
意識不明になった人への応急処置方法は? ポイントを押さえて慌てずに対処しよう!
職場は、多くの方が長時間過ごす場所です。また、仕事に責任があるため、少しぐらい具合が悪くても出勤してしまう方もいるでしょう。ですから、職場で体調が悪くなることもあります。特に、意識不明になると大変です。
そこで、今回は意識不明者の応急処置の方法についてご紹介しましょう。意識を失った時点では命に別状がなかったのに、対処が悪いと重篤(じゅうとく)な症状になることもあります。また、現場ですぐに対処しなければならないこともあるでしょう。衛生管理者以外の方も、ぜひこの記事を読んでみてください。
1.意識不明になる原因は?
まず始めに、職場で意識不明になる原因の一例をご紹介します。危険な作業のないオフィスでも、意識不明者が出る可能性はゼロではありません。
1-1.外傷
高いところから落ちたり、重機などと接触したりした場合は外傷をおって意識不明になることもあります。多量の出血や骨折などをともなうことも多いので、一刻も早く救急車を呼び、応急処置をすることが大切です。
また、脳や内臓にダメージをおった場合は一見すると無傷に見えるようなこともあります。しかし、体の中は大変なことになっているので、むやみに動かしてはいけません。
1-2.心臓や血管の病気
心筋梗塞や動脈瘤(どうみゃくりゅう)などが破裂したりすると、いきなり意識不明になることもあります。この場合は、心停止になることも多いのでAEDを使って心臓マッサージを行う必要があるケースもあるでしょう。
また、太い血管が破裂した場合は、多量の吐血をすることもあります。この場合は、気道を確保することも重要になるでしょう。また、条件によっては健康な方がいきなり心臓まひを起こすこともあります。
1-3.脳の病気
脳こうそくや脳出血を起こすと、瞬時に意識を失うことが多いです。脳出血や脳こうそくを発症すると、舌が気道の中に落ちこんで大いびきをかくこともあるでしょう。ですから、そのような症状が出たら、すぐに救急車を呼んでください。
また、脳こうそくの場合はろれつが回らない、握力が低下する、などの症状が出る方もいます。
1-4.貧血
女性の病気というイメージが強い貧血ですが、男性でも発症することがあります。特に、胃かいようや腸のポリープなどがある方は、そこが出血して貧血になることもあるでしょう。
また、長時間立仕事をしている場合は脳貧血といって一時的に脳が虚血状態になり、意識を失うこともあります。
1-5.熱中症
野外で作業をする方に多いのが熱中症です。帽子をかぶっていても適度な水分補給をしなければ、熱中症になることがあります。また、軽く見られがちな熱中症ですが、対処が遅れると命の危険もあるのです。
2.救急処置の仕方
職場で意識不明者が出た場合は、すぐに救急車を呼ぶ必要があります。しかし、救急車がすぐに到着しないこともあるでしょう。そんなときにやっておくべき応急処置の方法をご紹介します。
2-1.心音と呼吸の確認
まず始めに、心音と呼吸の確認をします。心臓が動いていなければAEDや心臓マッサージが必要です。
また、呼吸をしていない場合は人工呼吸やのどに詰まったものを取りのぞく必要があるでしょう。なお、顔をあおむけにしておくと舌が落ちこんだり、吐いたものや血がのどに詰まりやすくなったりします。
2-2.気道を確保する
意識を失った人の頭に手を置いて、頭を下げさせあごを持ち上げます。あごの下の柔らかい部分を圧迫しないように気をつけながら、のけぞるような姿勢を取らせましょう。これが、気道確保です。
頭を打っている可能性が強い場合は、そのまま頭を包みこむように持ち、救急車の到着を待ってください。呼吸と心音がしっかりしているようならば、衣服をゆるめて回復体位という横向きの態勢にします。
救急車の到着までしばらくかかるという場合は、回復体位を取らせましょう。なお、定期的に向きを変えてください。
2-3.AEDや心臓マッサージをする
胸を抑えて急に倒れた場合や、心停止をしている場合はAEDを使用します。AEDは音声で指導されますので、それに従ってください。なお、AEDが不必要と機械が判断すると作動しません。機械の故障ではないので、安心してください。
AEDがない場合は、心臓マッサージをします。インターネットでやり方を見て挑戦してください。ただし、初めてだとうまくいかないこともあります。ですから、衛生管理者は応急処置の講習などを受ける機会があったら、ぜひ受けてみてください。
2-4.人工呼吸をする
おぼれた人の場合は、人工呼吸が必要になることもあります。1秒間息を吹きこみ、5秒おいてもう1度行ってください。心臓マッサージとセットで行うとよいでしょう。時間をはかる人とふたりで行い、5回人工呼吸をしたら交代します。そうすれば、長く人工呼吸を行えるでしょう。
3.うかつに触れてはいけないケース
感電した人にうかつに触れると、自分も感電してしまいます。ですから、感電の原因となった物質が体にのっていたり本人がつかんでいたりする場合は、ゴム手袋とゴム長靴などの絶縁体を身につけて、対処してください。特に、浴槽やプールで感電した場合は、水に触れただけで感電する危険があります。
4.意識を取り戻したとしても病院を受診させる
貧血や熱中症などで意識を失った場合は、すぐに意識が回復することもあります。本人が何ともないといっても、すぐに病院を受診させましょう。倒れた際に頭を打っていた場合、後になって症状が出てくる場合もあります。
また、意識を失うということは、それだけ体にダメージがあった証拠です。きちんと医師の診察を受けさせ、治療させましょう。
今は心理的な理由で意識を失う人も増えているそうです。この場合は、ストレスが原因のことが多いので、まずは心療内科を受診させたうえ、休職や配置転換などを考慮してください。
心理的なことが原因で意識を失う場合は、1日に何回も意識不明になることもあります。ですから、その原因を取りのぞいてあげないと、症状は改善しません。本人に自覚がない場合は、まずは産業医と面談させてみてください。
5.おわりに
いかがでしたか? 今回は、意識不明になった人への応急処置の方法についてご紹介しました。
急に目の前で人が倒れたら、誰でもびっくりするでしょう。しかし、心筋梗塞や脳出血、さらに外傷の場合は素早い対応が命を救うこともあります。ですから、すぐに119番してください。オペレーターが出たら、住所、電話番号、患者の様態などを告げます。もし、職場と提携している病院がある場合は、その名前も告げてください。また、救急車が入ってきやすいように車なども移動させましょう。その間、応急処置をすれば、命が助かる確率が高まります。
なお、心筋梗塞や脳出血や脳こうそくは、急な病のイメージがありますが、前兆が出ていることも多いのです。背中がいたかったり前述した脳こうそくの症状が出ていたりする場合は、会社を休んで病院を受診しましょう。