労働衛生・労働基準法とは?労働衛生の関連資格を取得しよう!

「労働衛生の現場で働きたい」「キャリアアップに有利だから」「就職・転職に役立てるため」など、衛生管理者を目指している人は多いでしょう。衛生管理者は労働衛生に関連する資格の1つです。労働衛生は現場で働く人たちにとって、とても大切な要素になります。労働衛生に関連する資格を取得するには、労働衛生の知識を身につけることが大切です。

そこで、労働衛生とは何なのか、関連資格や勉強法など詳しく説明します。

  1. 労働衛生とは?
  2. 労働衛生に関連する資格について
  3. 試験の受け方について
  4. 資格取得のための勉強法
  5. 労働衛生に関してよくある質問

この記事を読むことで、労働衛生の基礎知識を身につけ関連資格の試験対策ができます。労働衛生について知りたい方、関連資格の取得を考えている方は必読です。

1.労働衛生とは?

労働衛生に関連する資格を取得したい方は、労働衛生について知らなければなりません。労働衛生の定義や目的・3管理など詳しく見ていきましょう。労働衛生の知識を深めていけば試験対策もできます。

1-1.労働衛生の定義

労働衛生は「労働環境および労働者の健康維持を確保するための取り組み」のことです。職場以外の労働者の生活を健康的にする意味も含まれています。なぜなら、快適な職場でなければ私生活にも悪影響をおよぼしてしまうからです。仕事が充実すればプライベートも充実できますよね。つまり、労働衛生は労働者の視点からの労働環境・労働条件を維持するために必要な項目です。

1-2.労働衛生の歴史

日本で労働衛生が活発的になったのは江戸時代からです。江戸時代はほとんどの男性が鉱山労働者でした。粉じんが常にまっている鉱山内では、肺をやられてしまうことが多かったのです。1849年に発行された「生野銀山孝義伝」の中では「坑内労働者は30歳くらいで死ぬ。」と記載されています。そして、昭和時代に入ると、1947年に労働基準法、労働安全衛生法が公布されました。労働者の健康を守る規律が見直され始めたのです。

1-3.労働衛生の目的・必要性

労働者の健康を維持することが労働衛生の目的です。労働環境や労働時間、作業方法、労働災害の防止など状況に合わせて見直していけば、労働者の健康を守ることができます。労働者が快適に働ける環境でなければ、効率の良い仕事もできません。労働衛生は労働者はもちろん、労働者を雇うがわにも大切な内容なのです。

1-4.3管理について

「労働衛生の3管理」をご存じでしょうか。労働衛生の3管理とは「作業環境管理」「作業管理」「健康管理」の3つの管理を指している言葉です。「作業環境管理」は作業環境中に発生する有害因子を把握して良好な状態に管理する内容になります。有害因子を把握するには作業環境測定が必要不可欠です。「作業管理」は環境を汚染させない作業方法、有害因子による労働者の負荷を軽減する内容になります。

そして、「健康管理」は労働者個人の健康状態をチェックして健康被害を防ぐ管理です。健康状態が悪ければ改善できるまで医学的および労務管理的な処置をおこないます。以上の労働衛生の3管理は労働衛生の基本です。ちなみに、3管理に「総括管理」と「労働衛生教育」を加えると「労働衛生の5管理」になります。

1-5.その他

労働基準法に基づき、事業場に対する監督や労災・労働保険の給付などをおこなう「労働基準監督署」があります。労働基準監督署は事業場に立ち入り、きちんと労働者の健康が確保されているかどうかチェックするのです。法違反が認められた場合は行政指導をおこないます。また、労働者がわにも連帯組織である「労働組合」が存在しているのです。労働組合は適切な契約交渉の維持から労働環境の向上など、労働者の雇用を維持し改善することに努めています。

2.労働衛生に関連する資格について

労働衛生に関連する資格は「労働安全衛生法(労働安全衛生規則)」に基づいています。一体どんな資格があるのでしょうか。

2-1.労働衛生の資格種類

労働安全衛生法に基づく資格はボイラー技士や高圧室内作業主任者、移動式クレーン運転士などさまざまです。中でも、事業場の衛生全般の管理をおこなう「衛生管理者」が重宝されています。衛生管理者は国家資格の1つなので、スキルアップや転職・就職にも大変役に立つ種類です。そこで、衛生管理者とは何なのか、業務や資格取得条件、仕事場など詳しく見ていきましょう。

2-2.衛生管理者の業務

安全な作業場を労働者に提供することが衛生管理者の主な業務内容です。詳しい職務は以下のとおりになっています。

  • 健康に異常がある者の発見および処置
  • 作業環境の衛生上の調査
  • 作業条件・施設などの衛生上の改善
  • 労働衛生保護具・救急用具などの点検および整備
  • 衛生教育・健康相談その他の労働者の健康保持に関する必要な事項
  • 労働者の負傷および病気、死亡、欠勤および移動に関する統計の作成
  • 事業の労働者がおこなう作業がほかの事業の労働者がおこなう作業と同一の場所においておこなわれる場合、衛生に関して必要な処置
  • その他衛生日誌の記録など職務上の記録の整備など
  • 安全衛生に関する方針の表明
  • 労働安全衛生法第28条の2第1項の危険性または有害性などの調査および、その結果に基づき講ずる処置
  • 安全衛生に関する計画の作成・実施・評価および改善

2-3.衛生管理者の資格取得条件

衛生管理者は第1種・第2種があります。2種類とも資格取得条件、受験資格が決まっているので必ずチェックしてください。代表的な受験資格をいくつかあげておきます。

  • 大学(短期大学を含む)または高等専門学校を卒業した後、1年以上労働衛生の実務経験
  • 高等学校または中等教育学校を卒業した後、3年以上労働衛生の実務経験
  • 10年以上労働衛生の実務経験

ほかの条件に関しては以下のURLでチェックしてください。

衛生管理者受験資格:http://www.exam.or.jp/exmn/H_shikaku502.htm

2-4.衛生管理者の仕事場

衛生管理者の仕事場は事業場や工場、工事現場がほとんどです。事業場の常時労働者数が50人以上の場合、必ず有資格者の中から衛生管理者を選任しなければなりません。常時使用労働者数が増えれば増えるほど、衛生管理者数も増えていきます。仕事場において衛生管理者は労働者たちの健康を支える大切な存在です。労働者たちによる労働相談も衛生管理者がおこないます。ちなみに、常時10人~50人以内の事業場においては「安全衛生推進者」もしくは、「衛生推進者」の選任が必要です。

2-5.衛生管理者の求人、就職、給料のメリット

規模が大きい事業場では衛生管理者が求められます。労働衛生の専門知識を持っている証拠になるため、就職・転職で役立つのは確かです。ほとんどの企業・会社が無資格者よりも有資格者を採用します。また、資格を取得しておけば資格手当など給料のメリットも大きいです。事業場の労働衛生を管理する役職なので、労働者とのコミュニケーション能力も身につくでしょう。

2-6.安全管理者との違い

衛生管理者と安全管理者の違いをご存じでしょうか。安全管理者とは建設業や清掃業、運送業などの業種で50人以上の労働者がいる事業所で選任しなければならない役割です。主に、労働者の安全管理や作業場の巡視が業務になります。職場で危険な場所があれば必要な安全処理・対策を素早くおこなわなければなりません。安全管理者が必要な職場は限られています。一方、衛生管理者は幅広い職場で必要とされる資格です。

2-7.安全衛生・労働衛生コンサルタントとは

安全衛生・労働衛生コンサルタントは事業者の求めに応じながら、安全衛生診断や指導をおこなう有資格者です。昭和47年に労働安全衛生法に基づき創設され、厚生労働大臣がおこなう高度の試験に合格しなければなりません。安全衛生コンサルタントは保健衛生や労働衛生工学、労働安全コンサルタントは機械・電気・化学・土木・建築の区分があります。安全衛生・労働衛生コンサルタントも受験資格が決まっているので、安全衛技術試験協会のホームページで確認してください。

安全衛生技術試験協会:http://www.exam.or.jp/

3.試験の受け方について

衛生管理者などの免許試験とコンサルタント試験にわけて申し込み方法や日程・試験内容を説明します。資格取得を考えている方は受験前に試験概要を確認しておきましょう。

3-1.衛生管理者など免許試験の申込方法

衛生管理者など労働安全衛生法に基づく免許試験は、安全衛生技術試験協会が実施しています。必要な受験申請書の請求をして各安全衛生センターに送ってください。申し込み方法は郵送、センター窓口への持参になります。申請書類は添付書類、試験手数料、証明写真の3点セットです。受験申請書は最寄りのセンターで請求できます。試験手数料は学科試験が6,800円、実技試験はクレーン関連・揚貨装置運転士が11,100円、普通ボイラー技士が18,900円、特別ボイラー技士が21,800円です。

3-2.免許試験の日程・試験内容

免許試験の種類によって日程が異なります。衛生管理者の試験日は各センターにて毎月1回開催される予定です。関東・中部・近畿センターなどでは毎月3回おこなわれるときもあります。衛生管理者の試験科目は第1種・第2種とで異なるため要注意です。

第1種の試験科目

  • 労働衛生(有害業務にかかわるもの)
  • 労働衛生(有害業務にかかわるもの以外)
  • 労働生理
  • 関係法令(有害業務にかかわるもの)
  • 関係法令(有害業務にかかわるもの以外)

第2種の試験科目

  • 労働衛生(有害業務にかかわるものをのぞく)
  • 労働生理
  • 関係法令(有害業務にかかわるものをのぞく)

3-3.コンサルタント試験の申し込み方法

コンサルタント試験も同じく、安全衛生技術試験協会の各センターに受験申請書を請求します。提出方法は郵送、または提出先窓口への持参です。申請書の記入もれがないように注意してくださいね。

3-4.コンサルタント試験の日程・試験内容

労働安全・労働衛生コンサルタントの試験は毎年1回、10月ごろに実施されます。試験地は北海道・東北・中部・近畿・中国四国・九州・東京都内のセンター7か所です。試験区分は労働衛生コンサルタントが保健衛生・労働衛生工学、労働安全コンサルタントは機械・電気・化学・土木・建築の5種類になります。

3-5.合格率、難易度について

衛生管理者の合格率はおよそ50%前後です。平成27年度における合格率は第1種が55.5%、2種が66%でした。つまり、5人に1人が試験に合格しています。決して、難しい試験ではありません。きちんと勉強すれば誰もが合格できるでしょう。一方、コンサルタント試験の合格率はおよそ25%~30%です。

4.資格取得のための勉強法

労働衛生に関する資格を取得するには勉強が必要不可欠です。一体、どんな勉強をすればいいのか悩んでいる人は多いでしょう。そこで、受験対策や学習時間など説明します。

4-1.受験対策

受験対策は試験科目を把握して過去問をマスターすることです。テキストや参考書ばかりではなく、過去問をできるだけたくさんといてください。基本的に、テキスト・参考書で基礎知識を身につけ、過去問を多くとく流れで勉強しましょう。また、過去問を何年分かチェックしてみると似ている問題が多く見られます。よく出る問題、頻出度の高い項目を過去問でチェックしておきましょう。

4-2.学習時間

学習時間は毎日数十分でもコツコツ積み重ねることが大切です。休みの日、一気に勉強をする人は多いでしょう。しかし、人間の記憶力は毎日くり返していったほうが持続しやすいものです仕事の合間や移動時間、就寝前の10分間など勉強時間にあててください。

4-3.過去問・テキスト・参考書の紹介

本屋に行けばたくさんの過去問・テキスト・参考書が販売されています。どの過去問を選べばいいのかわからない方は、コンデックス情報研究所出版の「詳解第1種衛生管理者過去6回問題集」を使ってみてください。加藤利昭著の「衛生管理者過去問題と解説」もあります。テキスト・参考書は自分にとってわかりやすい内容が好ましいです。コンデックス情報研究所から出ている「第1種衛生管理者集中レッスン」は重要ポイントを押さえているので必要な情報だけ入手できます。

4-4.独学と受講

勉強法は人それぞれ異なります。主に独学、資格スクールでの受講、通信講座の3つが勉強法になるでしょう。独学はテキスト・参考書、過去問題集の費用だけで勉強できます。しかし、自分でわからないところを解決しなければなりません。一方、受講は費用がかかりますが、専門の先生に直接教えてもらうことができます。

5.労働衛生に関してよくある質問

最後に、労働衛生に関してよくある質問を5つピックアップしてみました。労働衛生に関する資格を取りたい方、労働衛生について知りたい方はぜひ参考にしてください。

Q.労働者派遣法とは?
派遣社員にとって大切な法律が「労働者派遣法」です。労働者派遣法のポイントは「有給休暇・山九・育休」「社会保険」「仕事内容ごとの労働時間」「派遣NGの職種」の4つになります。派遣労働者に関する労働衛生の規則が記載されている法律です。

Q.労働局とは?
都道府県ごとに設置されている厚生労働省の地方支分部局です。主に、労働相談や労働法違反の摘発、職業紹介、失業防止などを担当している部局になります。

Q.安全運転管理者について
安全運転管理者制度は、事業所における安全運転を確保するための制度です。たとえば、労働者が使用する車両の運行計画、運転者に対する指導、車両の点検・整備が職務になります。

Q.安全衛生委員会の役割は?
一定の事業者には安全衛生管理体制が義務づけられています。「安全衛生委員会」は、労働者が安全衛生に関心を持たせることが目的です。労働者から意見を聞き、より良い職場環境をつくる役割を持っています。

Q.衛生工学衛生管理者の職務内容について
衛生工学衛生管理者は衛生管理者の資格取得者から選任されます。主な職務は、有害因子の発散抑制、衛生工学的対策などです。ほとんど衛生工学に関する仕事になるでしょう。

まとめ

労働衛生は事業場で働く労働者たちの健康を守る大切なものです。労働衛生が徹底されていない事業場は行政機関より注意喚起がおこなわれ指導されることになります。そして、労働衛生を維持するための資格が衛生管理者などの国家資格です。労働衛生の仕事をしたい、スキルアップを目指したい方は衛生管理者の資格を取得してください。資格取得のための情報を知れば、1発合格できます。毎日自分に合った方法で勉強を続けましょう。