総括安全衛生管理者の役割とは? 衛生管理者との関係をわかりやすく解説

私たちは、誰もが安全に衛生的に仕事をする権利があります。
その権利を守るのが安全衛生法であり、法律に基づいて実際に職務を行うのが衛生管理者です。
しかし、従業員が多い職場ほど衛生管理の職務は大変になっていくでしょう。
そこで、一定数以上の従業員が在籍している職場では、総括安全衛生管理者の専任が必要になります。
今回はこの総括安全衛生管理者の認定基準や職務、役割、専任できる条件などをご紹介しましょう。 
今は、技術の発達により職場での危険は少なくなっています。しかし、全くなくなったというわけでもありません。

  1. 総括安全衛生管理者とは?
  2. 総括安全衛生管理者とよく間違えられる職務とは?
  3. 総括安全衛生管理者とともに仕事をする職務とは?
  4. 総括安全衛生管理者に関するよくある質問

安全意識の高まりによって職場の安全・衛生の職務を担う職種も増えています。
その中にはよく似た名前の職務もあるので混乱してしまう方もいるでしょう。
この記事を読めば、どのような条件のときにどのような職務を担う人を専任すればよいのか分かりますよ。
衛生管理者を目指している方もぜひこの記事を読んでみてくださいね。

1.総括安全衛生管理者とは?

始めに、総括安全衛生管理者の職務や、法律によって定められている選任条件などをご紹介します。
いったいどんな職場で選任が必要なのでしょうか?

1-1.総括安全衛生管理者の役割とは?

総括安全衛生管理者は、労働安全法第10条で「安全管理者、衛生管理者または救護に関する技術的事項を管理する者を指揮し、安全衛生に関する以下の業務の統括管理を行う者である」と定められています。
つまり、安全管理者、衛生管理者など職場の安全と衛生を管理する職務に就いている人たちを、管理するのが仕事です。

1-2.総括安全衛生管理者に選任できる人の条件とは?

統括安全衛生管理者になるためには、特別な資格はいりません。
衛生管理者などが国家資格なので、「何か特別な資格が必要なのでは?」と思う方もいるかもしれませんが、必要ないと覚えておきましょう。ただし、選任した後は速やかに、選任報告書を所轄労働基準監督署長に提出しなければなりません。
選任報告書の書式は 厚生労働省のこのページからダウンロードできます。(http://www.mhlw.go.jp/bunya/roudoukijun/anzeneisei36/20-download.html)
また、特別な資格が必要ないからといって、手の空(あ)いている人に任せればよい、という仕事でもないのです。
総括安全衛生管理者は、衛生管理者や安全管理者から報告を受けて指示を出さなくてはなりません。
ですから、非正規雇用者や若年者では務まらないでしょう。
工場長など、実質職場を統括管理する立場になる人を選任するのが一般的です。
また、何らかの理由で総括安全衛生管理者がその任に当たれないときは、速やかに代理者を選任しなおさなければなりません。

1-3.統括安全衛生管理者の仕事内容とは?

統括安全衛生管理者の仕事内容は、衛生管理者と安全管理者の職務内容とほぼ同じです。

  • 労働者が、安全に衛生的に仕事ができるように職場を調える
  • 危険防止や予防の措置を取る
  • 労働者に安全、衛生に関する教育を行う
  • 健康診断の計画を立てて実施する
  • 労働災害の原因調査、再発防止

などになりますが、唯一「安全管理者や衛生管理者などに技術的事項を管理する者の指揮」
が独自の仕事内容になるでしょう。
実質、管理の指揮だけが仕事で、後は安全管理者や衛生管理者に任せるというケースが多いのです。

1-4.総括安全衛生管理者の選任が必要な職場とは?

総括安全衛生管理者の選任が必要なのは、以下のような職場になります。

  • 林業、鉱業、建設業、運送業、清掃業は常時使用する労働者数100人以上のところ
  • 製造業(ものの加工業を含む)、電気・ガス・水道業、通信業、熱供給業、各種商品卸売などは常時使用する労働者数300人以上のところ
  • その他の業種では常時使用する労働者数1000人以上のところ

こうしてみると、総括安全衛生管理者が必要とされる職場は案外少ないように感じられるかもしれません。
しかし、この「常時使用する労働者数」というのは、正社員だけではないのです。
パート、アルバイトも含む人数になります。
ですから、100人以上の職場というのは、少し大きめの営業所などにも当てはまるでしょう。
ちなみに、衛生管理者の選任条件は常時使用する労働者が50人以上です。

2.総括安全衛生管理者とよく間違えられる職務とは?

総括安全衛生管理者とよく間違えられる職務として、「統括安全衛生責任者」があります。
字面もよく似ていますので、同じような職務と思われがちでもあるのです。
統括安全責任者は、建設業または造船業の元方事業者(特定元方事業者)に選任義務があります。
その労働者および関係請負人の労働者が同一の場所において作業を行うときに選任しなければならない職務のこと。
これは、労働安全衛生法第15条第1項に定められている職務です。
もう少し詳しく説明しましょう。
建設業や造船業が仕事を請け負った場合、その一部を下請け業者に発注することも珍しくありません。
すると、ひとつの作業場に元方事業者と下請け業者の従業員が、混在して仕事をすることになります。
そうなると、連絡ミスや連係ミスが起こりやすくなり、労働災害が発生しやすくなるでしょう。
そのため、その事業場を統括管理する者を統括安全衛生責任者に選任することになっています。
ちなみに、統括安全衛生責任者の選任が必要な現場は、

  • すべての工事で、常時50人以上の労働者がいる現場 
  • ずい道等建設や一定の橋梁(きょうりょう)の建設、圧気工法による作業の場合は、下請け等も含めた労働者数が常時30人以上いる現場

となっているのです。この統括安全衛生管理者も特別な資格はいりません。
統括安全責任者に選任された人は、現場の巡視を行ったり、作業間の連絡、調整を行ったりします。
さらに、労働災害を防止するために従業員を教育したり工事に使う設備や機械を安全に使えるよう計画を立てたりしなければなりません。
つまり、統括安全衛生責任者は、安全管理と衛生管理の仕事を同時に行うような職務になるのです。

3.総括安全衛生管理者とともに仕事をする職務とは?

この項では、総括安全衛生管理者が管理したり一緒に仕事をしたりする職務のうち、安全管理者、衛生管理者、産業医についてご紹介していきます。いったいどのような職務を担っているのでしょうか?

3-1.安全管理者

安全管理者とは、労働安全衛生法において定められている事業場の安全全般の管理をする職務を担う担当者のことを指します。
安全管理者の職務に就くためには、労働安全コンサルタントの資格を取得するか、2年~7年実務経験を積んだ後、厚生労働大臣の定める研修を修了なければなりません。
実務経験の年数の差は学歴によるものです。
理系の大学、もしくは高等専門学校を卒業した場合が最も短くなります。
文系の学部を出ても安全管理者の職に就けますが、その場合は6年以上の実務経験が必要です。
安全管理者の主な職務は、職場や設備の安全性の確認や定期点検。
従業員への安全教育、災害が発生した場合の原因の究明、消防訓練や避難訓練の実施などがあります。
安全管理者は常時2名以上選任するように努力しなさい、といわれていますが、衛生管理者のように法律によって選任が定められているわけではありません。
ただし、労働基準監督署長が労災防止のために安全管理者の増員を命じた場合は、すぐに従わなくてはならないのです。

3-2.衛生管理者

衛生管理者は、労働者が安全で衛生的に仕事ができるように職場環境を管理したり改善したりする職務を担っています。
また、職場の衛生管理は本来なら医療従事者が行うことですが、日本中すべての職場を医療従事者が管理することは困難です。
そこで、衛生管理者が医療従事者にかわって職場を巡回したり、従業員の衛生教育を行ったり、産業医と従業員の橋渡しをしたりします。
その代表的な仕事が健康診断の計画と実施、そして週に1回の職場巡視です。
衛生管理者は常時50人以上従業員のいるすべての職場に選任が義務づけられています。
この50人というのは、勤務形態は問われません。
正社員、パート、アルバイト、すべてを合計して50人以上ならば選任義務があります。
また、職場に常に50人以上の従業員がいなくても、選任義務が発生するのです。
たとえば、従業員のほとんどが職場以外の場所に派遣されていても、選任義務はあります。
衛生管理者には、国家資格である第1種衛生管理者、第2種衛生管理者の資格を取得した人、衛生工学衛生管理者、医師、歯科医が就くことができるのです。
第1種衛生管理者はすべての職場で、第2種衛生管理者は、有害業務が少ない卸売業、小売業などの職場で衛生管理者の職務に就くことができます。

3-3.産業医

産業医とは、常時50人以上の労働者を使用する事業場に置くことが義務づけられている医師です。
また、これ以外にも、事業者との契約に基づき、企業内等で労働者の健康管理を行う医師のことも産業医といいます。
産業医は医師の資格だけでなく、労働者の健康管理等を行うのに必要な医学に関する知識も持ち合わせていなければなりません。
現在は、大学医学部の中にも産業医を養成する過程があります。
また、厚生労働大臣が指定する研修を修了しても、産業医の認定が受けられるでしょう。
産業医の専門科はさまざまですが、最近は精神科や心療内科医を求める企業が多くなってきています。
産業医は衛生管理者や安全管理者と連携し、職場の安全や衛生をたもつように健康診断の実施などを行うのです。
また、労働災害の認定や休職や復職の相談を受けたり許可を与えたりもします。

4.総括安全衛生管理者に関してよくある質問

Q.総括安全衛生管理者は工場長などと兼任できるのでしょうか?

A.兼任は禁止されていませんので問題ありません。ほとんどの職場で最高責任者が総括案戦江性管理者を兼ねています。

Q.総括安全衛生管理者が休職してしまった場合はどうすればよいでしょうか?

A.14日以内に代理者を立て、労働基準監督署署長に届け出る必要があります。

Q.総括安全衛生管理者に安全管理、衛生管理の知識がありません。大丈夫でしょうか?

A.総括安全衛生管理者に資格は必要ありませんが、知識がないのは問題です。
安全管理者、衛生管理者が必要とあれば知識を教えてあげましょう。

Q.衛生管理者は複数の職場を兼任できるのでしょうか?

A できません。必ずひとつの職場に1人必要です。

Q.産業医は常に会社内に待機していなければならないのでしょうか?

A.そんなことはありません。
通常は開業医として働いていて特定の日だけ会社に来たり、会社が医師が働いている病院へ従業員を通わせたりケースも多いのです。

まとめ

いかがでしたか?今回は総括安全衛生管理者についていろいろとご紹介しました。
職場の安全管理は労災防止のためにも大変重要です。
いつか来るかもしれない災害に備えて、日頃からよく人間関係を築き、とっさのときにすぐに連携できるようにしておきましょう。