
OJT(職場教育)の意味や目的は? メリット・デメリットも紹介!
職場には、定期的に新人が入ってきます。新卒や中途入社にかかわらず、どんな職種でも社員教育は必要。その方法のひとつがOJTです。そこで、今回はOJTのやり方やメリット・デメリットをご紹介します。今は企業も体力がなく、新人育成に昔ほど時間をかけていられないところが多いです。しかし、OJTがうまくいけば時間をかけたり外部から講師を招いたりする必要もありません。
では、そのために注意するポイントなどは何でしょうか?答えは、この記事を読めば分かります。
1.OJTって何?
OJTとは、On-the-Job Training(オン・ザ・ジョブトレーニング)の略です。ジョブトレーニングの名前の通り、企業で行われる人材育成や教育法の一種になります。OJTの原型ができたのは1917年、第一次世界大戦中のことでした。働き手が不足している造船所で、何とか短期間で新人に仕事を覚えさせるために考え出されて方法です。OJTのやり方を大まかに説明すると、以下のような4段階になります。
- やってみせる(指導者がお手本をみせる)
- 説明する
- やらせてみせる(新人に仕事をさせる)
- 指導する(改善点を説明したり、改めて指導したりする)
この方法だと、新人ひとりひとりに直接仕事を教えることができるのです。本来、新人教育とは、研修期間を設けて集団で仕事を教えるものでした。皆様の中にも、集団で勉強したり仕事を見学したりといった新人研修を行った経験がある方も多いでしょう。しかし、この方法では新人の教育だけに、時間がかかります。
また、新人の理解力もひとりひとり違うため、同じことを教えても全員が同じように仕事ができる、とは限りません。すぐに仕事を覚える人がいる一方で、なかなか理解が進まない人もいるでしょう。そのフォローもしていれば、さらに時間や費用がかかってくるのです。
ですから、時間や資金に余裕がある企業ならば問題ありませんが、そうでない企業は研修期間を短くしたり内容を薄くしたりすることが多いでしょう。その結果、教育が不十分な新人が仕事をすることになり、職場がかえって混乱することもあるのです。
2.OJTのメリットやデメリットとは?
では、OJTを行うメリットやデメリットとは何でしょうか? この項で詳しくご紹介します。ぜひ参考にしてください。
2-1.OJTを行うメリットとは?
OJTはマンツーマン指導に近い教育方法です。ですから、その新人に合わせた教育が行えます。また、外部から講師を呼んだり新人教育のためだけに時間を割いたりすることもありません。仕事をしながら教育を行えるために、時間と費用が節約できます。さらに、教える方にもメリットがあるのです。人にものを教えるということは、自分が理解をしていないとできません。そのため、仕事であいまいなままにしていたことを、もう一度勉強するチャンスが与えられるのです。
さらに、新人と先輩が積極的にコミュニケーションを取ることで、職場の和がより強まる効果もあります。新人だけを集めて教育をした場合、先輩社員と打ち解けるまで時間がかかるでしょう。しかし、OJTを行っていれば、仕事をしながら交流を深めることもできるのです。
2-2.OJTを行うデメリットとは?
OJTが成功するかどうかは、指導する社員の素質にかかっているといっても過言ではありません。しかし、社員すべてに後輩を指導するスキルがあるわけではないのです。また、仕事ができる人が教え方も上手とは限りません。優れた成績を上げたスポーツ選手が、優れた指導者になれるとは限らないのと同じです。
その反対に仕事では目立った成績を上げていないのに、指導者としては有能な社員もいるでしょう。ただし、社員が指導者として有能かどうかを判断する機会がない、という企業が多いのです。さらに、OJTは指導する方の社員の負担が重くなるのも問題でしょう。新人の指導係に選ばれた社員は、自分の仕事をこなしつつ教育も行わなければなりません。
新人の指導がうまくいっていないと、指導係の社員が叱られることもあるでしょう。ですから、指導係になりたがらない社員も少なくないのです。また、新人もどの指導係の下につくかで、成長具合が違ってくることもあります。教え方がうまい人の下に付けば、伸びも早いです。しかし、逆に教えるのがへただったり無責任な社員が指導係になったりすると、新人が全く仕事を覚えられないこともあるでしょう。ですから、指導係にすべての責任を押し付けると、OJTは失敗しやすいのです。
3.OJTが成功する方法とは?
OJTを成功させるには、どのようなことに注意して行えばよいのでしょうか? この項では、企業がOJTを実行するためにやっておくべきことなどをご説明します。
3-1.マニュアルを作る
仕事の教え方はひとりひとり違います。ですから、それはある程度社員の裁量に任せてよいしょう。しかし、何をどのくらいのレベルまで教えればよいのかということや、指導のやり方などはマニュアル化したほうが、社員もやりやすいでしょう。また、マニュアルがあれば、会社が新人にどのくらいの教育を望んでいるのかも分かりやすいです。
3-2.教育係に任命する社員は、よく考えてから決める
新人教育は、向き不向きがあります。また、重要なプロジェクトに取り組んでいたり急ぎの仕事に従事していたりする人は、新人教育を行っている余裕がないことも多いでしょう。さらに、意外に大事なのは性別です。職種によっては同じ性別の社員に指導させた方がうまくいきますし、トラブルも起きにくいこともあるでしょう。
また、年配の男性の中には女性に指導されることにプライドを傷つけられる人もいます。そのあたりも考えてペアを決めましょう。
3-3.指導係となった社員へのフォローも忘れずに
人に仕事を教えるということは、思っている以上に大変です。特に、新卒社員の場合は、「働く」ということの心構えができていない人もいるでしょう。基本的なビジネスマナーから教えなければならないこともあります。ですから、指導係となった社員のフォローも忘れないように行いましょう。
たとえば、週に1回指導係を集めてミーティングを開き、指導状況を確認するなどすれば、問題点があってもすぐに報告できます。指導方法のフォローをしたり、場合によっては指導する新人を交代したりすることもできるでしょう。指導係になったのだから、一から十まですべて教えるべきと会社が責任を丸投げしてしまえば、いつまでたってもOJTはうまくいきません。
4.おわりに
いかがでしたか? 今回はOJTのやり方やメリット・デメリットをご紹介しました。どんなに有能な人でも、初めての仕事をすぐに完ぺきにこなすことはできません。平凡に見える人でも、指導方法によっては見違えるほど伸びることもあるでしょう。「そういった指導は、やはりプロに任せた方がうまくいくのではないか」という意見もあります。確かに、一般的なビジネススキルを指導してくれる講師はたくさんいるでしょう。しかし、その職場にあった仕事のやり方を教えるには、やはり社員が一番適役なのです。
ですから、指導係をフォローしつつ細かい教育方法は社員の責任で行うOJTは、短期間で仕事を覚えさせるにはよい方法でしょう。また、一般的なビジネススキルだけは外部の講師を呼んで学習させ、具体的な仕事の方法は社員が教えるという二段構えの研修を行うという方法もあります。