労働安全衛生法違反の罰則は? 注意すべきポイントを解説

労働安全衛生法とは、労働者が安全に衛生的に仕事ができることを目的に作られた法律です。もともとは労働基準法の一部でしたが、1972年に独立しました。衛生管理者や産業医の選任も、この法律に基づいて行われています。労働基準法に比べると知名度が低い労働安全衛生法ですが、労働災害を防ぐためにもコンプライアンスが重要です。

そこで、今回は労働安全衛生法に違反した場合の罰則についてご紹介します。

  1. 労働安全衛生法とは?
  2. 設置・選任・実施が義務づけられていること
  3. 労働安全衛生法に違反した場合の罰則は?
  4. 衛生管理者になるための方法
  5. 労働安全衛生法違反に関するよくある質問

この記事を読めば罰則だけでなく、労働安全衛生法が制定された目的や内容などもよく分かるでしょう。衛生管理者の資格取得を目指している方も、ぜひ読んでみてくださいね。

1.労働安全衛生法とは?

労働安全衛生法とは、前述したように1972年に労働基準法から独立する形で制定されました。労働者が安全で衛生的に働くことができるように職場環境を整えること・労働者の健康と安全を守ること・労働災害の防止・危険防止の基準の確立を目的としています。

安全管理者・衛生管理者・産業医の選任基準や安全委員会や衛生委員会の設置基準、労働災害が発生した際の労働基準監督署への報告義務などがこの法律によって定められているのです。

労働安全衛生法は、鉱山の従業員や船員など別の法律で保安が定められている職業以外は、従業員を1名でも雇っているすべての職場に適用されます。

2.設置・選任・実施が義務づけられていること

この項では、労働安全衛生法に基づき、選任が義務づけられている職務や実施しなければならないことなどの一例を、より詳しくご紹介します。どのようなことが定められているのでしょうか?

2-1.安全管理者・衛生管理者・産業医などの選任

前述したように、安全管理者や衛生管理者は労働安全衛生法に基づき、職場ごとに選任が義務づけられています。安全管理者は50人以上が所属している定められた職種の事業所、衛生管理者や産業医は職種に関係なく、50人以上の従業員が所属している職場には選任が必要です。

従業員が50人未満の職場には、安全推進者や衛生推進者の選任が必要となります。

2-2.安全委員会・衛生委員会の設置

こちらも前述したように、安全管理者や衛生管理者の選任が必要な職場では、安全委員会と衛生委員会の設置が義務づけられています。安全管理者と衛生管理者、両方の選任が必要な職場は2つの委員会を併せ、安全衛生委員会とすることも可能です。委員会は、安全教育や衛生教育の実施・職場の安全や従業員の健康を守るために、従業員の意見を経営者に伝えることなどが目的に開催されます。最低でも月1回は委員会を業務として開催しなければなりません。

2-3.健康診断やストレスチェックの実施

健康診断の実施も、労働安全衛生法で義務づけられています。通常は年に1度ですが、体に有害な物質を扱っている職場の場合は、半年に一度健康被害を受けやすい器官の健康診断を行うよう、定められているのです。

また、2015年度より従業員が常時50名以上所属している事業所は、ストレスチェックも義務づけられました。ちなみに、ストレスチェックの内容は会社が把握することはできません。健康診断の内容は衛生管理者や衛生推進者が管理していますが、これは職場の環境改善などにも役立てるためです。健康診断を行った際、同じ疾患が従業員に多発している場合は、職場環境が原因の可能性がありますので、すぐに対策を立てなければなりません。

2-4.安全教育・衛生教育の実施や労働災害が発生した場合の報告や防止対策

会社は、従業員に安全教育や衛生教育を行う義務があります。そのための時間は業務内に取らなければなりません。安全教育や衛生教育は労働災害予防の一環でもあります。この他にも、可能な限り労働災害を防止する役割を企業は担っているのです。

なお、労働災害が起こった場合は、速やかに最寄りの労働基準監督署へ連絡しなければなりません。

3.労働安全衛生法に違反した場合の罰則は?

この項では、労働安全衛生法違反があった場合の罰則などをご紹介します。誰が罰を受けるのでしょうか?

3-1.労働安全衛生法の罰則とは

労働安全衛生法の罰則は、第十二章に定められています。罰則内容は、6か月以下の懲役または50万円以下の罰金刑です。これだけ見ると何だか軽いように思われますが、従業員を大切にしない企業として会社の信用は落ちるでしょう。ブラック企業という評判が広まれば、優秀な人材から流出してしまうかもしれません。

なお、労働災害によって従業員が死亡した場合は、業務上過失致死罪に問われることがあります。労災を労働基準監督署に報告する際、虚偽報告があった場合や、労災隠しが行われた場合は、書類送検されることもあるでしょう。

3-2.罰則の対象者とは?

労働安全衛生法に違反した場合、罰則を受けるのは経営者です。社長や役員などが罪に問われるでしょう。また、違反した内容によっては事業所の責任者(所長や工場長)などが罪に問われることがあります。また、健康診断の内容を本人に無断で第三者に漏らした場合は、管理を行っている衛生管理者が罪に問われることもあるでしょう。

3-3.労働安全衛生法違反の一例

  • 安全教育や衛生教育を行わなかった
  • 病気になっている人を無理やり働かせた(なお、この場合の病気とは厚生労働省が定めるものである)
  • 健康診断の内容を無断で漏らした

このような場合は、6か月以下の懲役か50万円以下の罰金になります。なお、労働者を強制的に働かせた場合の罰則というのは、労働安全衛生法ではなく、労働基準法の第五条で10年以下の懲役、もしくは300万円以下の罰金という罰則が定められているのです。

  • 衛生管理者や安全管理者の未選任
  • 衛生委員会・安全委員会の未設置
  • 健康診断の未実施
  • 労働災害を防止する措置を取らなかった
  • 健康診断の未記録
  • 産業医の未選任

などの法令違反をすると、50万円以下の罰金刑が課せられます。ちなみに、労働災害を防止する措置を取らなかった、という中には労働者が長時間の残業をしたのに、産業医との面談など必要な処置を取らなかったということなども含まれるのです。

3-4.労働安全衛生法順守のために衛生管理者が担う役割

労働安全衛生法の内容や罰則は、経営者だけではなく従業員も知っておいた方がよいでしょう。衛生管理者は、衛生教育の一環として法律の内容を説明してもよいですね。

この他、週に一度、職場巡視を行って労働災害を未然に防ぐことも大切な役割になります。労働災害は、危険を伴う職場だけ起こるものではありません。前述したように、長時間労働やパワハラ・セクハラなどが原因でうつ病などになったり、脳出血や心筋梗塞を発症した場合も適用されます。この場合は、遺族が民事訴訟を起こすこともあるでしょう。経営者が長時間労働を従業員に強要した場合などは、刑事事件に発展するかもしれません。

従業員の健康を守るためだけでなく、会社が健全に存続していくためにも衛生管理者の職務は重要です。

4.衛生管理者になるための方法

衛生管理者になるためには、大学で指定された単位を修得したうえで厚生労働省が定めた研修を修了するか、一定の実務経験を積んでから、試験を受けて合格する方法があります。前述したように衛生管理者は職種に関わらず50名以上の従業員が所属しているすべての事業所に、選任義務があるのです。事業所が大きくなって従業員が増えた結果選任義務が生じた場合、衛生管理の職務に就いていた人が、資格取得を会社から命じられることもあるでしょう。資格を取得すれば、転職にも有利です。

試験勉強は独学でも行えますが、SATの衛生管理者合格講座を受講すれば、最短20時間の自宅学習で合格することもできます。ブック式の参考書の他に、専門の講師が行う講義を収めたDVDもついていますから、目と耳の両方から知識を吸収でき、大変効率的です。一発合格を狙う方はもちろんのこと、独学で試験にチャレンジし、残念ながら不合格だったという方もぜひ利用してみてください。

5.労働安全衛生法違反に関するよくある質問

Q.会社が労働安全衛生法違反を行っているようですが、従業員が訴えることはできますか?
A.可能です。残業時間を記録したタイムカードなどをもって最寄りの労働基準監督署に訴えてください。

Q.今年から健康診断は各自で行ってほしいと言われました。これは、違反になりますか?
A.1年以上勤めており、正社員が勤務している時間の4分の3以上働いている場合は違反です。1年以上継続して雇用し続ける意志を会社側が示している場合は、従業員の勤務期間が1年未満でも違反になります。

Q.会社からの帰宅途中、飲酒をして階段から落ちてケガをしました。労災に指定されますか?
A.帰宅途中で寄り道をし、その結果事故に遭った場合は労災に指定されません。会社が労働基準監督署に報告しなくても、違反ではないのです。

Q.定年を超えて勤めている従業員でも、労働安全衛生法は適用されるのでしょうか?
A.年齢・性別・雇用形態問わずに適用されます。

Q.衛生管理者がどうしても選任できない場合はどうしたらよいでしょうか?
A.最寄りの労働基準監督署に理由を説明し、可能な限り早急に有資格者を雇うなどの対策を立ててください。

6.おわりに

いかがでしたか? 今回は労働安全衛生法違反の罰則についてなどをご説明しました。労働安全衛生法はとても大切な法律ですが、すべての企業で順守されているとは言いがたい状況です。衛生管理者がしっかりと業務を行い、経営者と渡り合っていくことも大切になるでしょう。また、企業も労働安全衛生法や労働基準法をしっかり順守していれば、ホワイト企業だと認識され、メリットが大きくなります。