
工場の事故防止策は? 事故が起きる原因や発生したときの対応も
工場で事故防止に努める重要な役割を衛生管理者が担うことになります。「工場で事故を防ぐにはどうすればいいのか」「工事で事故が発生したときの対応は?」など、工場の事故防止策で頭を抱えている方は多いでしょう。衛生管理者が担うことになる事故防止策について、本記事で詳しく解説します。
この記事を読むことで、工場で事故が起きる原因や対策などが分かります。気になっている方はぜひ参考にしてください。
1.工場で事故が起きる原因は?
最初に、工場で事故が起きる原因をチェックしておきましょう。
1-1.ほとんどの原因はヒューマンエラー
工場で起きる事故のほとんどは、ヒューマンエラーが原因です。ヒューマンエラーは必ず起きるものといわれています。そのため、起きることを前提に考え、どうすれば起こさないようにできるのか、事故が起きたらどのように対応すべきなのか対策を講じることが大切です。また、ヒューマンエラーの主な原因は、見落とし・思い込み・やり忘れの3つだといわれています。たとえば、以下のような事例です。
- 指示書に修正が入っていることを見落としてしまい、前の指示どおりに動いてしまった
- 通行禁止のサインが出ているのを見落として通行し事故が起きた
- いつも同じことをしているから、てっきり今日も同じだと思った
- 上司からの指示を忘れていた
- 後でやればいいと思って、そのまま指示書を出すのを忘れた
1-2.人がミスしやすい・事故が起きやすい環境
ヒューマンエラーを含めた工場の事故は、環境も大きな原因の1つです。たとえば、整理整頓がきちんとされていない環境は、転んでしまったり何かの弾みでものが落ちてきたりすることがあります。そのような事態が大きなケガにつながり、死亡事故を起こすきっかけになることもあるのです。だからこそ、定期的に整理整頓や清掃を行うことが大切なポイントとなります。どこに危険が潜んでいるのか分からないため、環境を見直すことも重要です。
1-3.ヒヤリハットやストレスが原因になることも
事故の可能性があった事象のことをヒヤリハットといいます。毎日同じ作業を続けていると慣れてきて注意力が散漫になるものです。ヒヤリハットは慣れてきたころに起きやすくなるため、常に意識を高めておかなければなりません。慣れた作業で気持ちが安心するからこそ、失敗や事故が起きるリスクも高くなってしまいます。また、作業員のストレスが事故の原因になるケースもよく起きているので要注意です。人間関係の悪化や過重労働など、精神的なストレスをためこんでしまい、睡眠不足から作業に集中できなくなります。
2.工場での事故を防ぐ方法
それでは、工場での事故を防ぐ方法とポイントを解説します。
2-1.人のミスが発生しない環境を作ろう
まずは、人のミスが発生しない環境を作ることが大切です。ヒューマンエラーを発生させないようにするため、人を介在させない方法があります。機械ができる工程はできるだけ機械にさせるという方法です。システム化することでヒューマンエラーのリスクが軽減できます。また、シンプル化かつマニュアル化するのも大切なポイントです。長く仕事を続ける人にとっては慣れた作業ですが、客観的に見れば複雑でシステム化されていない可能性があります。だからこそ、工程を省いてできるだけシンプル化すること、そしてそれをマニュアル化することでミスを減らす方法が大切です。
2-2.ヒューマンエラーがないように訓練する
人がミスをしない環境を作る上で大切なのは、人がミスをしないように訓練することです。工場で起きるヒューマンエラーの中には、知識不足や技量不足のために起こってしまう事故もあります。そのような事故を防ぐには、練習・訓練が必要不可欠です。マニュアル化した方法を徹底させたり、定期的に講習会を開いたりするなど、訓練する方法はたくさんあります。最近では、VRや擬似装置など最新技術を使って体験訓練をする方法も採用されているほどです。
2-3.整理整頓と清掃を習慣づける
従業員全員が注意を払うのはもちろんのこと、事故が起こりやすい環境で作業をするのは非常に危険なので、常に整理整頓と清掃を心がけることが大切です。足元に不要なものがあればすぐに取り除き、高いところに無造作に置かれているものを安全な場所へ移動してください。また、可燃性のものを放置していると火災や爆発のきっかけになる恐れがあります。作業をしているとどうしても散らかってしまうため、定期的に整理整頓と清掃を習慣づけましょう。たとえば、使った後はもとの場所に戻す・就業時間と休憩時間の前には必ず片付けをするなどのルールを決めることも大切なポイントです。
2-4.定期的にストレス診断を行う
前述したように、従業員の精神的なストレスが事故につながることもあります。そのため、定期的に従業員のストレス診断を行うことも大切な防止策の1つです。気づいたらストレスをためこんでしまい、作業効率が落ちてしまうことがよくあります。ストレスがたまったときにはすぐに上司や責任者に相談できる環境を作ることも大切です。最近では、心理カウンセラーを設置する企業や会社・工場も増えてきました。さらに、精神的なストレスはもちろん、過重労働になっていないか労働環境を見直すことも重要です。
2-5.経営トップや責任者が安全・保安に対する強い姿勢を見せる
工場の事故を徹底しているところほど、経営トップや責任者がすすんで安全・保安に対する取り組みを行っています。たとえば、三井化学グループでは、以下のような取り組みを行っているのでぜひ参考にしてください。
- 全国安全週間に関連して社長メッセージをグループ全体に発信している
- 新年挨拶会の期首講話で本社社員に安全最優先の直接訓示
- 安全の日に関連して社内報で安全最優先を発信している
- 工場訪問時に安全に関して直接訓示
工場のトップに君臨している人物がすすんで取り組むことで社員も意識が高まります。特に、ルールを統一したり、マニュアルを簡潔化したりするためには、トップの意向が大きく影響することになるでしょう。実際に、現場で働いている人と責任者の意思疎通ができていなければ、ミスが起こりにくい環境を作ることはできません。
3.工場で事故が発生したときの対応
では、工場で事故が発生したとき、どのような対応をすればいいのでしょうか。
3-1.まずは落ち着くことが大事
工場で事故が発生したとき、どのような場面でも慌てたりパニックになったりするものです。しかし、パニックになってしまうと適切かつ迅速な対応ができなくなるので、まずは落ち着いてください。また、パニックになって対応を間違えてしまうと、二次災害を引き起こすきっかけになってしまいます。過去の事故の中には、消防への連絡が遅くなったせいで人命に悪影響を及ぼしてしまったという例もありました。パニックになりそうなときは、1度深呼吸をして落ち着くところから始めましょう。
3-2.事故が起きたら最初にすべきこと
工場で思いもよらない事故が起きた際は、すべきことがたくさんあります。最初にすべきことは以下のとおりです。
- 第一発見者が現場責任者に連絡する
- 消防および警察や行政など関係各所に連絡する
- 怪我(けが)人や人員数の確認をする
- 機械の緊急停止後、状況・安全を確認しながら初期消火をする
まずは、第一発見者が現場責任者にすぐ連絡をしなければなりません。そして、現場責任者の指示に従うことになります。急を要する場合は、現場責任者よりも消防および警察や行政など関係各所に連絡をするのが先になる可能性もあるでしょう。火災が広がりそうなときは、近くにある消火器などを使って火を消すケースもあります。
3-3.地域住民への対応も忘れずに
事故発生後に爆発・火災・有毒ガスなどが考えられるときは、地域住民への対応も忘れずに行わなければなりません。場合によっては、地域住民に避難を要請する義務が生まれる可能性があります。きちんと避難を誘導しなければ、地域住民の命が危険にさらされてしまうからです。工場で発生した火災や有毒ガスが原因で地域住民に死傷者が出てしまえば、大ごとになってしまいます。工場が再稼働できない状態になる可能性もあるため、地域住民への対応もしっかりとマニュアル化しておかなければなりません。
3-4.ケガをしたときは労災指定の病院で治療を受ける
工場で起きた事故でケガをしたときは、労災指定の病院で治療を受けることになります。ほとんどの場合は、労災に認定されることになるので治療費は労災保険でまかなわれるでしょう。治療費は自分で負担しなければならないという事態にはなりません。また、労災保険でまかなう際は、病院が労働基準監督署に請求することになります。ただし、労災指定されていない病院で治療を受けた場合は、いったん本人が全額を支払わなければなりません。労災に認定されると後日現金で還付されますが、その点は気をつけてください。
4.工場の事故に関してよくある質問
工場の事故に関する質問を5つピックアップしてみました。
Q.衛生管理者の役割とは?
A.職場の安全衛生業務従事者として、職業性疾病の防止や衛生的で快適な職場環境を作る役割を担っています。いわゆる、衛生管理の専門家です。一定数の従業員が働く事業所では、衛生管理者を選任する義務があります。事業所の労働者が多ければ多いほど、複数名選任しなければなりません。また、衛生管理者は労働者の健康と命を守る大切な役割・業務を担っているといえるでしょう。
Q.実際にどのような事故が起きているのか?
A.さまざまな事故が起きていますが、よく起きている事故は以下のとおりです。
- 高所に置いてある工具を取ったり、急いで階段を下りたりする際に転倒した
- 重い荷物を持って移動しているときに転び、下敷きになった
- 地震などの揺れで高所から落ちてきたもので頭を打った
- 機材から弾かれた材料が飛んできてケガをした
- 積んでいたダンボールのセットが崩壊してケガをした
よく工場で起きているのは、転倒・落下による事故です。また、重大な事故としては、機材などに挟まれたり巻き込まれたりする事例もあります。
Q.5Sとは?
A.整理・整頓・清掃・清潔・しつけの頭文字をとったものを5Sといいます。5Sを制するものは仕事を制するといわれているほどとても重要なことで、しっかり行うことでミスが起こりにくい環境が作れるようになるでしょう。それぞれの意味は以下のとおりです。
- 整理:必要でないものをきちんと分けて整理すること
- 整頓:必要なものは決められた場所に置いて整頓すること
- 清掃:きちんと掃除をしてきれいな状態を保つこと
- 清潔:整理・整頓・清掃をしたらその状態を維持すること
- しつけ:決められたルールや手順をきちんと守って行うこと
Q.KYTはリスク回避に有効か?
A.有効です。危険予知を行う訓練のことをKYTといいます。代表的な訓練の方法としては、作業の場面が描かれたイラストを使って、どのようなリスクが潜んでいるのかを考える方法です。また、実際に目の前で作業を観察して行うこともあります。KYTで大切なのは、リスクに対してどのように対処を行えばいいのか検討することです。
Q.工場でケガをしないための基本は?
A.さまざまな危険が潜んでいるからこそ、対策のためのルールを統一し従業員に教育することです。ルールを統一していても、従業員の間でしっかりと理解しておかなければ意味がありません。ルールどおりに作業を行わない人もいるため、きちんと教育を施すことが大切な基本となります。
まとめ
工場で事故が起きる大きな原因はヒューマンエラーです。ヒューマンエラーは、見落とし・思い込み・やり忘れの3つが特に多いといわれています。日ごろからきちんと意識を高め注意しておけば、ヒューマンエラーを未然に防ぐことができるでしょう。また、いつどんなときにどういう事故が起きるのか想定することで工場の事故防止策を立てることができます。まずは、どんな事故が起きるのか、原因などをきちんと把握することが大切です。人がミスをしない環境を作ったり、ルールをきちんと統一したりすることで、大きな事故を未然に防ぎ、安全・安心な職場環境を整えることができるでしょう。