
粉じんが原因で発生する健康障害とは?じん肺以外の症状も解説!
粉じんとは、粉のように空気中に舞う粒子の総称です。
アスベストが有名ですが金属や鉱物、食品でも粉じんになる可能性があります。
そして、粉じんを吸い込むとじん肺という病気になるのです。
今回はじん肺のような粉じんによる健康障害についてご紹介しましょう。
すぐに症状が出るものはまだ見つけやすいのですが、症状が出るまで何年もかかるものも珍しくありません。
また、粉じんを吸い込むのは、ほとんどが仕事場です。
衛生管理者を目指している方も、ぜひこの記事を読んでみてください。
1.粉じんとは?
粉じんとは、前述したように粉のように空気中を舞うちり状の粒子のことです。
粉じんというと、アスベストを思い浮かべる方も多いでしょう。
アスベストは石綿ともいわれ、かつては防音・断熱材として学校などに使われてきました。
しかし、石綿を使った建築物を解体する際にアスベストの繊維が粉じんとなった結果、多くの方が健康被害にあったのです。
粉じんはちりのように細かい粒子ですから、空気とともに肺の中に入ります。
また、粉じんはアスベストのほかに金属や鉱物などからも発生するのです。
これらも肺に入ると、健康被害をもたらすでしょう。
普通に生活をしていても、粉じんを吸い込むような機会はほとんどありません。
ほとんどが、仕事中に吸い込みます。
そのため、労働安全衛生法では、粉じんを業務に危険性または有害性をもたらすものと定めているのです。
2.粉じんの種類と健康被害とは?
この項では、粉じんの種類とそれによって引き起こされる健康障害についてご説明します。
粉じんにはどのような種類があるのでしょうか?
2-1.粉じんの種類とは?
粉じんには、第1種~第3種まで分類されています。
有機粉じん、無機粉じん、特定粉じん、その他に分類されることもあるでしょう。
有機粉じん、無機粉じんとは、それぞれ有機物由来、無機物由来の粉じんのことです。
特定粉じんとは、アスベストのこと。
さらに、紙や穀物、油煙などからも粉じんが生まれます。
こうしてあげてみると、粉じんは意外と多くの場所で発生していることが分かるでしょう。
また、粉じんが舞いやすい職場というと建築現場をイメージする方も多いですが、食品工場や溶接工場などでも粉じんは発生します。
そのため、粉じんになりそうな素材を扱っている場所では、定期的な空気の検査が必要です。
2-2.粉じんによる健康障害とは?
粉じんによる健康障害で、最もポピュラーなものがじん肺です。
じん肺とは、粉じんを吸い込んだ肺の組織が線維化してしまう病気のこと。
一度じん肺を発症してしまうと、肺は元の状態に戻りません。
また、じん肺になると結核や肺がん、ぜんそくなどの発症率が格段にアップするでしょう。
粉じんによるじん肺を、職業性呼吸器疾患ともいいます。
じん肺は、粉じんを吸い込んですぐに発症するわけではありません。
何十年も粉じんを吸い込み続けた末に発症します。
そのため、退職してから症状が出たという方も少なくないのです。
アスベストによる粉じん被害が注目を集めたのは、粉じんが原因のじん肺にかかった人たちが、会社を相手取って裁判を起こしたからでした。
3.粉じんによる健康障害を防ぐための方法とは?
この項では、粉じんによる健康障害を防ぐための方法をご紹介します。
中には、法律で定められた事柄もあるのです。
衛生管理者の職務になっていることもあるでしょう。
3-1.職場の空気を検査する
屋内で作業をしている場合は、定期的に職場の空気を検査する必要があります。
空気の中に含まれている物質を検査すれば、ばく露が起こってもすぐに分かるでしょう。
また、現在の職場は、何らかの形で粉じん対策をしているところがほとんどです。
しかし、その対策に不備があるかもしれません。
職場の空気の検査は、不備を発見するためでもあるのです。
3-2.マスクなど、粉じんを吸い込まないような装備を義務づける
粉じんは、目に見えないくらい細かい粒子です。
ですから、口を閉じているくらいでは防げません。
専用のマスクやゴーグルの装備を身につけて仕事をするように、義務づけましょう。
今は、粉じん対策用のマスクやゴーグルがたくさん販売されています。
とはいえ、ゴーグルやマスクをしていれば、仕事をしにくくなることもあるでしょう。
また、ゴーグルやマスクをそろえるには、費用がかかります。
化学物質による中毒の場合はすぐに症状が出ますが、前述したようにじん肺は症状が出るまで10年以上かかることも珍しくないのです。
ですから、マスクやゴーグルをつけずに作業することが、「裏マニュアル」として定着してしまう可能性もあるでしょう。
そうならないためには、安全教育が必須です。
安全管理者と衛生管理者が協力して行いましょう。
3-3.定期的な健康診断をする
従業員がひとり以上いる会社は、年に1度は健康診断を義務づけています。
しかし、粉じんが発生するなど、健康に悪影響を与える可能性のある職場は「特別健康診断」を従業員に受診させなければなりません。
粉じんの場合は、肺のレントゲン検査や必要とあらばCT検査などをします。
現在、粉じんの出る職場で働いているのならば、健康診断とは別に1年に1回以上の検診が必要です。
また、かつては粉じんが出る職場で働いていたという方も、3年に1回は受診が必要になります。
健康診断の日程調整は衛生管理者の役目です。
仕事に支障が出ない日を工夫して設定しましょう。
4.もし、じん肺の兆候が見られたら?
しかし、どれほど対策をしてもじん肺の発症を100%止められるわけではありません。
特に、長年粉じんが発生する職場で働いてきた人ほど、発症率は高いでしょう。
粉じんによる健康被害は、肺のエックス線検査の結果などで判断されます。
ごく軽いじん肺の場合は、粉じんの軽減措置を行いましょう。
また、いちじるしい影が見られたら職場で配置転換などを行います。
それ以上の場合は、産業医と面談の上、療養させましょう。
前述したように、じん肺は一度発生したら治りません。
人によっては仕事場をいくつか変わってきたという方もいるでしょう。
以前の職場で粉じんの被害を受けていたということもあります。
ですから、じん肺を発症した方の経歴なども必ず調べましょう。
今の職場で働いていることが原因だった場合は、労災の対象にもなります。
5.おわりに
いかがでしたか?今回は粉じんによる健康障害の種類についてご紹介しました。
粉じんによるじん肺は、発症まで時間がかかる分、見つかったときは重篤な症状に陥っていたということもあるでしょう。
じん肺自体で命を落とすことはまれですが、肺がんになると致死率は格段に上がります。
また、長年働きつづけ、定年を迎えてすぐに酸素ボンベが手放せなくなったという方も少なくありません。
さらに、粉じんによる被害が発生すると被害者がひとりということはないでしょう。
職場が広いほど被害者も多くなります。
それを放置してきた職場の社会的な評判も悪くなるでしょう。
ですから、衛生管理者の方は週に1回の職場巡視のときに、粉じん対策を全員が行っているのかしっかりと確認してください。
被害が起きてからでは遅いのです。
また、従業員の教育を毎年行うことも大切でしょう。