
安全衛生優良企業公表制度って何? メリットを解説します!
安全衛生優良企業公表制度について、詳しく知りたい人のために制度の概要から認定を受けるメリット・認定基準などをまとめました。労働者が安心して快適に仕事をするためにも、企業が安全衛生へ配慮することは欠かすことができません。
また、企業の労働環境が劣悪であることが問題となっている今、安全衛生優良企業としての認定を受けることは社会的にも大きなメリットがあります。企業として利益を生み続けるためにも、労働者の安全衛生管理や労働環境を整えることは使命と考えましょう。
記事を読んだ人は、安全衛生優良企業公表制度について詳しい知識を得ることができます。同時に、自社で何をするべきかについても理解できるはずです。安全衛生優良企業として認定を受け公表されたい場合は、記事の内容が有益なものとなります。ぜひ、じっくり読んで役に立ててください。
1.安全衛生優良企業公表制度とは?
まずは、安全衛生優良企業公表制度についての基本を学びましょう。概要と目的について、それぞれ理解してください。
1-1.安全衛生優良企業公表制度の概要
安全衛生優良企業公表制度は、労働安全衛生への取り組みを積極的に行っている企業を公表する制度です。平成27年6月より開始したばかりの制度となります。また、認定を受けるためには自社から申請をすることが必要な点などから、現状としては企業への認知はこれからの状態であると言えるでしょう。しかし、ライバル企業に先立って取得することに大きな意味があると考えることもできます。
1-2.安全衛生優良企業公表制度の目的
目的としては、企業に対して安全衛生への取り組みを推し進めるためとなります。企業は、ときとして営利を得ることを優先し過ぎるため、労働者の安全衛生がおろそかになりがちです。しかし、安全衛生優良企業公表制度を設置することで厚生労働省からの評価を得ることができる点は、企業にとっても大きなイメージアップとなりメリットが大きいと判断できます。
2.安全衛生優良企業とは?
安全衛生優良企業とは、どんな企業なのでしょうか。詳しく解説します。
2-1.安全衛生優良企業の概要
安全衛生優良企業とは、労働安全衛生に対して積極的な取り組みをしていたり高い水準を維持していたりする企業のことです。求職者は、企業における労働環境の判断基準のひとつとすることができます。ただし、公に安全衛生優良企業と名乗るためには、厚生労働省からの認定を受けている必要がありますので注意しましょう。
2-2.安全衛生優良企業になるメリット
安全衛生優良企業になることは、企業にとっても労働者にとっても大きなメリットがあると言えます。
- 労働者は安全衛生基準の高い職場で安心して勤務できる
- 労働力がアップするためさまざまな企業活動にプラスとなる
- 労働環境が向上するため離職率が下がる
- 求職者にとっては優良企業を探すときの判断基準のひとつになる
労働安全衛生に関して軽く見ている企業は、長い目で見ると衰退するものです。安全衛生優良企業を目指すことは、企業にとってコスパの高い投資方法であるとも言えるでしょう。
3.安全衛生優良企業公表制度の認定について
安全衛生優良企業公表制度に認定を受けるメリットや、認定基準について解説します。また、取得方法についても学んでください。
3-1.安全衛生優良企業公表制度で認定を受けるメリット
認定を受けるメリットは、主に以下のようなものがあります。
- 社会や求職者に対して安全衛生優良企業であることの証明となる
- 安全衛生優良企業公表制度の認定マークを使用できる
- 企業イメージが向上するため営業や採用のときに有利になる
安全衛生優良企業公表制度で認定を受けることは、厚生労働省のお墨付きをもらったようなものです。数多くのメリットがあるのは当然と言えます。なお、認定期間は3年間です。
3-2.安全衛生優良企業公表制度の認定基準
認定基準については、認定のために必要な項目をすべてクリアしていることと、企業の積極的な取り組みを評価する項目で基準以上の評価があることが必要です。
3-2-1.認定のために必要な項目とは
認定のために必要な項目は、「企業の状況」と「企業の取り組み」の2つに分けて評価します。そのうち、企業の状況についての項目は優良企業としてふさわしいかどうかを判断するためのものです。詳細については、下記をご覧ください。
- 過去3年間の労働安全衛生法などの違反状況チェック
- 労働災害発生状況の確認
- 優良企業としてふさわしくない内容があるかチェック
また、企業の取り組みについての項目は下記をご覧ください。
- 安全衛生体制の状況チェック
- 安全衛生全般への取り組みチェック
上記の項目について、ひとつでも満たすことができない場合は認定を受けることが不可能となるので注意しましょう。
3-2-2.企業の積極的な取り組みを評価する項目とは
安全衛生活動を推進するための取り組み状況として、以下の項目で査定した結果、各項目6割以上かつ総合点数で8割以上の得点が必要です。
- 安全衛生活動を推進するための取り組み状況:5点(取り組み評価点5点)
- 健康管理の取り組み状況:12点(取り組み評価点10点・実績評価点2点)
- メンタルヘルス対策への取り組み状況:10点(取り組み評価点10点)
- 過重労働防止対策の取り組み状況:13点(取り組み評価点10点・実績評価点3点)
- 受動喫煙防止対策の実施状況:2点(実績評価点2点)
- 安全でリスクの少ない職場環境を整備することへの取り組み状況(製造業などで査定):13点
製造業などは総合点数で55点中44点以上を、製造業など以外は総合点数で42点中34点以上が必要になります。
3-3.安全衛生優良企業公表制度の認定を取得する方法
認定を受けようとするときは、以下のステップに従って手続きをしてください。
- 最初に自己診断サイトで自社の安全衛生の取り組みレベルを自己診断する
- 自己診断の結果で基準を満たしている場合は書類にて申請する
- 申請結果を待つ
申請先は、企業の本社を管轄する都道府県労働局(健康安全主務課)となります。申請方法は、直接持参もしくは郵送から都合のいい方法を選びましょう。なお、自己診断サイトについては以下のリンク先を参考にしてください。
厚生労働省の安全衛生優良企業公表制度自己診断サイト
4.労働安全衛生法について
労働安全衛生法についても、概要や目的を理解しておきましょう。また、労働安全衛生規則や衛生管理者に関しても解説します。
4-1.労働安全衛生法の概要や目的
労働安全衛生法は、労働者の安全と衛生に関する基準を制定した法律です。なお、労働基準法との関連性も深いため同時に理解をしておくことが望ましくなります。労働安全衛生法の目的は、労働者が適切な環境の下で安全かつ健康に労働できることです。労働安全衛生法があるために、労働者は最低限の労働環境を保証されるとともに、企業は労働環境の改善と維持に努力する必要があると覚えておきましょう。
4-2.労働安全衛生規則とは?
労働安全衛生規則とは、労働安全衛生法に基づいて安全衛生の基準を詳しく定めたものです。たとえば、安全管理の詳細・労働中の救護の参考になるだけでなく、機械や危険物・有害物の規制などについても詳しく触れています。なお、労働安全衛生規則は厚生労働省令のひとつです。
4-3.衛生管理者について
衛生管理者は、労働基準法により常時50人以上の労働者がいる職場に選任義務があります。衛生管理者になるためには、衛生工学衛生管理者・第一種衛生管理者・第二種衛生管理者いずれかの免許を取得することが一般的です。衛生管理者免許を取得することは労働安全衛生への深い知識を習得している証拠となるため、企業にとって欠かすことができない人材と言えます。
5.安全衛生優良企業公表制度についてよくある質問
それでは、安全衛生優良企業公表制度に関してよくある質問に回答します。今まで学んだ知識の総まとめとしてもしっかり確認しておきましょう。
Q.個人商店は安全衛生優良企業にはなれないのでしょうか?
安全衛生優良企業の認定は、個人商店でも受けることができます。従業員を雇用していて労働安全衛生に積極的に取り組んでいる自負がある場合は、ぜひ認定を受けておきましょう。個人商店は、従業員が少ないことが多く、労働安全衛生が後回しになることが多いです。しかし、安全衛生優良企業に認定されることで労働者にも配慮が行き届いている証拠となります。取引先へのアピールにも有益ですよ。
Q.安全衛生優良企業の認定を受けるための自己診断に迷いがある場合は?
自己診断は、安全衛生優良企業としての認定を受ける前のプレテストのようなものです。自己診断の時点で基準を満たしていなかったり迷いがあったりする場合は、企業内の安全衛生について見直してください。ひとつでも不安がある状態では、認定を受けることができない可能性があります。自己診断をやってみて問題が無くなった状態で、改めて申請しましょう。
Q.2年前に労働災害を起こしていますが大丈夫ですか?
内容によります。安全衛生優良企業になるためには、労働災害発生状況の確認の際に、当時の労働災害の内容について詳しく調査を受けることになるでしょう。そのため、現時点では確実なことは言えません。しかし、内容が深刻なものでなくきちんと事後対策ができている場合は、条件をクリアすることも可能です。まずは、認定審査を受けてみることをおすすめします。
Q.安全衛生優良企業の認定基準を下回ったときにはどうしますか?
何らかの理由で、認定基準を満たすことができなくなった場合は速やかに申し出てください。具体的には、認定を受けた労働局に対して安全衛生優良企業認定通知書を返納することになります。また、通知書の返納が無い場合は、取り消し処分となり2年間は再申請を受けることができなくなるので注意してください。加えて、再度認定基準を満たすことができるように努力することも大切ですよ。
Q.衛生管理者資格は安全衛生優良企業公表制度の認定で役に立ちますか?
衛生管理者の職務は、職場の安全衛生をあらゆる点で管理・改善・維持することです。従って、職務をきちんと行っていれば安全衛生優良企業公表制度の認定を受けるために有利となることは明らかと言えます。むしろ、大企業になればなるほど職場の安全衛生基準を保つことは大変ですから衛生管理者資格がある人は、企業にとっても重要な人材とみなすのです。職場で安全衛生のエキスパートとして働きながら、安全衛生優良企業公表制度の認定に向けてがんばってください。
Q.厚生労働省が行っているストレスチェック制度について教えてもらえますか?
ストレスチェック制度とは、厚生労働省が平成27年12月より行なっている労働者のメンタルヘルスの改善を目的とした制度です。職場の安全衛生を管理するときには、労働環境を整えるだけではいけません。労働者が知らず知らずのうちに受けているストレスをの度合いを定期的にチェックして本人に通知することは、とても重要な意味を持ちます。企業において労働者のメンタルヘルスを適正に維持することは、避けることができない問題なのです。
まとめ
企業にとって、職場の労働安全衛生を整えることはとても大切なことです。労働安全衛生に対して積極的に働いていて基準を満たしているときは、ぜひとも安全衛生優良企業公表制度の認定を受けましょう。認定を受けることで、企業としてもさまざまなメリットを受けることができます。今の時代、単なる利益追求に走ってばかりでは優良企業としての地位を確保することはできません。長い目で見て、労働者の安全衛生を管理し、健康管理や環境維持に努力することは企業にとって大きな利益をもたらすのです。安全衛生優良企業として認定を受けることは、社会的にも知名度や信頼度を上げることになります。記事を参考にして、認定の申請を行ってくださいね。