労働衛生管理の大切さとは? 衛生管理者の職務内容と共に解説します。

労働衛生とは、労働者が健康に働き続けられるように作業環境や労働条件を整えることです。一定数以上の従業員が所属している職場には、労働衛生を管理するために、衛生管理者や安全管理者・産業医などの選任が義務づけられています。「工場など危険が伴う作業ならともかく、オフィスワークに労働衛生管理が必要なのか?」と思う方もいるかもしれません。しかし、どのような職場でも働き方や職場環境によっては、従業員の健康を損ねる恐れがあります。

そこで、今回は労働衛生やその管理の仕方についてご紹介しましょう。

  1. 労働衛生管理の基礎知識
  2. 労働衛生管理の内容とは?
  3. 衛生管理者の仕事や資格取得方法
  4. 労働衛生管理に関するよくある質問

この記事を読めば、労働衛生管理の大切さも分かりますよ。衛生管理者の資格取得を目指している方も、ぜひ読んでみてくださいね。

1.労働衛生管理の基礎知識

はじめに、労働衛生管理の重要性や労働衛生の3管理についてご紹介します。なぜ、労働衛生管理が必要なのでしょうか?

1-1.労働衛生管理とは?

労働衛生管理とは、前述したように労働者が健康に働き続けられるように職場環境や労働条件を整えることです。すべての労働者は、安全で衛生的に働く権利があり、労働安全衛生法などによって労働者の就業条件や健康保持のために行うべきことなどが定められています。
経営者には、労働者の健康保持のために職場環境や労働条件を整える責務があり、健康診断や専業医・衛生管理者の選任なども義務づけられているのです。違反すると罰金や懲役刑が科せられます。

1-2.労働衛生管理の重要性

労働衛生管理が正しく行われていないと、労働災害の原因になります。昭和50年代頃まで、日本では労働衛生管理をおろそかにしている職場もたくさんありました。その結果、労働災害が多発し、現在でも責任の所在をめぐって裁判で争われているものもあります。

現在では、技術の進歩によって危険な作業が原因で起こる労働災害は減少しました。その反面、長時間労働やパワハラなどの過重労働が原因の労働災害は増え続けています。近年では、大手広告代理店で起こった長時間労働やパワハラが原因の労働災害は、大きな話題になりました。

労働衛生管理をおろそかにすれば、従業員の健康だけでなく会社の評判も大きく損ねることでしょう。場合によっては会社の将来にも影響があります。

1-3.職場で労働衛生管理を行う人とは?

職場では、衛生管理者・安全管理者・産業医などが主体となって衛生管理を行っています。衛生管理者や産業医は、従業員が50名以上所属している会社では、職種に関わらず選任が必要です。安全管理者は製造業や鉱業などの職種で、従業員が50名以上所属している職場では選任が必要になります。
ちなみに、従業員の雇用形態は問われません。パートやアルバイトが49人の職場に正社員が1人でも選任が必要です。衛生管理者や安全管理者は、労働者に安全教育や衛生教育を行うのと同時に、安全委員会・衛生委員会(安全衛生委員会)を作り、現場の声を経営者に伝える役目も担います。
従業員が49人以下の職場は、安全衛生推進者が同じ役割を担うのです。

2.労働衛生管理の内容とは?

この項では、労働衛生管理として行う仕事内容などをご紹介します。どのような仕事を行うのでしょうか?

2-1.労働衛生3管理とは?

労働衛生管理は、作業環境管理・作業管理・健康管理という3つのカテゴリーに分けて行われます。これが、労働衛生3管理です。作業環境管理とは、職場の環境が原因で従業員が健康を損ねないように、職場環境を整える仕事になります。例えば、有害物質を取り扱っている職場では、定期的に空気や水を測定し、有害物質が漏れていないか確認しなければなりません。
作業管理とは、従業員が健康を損ねないように働き方を管理することです。長時間労働の防止も作業管理の一環になります。
健康管理とは、従業員の健康状態を把握しておくことです。会社で行われる健康診断の他、2016年からはストレスチェックも行われるようになりました。現在、ストレスチェックは従業員が50人以上所属している職場で実施が義務付けられています。

2-2.それぞれの役割分担

安全管理者は、作業環境管理や作業管理を主に行います。職種によっては、公害防止管理者が職場環境を管理し、空気や水を測定することもあるでしょう。安全管理者の選任義務がない職場では、衛生管理者が職場巡視をする際、作業環境のチェックを行うこともあります。

健康管理は、衛生管理者の役目です。衛生管理者は健康診断の日程を調整し、診断結果を管理するのも仕事になります。複数の従業員に同じ疾患が見られる場合は、職場環境を改善するように経営者とかけあうこともあるでしょう。
2016年から実施されるようになったメンタルヘルスチェックは、医師や看護師・保健師など特定の資格を持った人でないと行えません。保健師の資格を持っている衛生管理者の場合は、職場のメンタルヘルスチェックを行うことができます。メンタルヘルスチェックを行うことのできる資格を持たない場合でも、メンタルヘルスチェックの結果に基づいて従業員の相談に乗ったりすることは可能です。

2-3.労働災害が発生したら?

労働災害が発生したら、ただちに労働基準監督署への届け出が必要です。その後、原因の追究や再発防止に取り組まなければなりません。場合によっては、外部から労働安全コンサルタントや労働衛生コンサルタントを招き、指導を受けます。

3.衛生管理者の仕事や資格取得方法

この項では、衛生管理者の仕事や資格取得方法をご紹介します。資格取得を目指している方は、参考にしてください。

3-1.衛生管理者とは?

衛生管理者とは、今まで解説してきたように職場の衛生管理を行うことのできる国家資格です。1種と2種があり、1種を取得すればすべての職場の衛生管理を行うことができます。2種を取得すると、小売業など危険が少ない職場の衛生管理が可能です。

衛生管理者の仕事といえば、職場巡視や健康診断の実施、結果の管理などがあります。近年では、産業医と従業員のかけ橋になったりメンタルヘルスに関する相談に乗ったりすることも、重要な仕事になっている職場もあるでしょう。

3-2.衛生管理者の心構え

衛生管理者の仕事は、決して目立つものではありません。また、衛生管理者の仕事だけを行っていればよいという職場は少なく、大抵は他の業務とかけもちで仕事を行います。近年では、第2種衛生管理者が衛生管理を行える職場は、派遣社員が衛生管理者に選任されることもあるのです。仕事量は多く、派遣社員の場合はどうしても正社員に対しては遠慮がちになることもあるでしょう。しかし、衛生管理者の仕事がきちんと行われていれば、防げる労働災害は多いのです。安全管理者や職場の責任者などとも連携し、職務を全うできるように心がけましょう。
必要ならば、心理相談員などの資格を取得するのもおすすめです。

3-3.衛生管理者の資格取得方法

衛生管理者の資格を取得するには、理学部など指定の学部を卒業した後で厚生労働省が定める研修を修了するか、試験を受けて合格する必要があります。試験は、安全衛生技術試験協会が主催しており、全国の安全衛生技術センターでほぼ毎月実施されているのです。申し込みもホームページで行うことができます。

衛生管理者の試験を受験するためには、一定の実務経験が必要です。実務経験の期間は学歴によって変わるため、必ず協会のホームページを確認しましょう。

衛生管理者の試験内容などについては、こちらの記事をお読みください。

4.労働衛生管理に関するよくある質問

Q.衛生管理者の選任義務を怠ると罰則などはありますか?
A.50万円以下の罰金が科せられますので、必ず選任しましょう。

Q.衛生管理者しか職場で選任されていない場合は、安全教育なども行わなければなりませんか?
A.安全管理者の選任が義務づけられていない職場は、比較的危険が少なく安全な職場が多いものです。ですから、特別に時間を取って安全教育を行わなければならない可能性は低いでしょう。

Q.衛生管理者は男女どちらの方が適任ですか?
A.従業員の男女比で考えるのも一つの方法でしょう。多い方の性別に合わせてください。

Q.衛生管理者を複数選任しても構わないのでしょうか?
A.問題ありません。

Q.衛生管理の仕事を無資格者に分担してもらっても大丈夫ですか?
A.仕事を手伝ってもらうのは構いません。ただし、職場巡視や健康診断結果の管理などは、必ず有資格者が行ってください。

5.おわりに

いかがでしたか? 今回は労働衛生管理の方法を中心に解説しました。衛生管理は労働災害を防ぐためにとても重要です。仕事が忙しいとおろそかになりがちですが、週1回の職場巡視や月1回の安全衛生委員会の実施は守りましょう。こまめに気を配っていれば、小さな異変も見逃さずに済みますよ。