
金属中毒の種類や原因とは?どんな症状が出るの?
金属中毒とは、体の中に多量の金属が取りこまれることによって発生します。
金属というと、冷たくて固いものを思い浮かべる方も多いでしょう。
しかし、金属も高温で熱すれば蒸発します。
また、細かく削れば粉末にもなるでしょう。
さらに、水銀のように液体状の金属もあります。
ですから、比較的容易に体の中に取りこまれやすいです。
そこで、今回は金属中毒の種類や原因、予防法や治療法をご紹介します。
職場によっては金属中毒になりやすいところも少なくありません。
衛生管理者の方もぜひこの記事を読んでみてください。
1.金属中毒とは?
金属中毒というのは、体の中に多量の金属が取りこまれることによって発症します。
私たちの体は、亜鉛や銅、マグネシウム、鉄分などの金属を少量必要としているのですが、多すぎれば中毒を起こしてしまうのです。
金属中毒の中でも最も有名なものは、水銀やヒ素による中毒でしょう。水銀は公害病の原因にもなりましたし、ヒ素は致死性が高い毒物として昔から殺鼠剤などに使われてきました。
また、昔のおしろいは鉛でできていたので、鉛中毒を発症する人も少なくなかったのです。
金属中毒は、ほかの毒物と同じように金属が排出されれば治ります。
ただし、一度体内に蓄積された金属はなかなか排出されませんので、金属中毒は治りにくいのです。
2.金属中毒の原因とは?
この項では、金属中毒の原因をご紹介します。
いったいどのように金属は体内に入るのでしょうか?
2-1.経口摂取
金属を経口摂取できるのか?と思う方もいるかもしれません。
しかし、金属を直接食べなくても、金属を含んだ水で育った食物を動物が食べ、その動物を人が食べることによって高濃度の金属を摂取することがあります。
これを、「生物凝縮」というのです。
生物凝縮による金属中毒は、公害病でも数多く見られます。
また、生物凝縮が起こると少量の金属でも重い中毒症状が出る場合も少なくありません。
さらに、誤飲による事故も経口摂取による金属中毒の一種でしょう。
2-2.蒸気に混じった金属の吸引
金属も高温で熱すれば揮発します。
しかし、金属は形を変えただけで消滅したわけではありません。
金属が揮発した蒸気を吸いこめば、主に肺に金属中毒の症状が出ます。
また、大量に吸いこめば、急性中毒を引き起こす可能性もあるのです。
2-3.容器に使われている金属の摂取
私たちが食事に使う食器には、金属製のものも少なくありません。
また、缶ジュースや缶詰は保存食として長期間保管している方もいるでしょう。
しかし、金属は劣化していきます。
現在の食器類や缶類に人体に有害な物質は使用されていません。
でも、劣化による金属の剥離までは、メーカー側は予想できないのです。
また、一部の食器は熱を加えすぎると金属部分の剥離が起こります。
ですから、缶に入った飲みものや食べものは消費期限内に食べること。
そして、食器類は正しい使い方をすることが大切です。
2-4.製造機械の劣化による金属の混入
製品を製造する機械の劣化や不具合により、製品に金属が混入してしまうことがあります。
少量ならば問題ありませんが、大量に混入すれば急性金属中毒を発症する可能性もあるでしょう。
3.金属中毒を起こしやすいものとは?
この項では、金属中毒の種類についてご紹介します。
同じ金属でも中毒を起こしやすいものとそうでないものがあるのです。
3-1.水銀中毒
水銀は、金属でありながら液体状になりさらに、気化して水銀蒸気にもなります。
水銀中毒になると体全体に症状が出るほか、中枢神経にも影響が出るのです。
また、妊婦が水銀を摂取すると胎児にまで悪影響が出ます。
水銀中毒といえば、公害病である「水俣病」が有名ですね。
また、水銀は水と混じると植物がそれを吸収し、その植物を食べた動物の体内にも蓄積されるという生物凝縮も起こりやすいでしょう。
3-2.鉛中毒
鉛は工業製品に使われることも多く、戦前は鉛入り塗料なども販売されていました。
ですから、比較的私たちの身近にある中毒を起こしやすい金属なのです。
また、鉛は食べものも汚染するので、長年摂取し続けると視神経や血液に影響が出て視力の低下や貧血などの症状が起こります。
また、鉛中毒は急性でない限り自覚症状が薄いので注意が必要です。
3-3.カドミウム中毒
カドミウムはカルシウムとよく似た構造をしており、カルシウムの代わりに骨に吸収されてしまいます。
その結果、骨がもろくなったり腎臓に蓄積されて腎障害が発症したりするのです。
カドミウム中毒といえば、公害病でもある「イタイイタイ病」が有名でしょう。
イタイイタイ病を発症すると、骨がもろくなりせきをしても骨折するようになります。
現在は、郊外の原因になるような工場排水をそのまま川に流すようなことはありませんが、カドミウムの蒸気などを吸いこみ続けると同じような症状が起こる可能性もあるでしょう。
4.金属中毒を予防するには?
さて、いかがでしたか?金属中毒になると急性症状と慢性症状の2種類の症状が出ます。
急性症状の場合はすぐに対処できますが、慢性症状の場合は時間がたってから症状が出るのです。
では、金属中毒を予防するにはどうしたらよいのでしょうか?
この項ではその一例をご紹介します。
4-1.工場の設備や装備を調える
金属を扱う工場などの職場では、金属蒸気を吸いこんだりしないように工場の設備や、作業をする装備を調えましょう。
装備が調わなかった場合は、仕事をさせないなどの対処が必要。
また、工場内の空気や水などを定期的にチェックすることも大切です。
4-2.鉱山や工場の跡地の利用には気を付ける
金属は長い間地中や水中にとどまります。
一例をあげると、明治時代に公害病が深刻になった足尾銅山の跡地はいまだに金属汚染が深刻です。
また、金属工場の跡地などは金属汚染が進んでいるところもあるでしょう。
ですから、底に住宅などを作る場合は調査が必要です。
4-3.特別健康診断を行う
金属を扱う職場では、どうしても金属が体内に取りこまれてしまうことがあります。
その量が微量の場合は、すぐに影響が出ることはありません。
しかし、何十年後かに金属中毒の症状が出ることもあります。
それを防ぐために特別健康診断を受けましょう。
通常の健康診断は1年に1度ですが、特別健康診断は半年に1度行います。
金属中毒の症状が現れやすい部位を検査することで、中毒を未然に防ぐのです。
これの日程を組んだり結果を管理したりするのが衛生管理者の役目になります。
5.おわりに
いかがでしたか?
今回は、金属中毒の症状や種類についてご説明しました。
金属中毒は、体内に取りこまれた金属の量によっていろいろな症状が出ます。
また、広範囲にわたって患者が出やすいのも特徴です。
現在の工場では、配水などをそのまま垂れ流すことはないでしょう。
しかし、工場内の空気などが汚染されているかのせいもあります。
ですから、衛生管理者は安全管理者と協力して、定期歴に空気や水を検査しましょう。
もし、基準値を超えているようでしたら、早急な対策が必要です。
また、金属を体内に取りこみやすい行をする場合は、防護服などを必ず装着してから行うように徹底してください。
そうすれば、不慮の事故以外金属中毒を防げます。
また、装備に不備がないかもチェックが必要です。