有機溶剤中毒の症状はどんなもの? 治療方法や予防方法は?

有機溶剤とは、主に油・樹脂・塗料などの水に溶けない物質を溶かすために使われる溶剤です。強い匂いを持ち、揮発しやすい特徴があるものが多く、石油・灯油・シンナーなども有機溶剤の一種になります。この有機溶剤が揮発した蒸気を吸ったり肌に触れたりした際、発生するのが有機溶剤中毒です。高濃度の有機溶剤を吸えば急性中毒になることは広く知られていますが、低濃度の有機溶剤を長期間吸い続けていても、慢性中毒になることがあります。

そこで、今回は有機溶剤の症状や種類・予防方法などを紹介しましょう。

  1. 有機溶剤って何?
  2. 有機溶剤中毒について
  3. 有機溶剤中毒を予防する方法
  4. 有機溶剤中毒に対するよくある質問

この記事を読めば、有機溶剤を取り扱っている職場での衛生管理者の役割も分かりますよ。衛生管理者の資格取得を目指す方も、ぜひ読んでみてくださいね。

1.有機溶剤って何?

有機溶剤とは他の物質を溶かす性質を持った有機溶剤の総称であり、前述したようにゴムや塗料など水に溶けない物質を溶かすために、使われています。ちなみに、有機溶剤と有機溶剤以外の物質が混じり合った製品でも、有機溶剤の含有率が5%以上の場合は、有機溶剤と同じ扱われ方をするのです。現在、日本では約500種類の有機溶剤がいろいろな場所で使われており、その数は現在も増え続けています。

有機溶剤は前述したように揮発しやすい性質を持つことから、蒸気となって空気と共に体内に吸収されやすいという特徴があり、油脂にも溶けることから、皮膚からも体内へ吸収されるのです。有機溶剤には体に有害な物質がたくさん含まれており、体内に多量の有機溶剤が入ると急性中毒を起こします。また、少量であっても長期間有機溶剤を体内に吸収し続けると、慢性中毒を起こすこともあるでしょう。

そのため、昭和47年に「有機溶剤予防規則」が制定され、現在は54種類の有機溶剤がこの規則によって取り扱いが規制されています。

有機溶剤は水に溶けないものを溶かす物質の総称なんですね。
はい。シンナーなどが代表的です。

2.有機溶剤中毒について

この項では、有機溶剤中毒の症状や治療法などを紹介します。どのような症状が現れるのでしょうか?

2-1.中毒を起こす物質について

有機溶剤に含まれている物質のうち、中毒症状を起こす物質として有名なのが、トルエン・ベンゼン・シンナーなどです。この中でもベンゼンは合成洗剤にも含まれており、長年飲食店で働いてきた方が合成洗剤に含まれるベンゼンによって慢性中毒を起こした例もあります。

2-2.急性中毒について

急性中毒とは、密閉された部屋や換気性の悪いトンネルの中などで有機溶剤を使った場合、発生する可能性のある中毒です。目まい・吐き気・頭痛・意識消失などが起こり、最悪の場合は死に至ります。また、一命をとりとめた場合も深刻な後遺症が出ることもあるでしょう。密閉された場所で有機溶剤を使う危険性は広く知られていますが、使用している薬剤に有機溶剤が入っていると知らなかったため、急性中毒が起こる例もあります。
急性中毒は家庭でも起こりやすいので、塗料などを使う場合は十分注意しましょう。

2-3.慢性中毒について

慢性中毒とは、前述したように少量の有機溶剤を長期間体内に取り込み続けた結果、発生する中毒のことです。症状の一例として、皮膚炎・結膜炎・慢性気管支炎・再生不良性貧血・痴ほう症状(イライラ、物忘れが激しいなど)・手足のしびれなどが上げられます。

慢性中毒は有機溶剤を使用して何年もたってから症状が出ることもあり、その分因果関係を立証することが困難な例も珍しくありません。また、これらの症状は慢性中毒以外のことが原因でも現れるため、自分でも有機溶剤の慢性中毒だと気づかない方もいるでしょう。

2-4.有機溶剤中毒の治療方法

有機溶剤中毒が発生した場合、すぐに発生現場から離れることが大切です。その上で、原因物質を特定して解毒治療を行います。しかし、有機溶剤が複数混ぜられている製品を使用中に中毒が発生した場合は、原因物質の特定が難しく、治療が難しくなるでしょう。
また、慢性中毒の場合は解毒することが不可能なので、症状を和らげる対症療法(これにつきましては対処療法が間違いです。こちらのページを参考にしてください。)が中心となります。

このように、有機溶剤中毒は一度発生すると収束が困難です。そのため、予防することが大切になります。

有機溶剤は急性中毒と慢性中毒があるんですね。
はい。職場で発生するとどちらも労働災害になります。

3.有機溶剤中毒を予防する方法

この項では、有機溶剤中毒を予防する方法を紹介します。換気に気をつける以外には、どのような方法があるのでしょうか?

3-1.作業主任者を選任する

有機溶剤予防規則で指定されている有機溶剤を使用する場合は、作業主任者を選任することが義務づけられています。作業主任者には、有機溶剤作業主任者講習を修了した方が選任を受けることが可能です。作業員に作業の方法を指示し、換気システムや保護具が適正に使われているか、点検や監督を行うことが主な職務となります。

また、有機溶剤予防規則で規制されていない有機溶剤を使用する場合も、作業を監督する人を選任した方が中毒を予防できるでしょう。

3-2.作業環境管理を徹底する

有機溶剤の揮発を防ぐ方法は、現時点では不可能です。ですから、発生する有毒な蒸気を発散させるシステムのある場所で作業をし、保護具を装着するようにしましょう。保護具は防毒マスクが一般的ですが、毒性の強い有機溶剤を使う作業や有機溶剤が入っていたタンク内で作業をする場合は、皮膚からの吸収を避けるために防護服も装着します。

また、6か月に1度作業環境測定士が作業環境の測定を実施し、作業環境評価基準に基づいて評価を行うことも必要です。評価基準に達しなかった場合は、すぐさま作業環境の改善を行いましょう。

3-3.健康管理を行い、有機溶剤の危険性を周知する

有機溶剤を使用する職場では、有機溶剤予防規則によって有機溶剤健康診断を行うことが義務づけられています。年に1度実施する健康診断とは異なり、使用している有機溶剤の種類にによって検査する項目が異なるのが特徴です。尿検査や血液検査・肝機能検査が行われるほか、業務の経歴も調査されます。検査結果に異常が現れた場合は、本人を配置転換させ、作業環境の見直しを行いましょう。

また、有機溶剤の危険性を作業員に理解させることも大切です。有機溶剤が危険なことは広く知られていますが、中毒の症状や作業環境を整える大切さは、教育が必要になります。マニュアルを作成して従業員に配布する企業は多いのですが、可能ならば衛生管理者や安全管理者が安全教育を行いましょう。

有機溶剤中毒は予防することが大切なんですね。
はい。安全衛生教育をしっかりと行いましょう。

4.衛生管理者について

衛生管理者とは、健康を保持し衛生的に従業員が仕事が行えるように職場環境を整える職務を行うことができる国家資格です。有機溶剤を取り扱っている職場では、有機溶剤健康診断の実施や検査結果の管理、安全衛生教育なども職務となるでしょう。また、職場巡視を行い、従業員の意見を聞くことも大切な職務です。

衛生管理者も有機溶剤中毒の予防にかかわる職種なんですね。
はい。衛生管理の一環として予防に努めましょう。

5.有機溶剤中毒に対するよくある質問

Q.有機溶剤中毒にかかった場合は、労災に認定されるのでしょうか?
A.はい。認定されます。ただし、従業員が安全管理をおろそかにしたために中毒が発生した場合は、その責任を問われ補償額が少なくなることもあるでしょう。

Q.慢性有機溶剤中毒の可能性が高いと病院で指摘されました。すぐに職場に報告した方がよいでしょうか?
A.もちろんです。すぐに職場に報告してください。

Q.衛生管理者の選任が必要ない職場では、誰が衛生教育などを行えばよいでしょうか?
A.衛生管理者の選任が必要のない職場では、衛生管理の実務経験がある方が安全衛生推進者に選任されます。その方が衛生管理や衛生教育を行うのが一般的です。

Q.有機溶剤中毒は、どんな方がかかりやすいのでしょうか?
A.かかりやすい体質などはありません。性別や年代も関係なく発生します。

Q.有機溶剤中毒が発生したと疑われる場合はどう対処したらよいでしょうか?
A.すぐに換気を行い、中毒者を現場から移動させて救急車を呼んでください。

おわりに

今回は有機溶剤中毒について解説しました。急性中毒の場合は、いきなり意識を失ってそのまま死亡する可能性もあります。有機溶剤を扱う場合は換気を十分に行い、異常が起きたらすぐに外部へ知らせるような対策をとっておくことも大切です。また、衛生管理者は職場巡視を行った際、衛生管理が不完全だと思ったらすぐに主任者に連絡をして、指導を行ってもらいましょう。中毒が発生してからでは遅いのです。