
細菌性食中毒の原因菌にはどんなものがあるの?その予防法とは?
冬は食中毒とは無縁の季節。そう思っている方も多いでしょう。
しかし、冬場も食中毒の危険はゼロではありません。
そこで、今回は冬に患者が多くなる細菌性食中毒についてご紹介します。
細菌性ですから、原因菌があるのです。
今回はこの原因菌の種類や性質についてもご説明しましょう。
食中毒も菌によっては命の危険があるのです。
特に、年末年始はおせち料理など作ってから時間がたったものを食べることも多いでしょう。
その際に気をつけるべきことなどもご紹介します。
飲食業の方や主婦の方はぜひこの記事を読んでみてくださいね。
1.細菌性食中毒とは?
食中毒には、細菌性とウィルス性のものがあります。
細菌性はさらに感染型と毒素型に別れるのです。
私たちの身の回りにはたくさんの細菌が存在しています。
その細菌の一部が食物内で大量に発生すると、それを食べた人が細菌に感染して食中毒を引き起こすのです。
感染型とは、菌に感染した食物を食べることによって発生します。
毒素型とは、食物で繁殖した細菌が出す毒素を体内に取り入れることによって発生するのです。
衛生環境の発達した日本では、食中毒の発生件数自体は多くありません。
しかし、一度食中毒が発生すると、重篤な症状になり命の危険があることも少なくないのです。
では、冬の食中毒はなぜ発生するのでしょうか?
その理由を次の項でご紹介します。
2.冬に食中毒が発生する理由とは?
食中毒というと、夏に発生するものというイメージを持っている方も多いでしょう。
実際、細菌性食中毒の原因菌は、25度~30度くらいの環境で盛んに繁殖するものが多いのです。
冬の外気温は15度~20度ですから、細菌が繁殖するには低すぎます。
しかし、屋内はどうでしょうか?
外は寒いけれど、部屋の中は暖房が効いている家がほとんどです。
もちろんキッチンにも暖房は効いています。
ですから、細菌が繁殖するにはちょうどよい気温なのです。
そして、冬の料理といえば鍋。
鍋は食卓で調理することも多いでしょう。
生の肉や魚をはしで鍋の中に入れ、そのはしで料理を口に運ぶ人も珍しくありません。
つまり、はしに食中毒の原因菌が付着すれば、料理すべてに菌がふりまかれることにもなるのです。
3.食中毒の原因菌の種類とは?
では、食中毒の原因菌にはどのような種類があるのでしょうか?
この項で少し詳しくご紹介します。
3-1.感染型の細菌
感染型の細菌とは、カンピロバクターやサルモネラ菌、さらにO157で知られている病原性大腸菌などです。
また、赤痢菌やコレラ菌などの病原菌も食中毒の感染型の細菌として分類されています。
これらの細菌は、少量でも食中毒と引き起こす可能性があるのです。
また、腐敗していない食物でも細菌に汚染されている可能性もあるでしょう。
危険なのは生の肉や魚などです。
特に、肉と生野菜を一緒に調理すると肉に付いていた細菌が生野菜に感染して繁殖することもあります。
また、潜伏期間が短いのも特徴です。
3-2.毒素型の細菌
毒素型の細菌とは、黄色ブドウ球菌やセレウス菌、ボツリヌス菌などです。
この菌類の特徴は、寿命が長いということ。
たとえば、黄色ブドウ球菌は手に傷があれば、そこから繁殖します。
つまり、傷がある手で調理をしたものをお弁当にすると、食べるころには食物に黄色ブドウ球菌が大繁殖するのです。
また、ボツリヌス菌は酸素を嫌い土の中に好んで生息するという特徴があります。
ですから、野菜に土がついたまま漬物などを作ってしまうと、ボツリヌス菌が大繁殖してしまうでしょう。
3-3.かきにあたるとはどういうこと?
冬に旬を迎える食材のひとつに、かきがあります。
生で食べても火を通してもおいしい貝ですが、ものによっては「あたる」といって食中毒の症状が出る場合もあるのです。
このかき由来の食中毒はかきの鮮度が悪いからと思われがち。
しかし、実際は海水による汚染が原因です。何らかの原因でかきが生息している場所の海水がノロウィルスに汚染されると、かきにもノロウィルスが繁殖します。
ですから、鮮度にかかわりなく食中毒のような症状が出るのです。
これを予防するためには、加熱用のかきは必ず加熱して食べてください。
また、体調が悪いときはかきの生食は避けましょう。
4.細菌性食中毒を予防する方法とは?
では最後に、細菌性食中毒を予防する方法をご紹介します。
飲食店の方だけでなく主婦の方も参考にしてください。
4-1.手洗いを徹底する
食中毒の予防の基本は、手洗いを徹底することです。
特に、爪の間は汚れがたまりやすいので、丁寧に洗ってください。
また、年末年始の飲食店は忘年会や新年会で大忙しでしょう。
ですから、つい手洗いがおろそかになってしまいがちです。
特に、トイレに行った後は丁寧に洗ってください。
「このくらいいいだろう」と思ってはいけません。
4-2.生で食べる野菜と肉、魚は一緒に調理をしない
細菌性食中毒の原因菌であるサルモネラ菌やカンピロバクターなどは、生肉や生の魚に生息しています。
ですから、生で食べるレタスやトマトなどの野菜と肉、魚は一緒のまな板や包丁で調理しないようにしましょう。
また、一緒のまな板や包丁で調理しなければならない場合は、必ず洗剤でよく洗ってから調理をします。
さらに、バイキング形式のレストランの場合は、生野菜と肉、魚のトレーを離しておき、トングなども分けましょう。
鍋料理を提供する場合は、取りはしをそえるか余分に割りばしを渡してください。
4-3.調理員の健康管理も大切
調理員が体調を崩していると、その人が調理をしたものを食べた人も食中毒を発生しやすくなります。
ですから、調理員の健康管理も大切にしましょう。
特に、ノロウィルスに感染した場合は、医師の許可が出るまで出社させないといった対処法が必要になります。
4-4.冷蔵庫を過信しない
おせち料理など、お正月に食べる料理はたくさん作って作り置きすることも珍しくありません。
しかし、この作り置きは細菌が繁殖するには絶好の環境です。
また、冷蔵庫を過信しすぎてはいけません。
冷蔵庫で保管する前に室温に2時間程度置くだけでも、病原菌は繁殖します。
ですから、火を通せるものは食べる前にもう一度火を通し、取りばしを使って食べ物を分けましょう。
それだけでも食中毒はかなり防げます。
5.おわりに
いかがでしたか?今回は、細菌性食中毒の原因や予防法をご紹介しました。
今年も残すところあと少しです。
クリスマスを過ぎれば、おせちの準備に取りかかるご家庭も多いでしょう。
また、飲食店は忘年会の顧客で毎日大忙し、というところも多いと思います。
このような慌ただしい状況で調理をすると、つい衛生観念も薄れがちです。
ですから、忙しいときほどしっかりと手を洗って調理をしましょう。
また、お弁当も要注意です。
今のお弁当箱は保温機能が付いているものも多く、昼食時まで適温をたもてます。
食中毒の菌が発生するには絶好の環境です。
ですから、必ず火をよく通して冷ましてから詰めましょう。
昨晩の残り物を利用する場合も同じです。
冬だから、とそのまま詰めてはいけません。
さらに、手に傷がある場合は薄手の手袋をして調理すると、ブドウ球菌などの繁殖を防げるでしょう。
また、お弁当は忙しくても食べる日の朝に作った方が衛生的です。