崩し病気になったりするケースも職場の事故の一種です。現在はそのような事態が起こると、職場に労働基準監督署の捜査が入るケースも多いでしょう。職場にとっては大きなマイナスイメージになります。
1-2.職場周辺の環境維持
労働衛生対策を怠った結果、自分たちが取り扱っている物質の危険性を知らずに誤った扱いをして大きな事故が起こったケースもあります。このような場合は職場だけでなく、職場周辺の環境や住民へも悪影響を与えるでしょう。そんなことが起これば、その職場は多大なダメージを受け、場合によってはもうそこで事務所や工場などを続けていけないかもしれません。そのようなことを防ぐためにも労働衛生対策は大切です。
1-3.従業員の流出を防ぐ
労働衛生対策を無視すれば、従業員への負担は重くなります。その結果「ブラック企業」などという不名誉なレッテルを張られかねません。そうなると従業員流出しますし、優秀な人材も集まりません。企業にとっては大きなダメージとなるでしょう。
2.労働衛生の3管理とは?
では、労働衛生対策の柱となる労働衛生の3管理とはどのようなものなのでしょうか? この項では労働衛生の3管理の内容や、管理方法をポイントをご紹介します。
2-1.労働衛生の3管理
労働衛生の3管理とは、
- 作業環境管理
- 作業管理
- 健康管理
のことです。作業環境管理とは、労働者が安全に仕事が行えるように作業環境を整えることです。一例をあげると、適切な温度や質の管理、空気中の危険物の濃度や粉じんの管理、さらに騒音の管理などがあります。作業環境が適切に行わなければ後の2つの管理も行えません。
作業管理とは、従業員が健康や安全を損ねないように仕事をしているか管理することです。
危険な物を取り扱う仕事には、安全に業務を執り行えるようにマニュアルがあります。しかし、作業の効率化を図るためにマニュアルを無視したやり方を従業員が行っていたら、事故の危険性が高くなるでしょう。
また、一見作業管理などしなくてもよさそうなオフィス業務でも、極端な残業が長時間発生した場合は作業管理を行わないと、従業員が健康を損ねるかもしれません。
このように、作業管理は従業員ひとりひとりの心がけも大切です。健康管理は、従業員の健康状態をチェックすることにより、安全で健康的に仕事ができているか確認することです。企業は従業員に年1回の健康診断を行わなくてはならないと定められていますが、これも健康管理のひとつでしょう。
たとえ危険な物質を扱っていなくても、仕事が過酷だったり残業を続けなければならない状態だったら従業員の健康状態に影響がでます。また、労働者の健康状態が悪化しているのに気が付かなければ、その被害が職場周辺に住む住人にまで広がる可能性があるのです。
さらに、労働者の精神面での健康状態が悪化してしまえば自ら最悪の選択をすることもあるでしょう。そのような場合は、労災に認定されることもあり、企業にとっては大きなダメージになります。
2-2.労働衛生の3管理をしっかり行うことのメリットは?
労働衛生の3管理をしっかり行うことは、企業の利益にもなります。作業環境管理がしっかりと行えていれば、労災事故の発生率も減るでしょう。また、作業環境管理がしっかりと行っていれば自然と作業管理も行えます。作業環境を整えるためには、作業(仕事)も正しく行わなくてはなりません。
さらに、作業環境管理が正しく行われていれば、従業員の健康管理も比較的楽に行えるでしょう。つまり、3管理はたがいに連動しているので、ひとつをしっかり行えば残りの管理も半ば自動で気に行えるのです。
この3つの管理がしっかり行えている企業は、従業員を大切にしているというイメージを抱かれやすく、「ブラック企業」に対し、「ホワイト企業」と呼ばれることも多いでしょう。また、コストなどは多少かかっても従業員が実力を発揮しやすい環境で仕事ができていますから、離職者も少なく長い目で見ればコストを上回る利益を上げやすいのです。
3.衛生管理者にできることは?
では、労働衛生の3管理をしっかり行うために衛生管理者にできることはなんでしょうか? この項ではそれをご紹介します。
3-1.作業環境測定で職場の環境をチェックする
危険物などを取り扱っている職場や仕事中に騒音を発生するような職場は、定期的に作業環境測定を実施する必要があります。これも衛生管理者の職務のひとつです。作業環境測定は空気中の危険物の濃度や騒音の大きさなどをはかり、規定値内に収まっているかチェックします。規定値を超えた場合は直ぐに改善をしなければなりません。
3-2.職場巡視で作業管理をする
衛生管理者の職務に、職場巡視があります。この際に従業員が仕事のマニュアルを守っているかや、仕事量は適量かどうかなどをチェックしましょう。特に事務職などを行う一般的なオフィスは職場巡視が作業環境の管理も兼ねていますので、しっかりと巡視する必要があります。
しかし、従業員に頭ごなしに改善を求めても反発されるばかりでしょう。「困った事は無いですか」など、相談しやすい雰囲気で職場巡視をすれば、悩み事を相談してくれる人が出やすいかもしれません。
3-3.健康診断は健康管理の基本
衛生管理者の大切な職務に、健康診断の実施と結果の管理があります。企業は従業員に健康診断を受けさせる義務がありますが、従業員は健康診断を受けなくても特に罰則はありません。しかし、健康診断を受けない人が多いと健康管理がうまくいきません。
ですから衛生管理者は、できるだけ従業員全員が健康診断を受けやすい日程を組む必要があるでしょう。また、健康診断の結果に問題がある従業員は、産業医との面接を受けさせるなどフォローをすることも大切です。
4.おわりに
いかがでしたか? 今回は労働衛生対策や、労働衛生の3管理をしっかり行う方法などをご紹介しました。
まとめると
- 労働衛生対策を怠ると企業の不利益にもつながる
- 労働衛生の3管理をしっかり行えば、職場は働きやすく企業の利益もアップしやすい
- 衛生管理者の職務は労働衛生の3管理をしっかり行うためにも重要である
ということです。労働衛生は利益アップの前にはないがしろにされがちですが、労働衛生対策を怠れば結局は企業にとってマイナスになるでしょう。衛生管理者の責任は大きいのです。