職場の喫煙対策はどのように行えばいいの? 対策を行う役職とは?

自由に喫煙できるスペースは、年々減り続けています。駅や病院・商業施設などの公共の場所は、禁煙が当たり前になりました。職場でも、喫煙対策を行っているところが多いことでしょう。喫煙の害はいろいろありますが、中でも受動喫煙の害や火災の危険は、喫煙者・非喫煙者共によく周知しておかなければなりません。

そこで、今回は職場の喫煙対策について解説しましょう。

  1. 職場の喫煙対策について
  2. 労働衛生と喫煙対策
  3. 労働衛生に関する資格について
  4. 職場の喫煙対策に関するよくある質問

この記事を読めば、喫煙対策の種類だけでなく喫煙対策を行う職務についてもよく分かりますよ。職場で衛生管理の仕事をしている方も、ぜひ読んでみてくださいね。

1.職場の喫煙対策について

はじめに、職場の喫煙対策方法や課題についてご紹介します。公共の場所での喫煙対策との違いはなんでしょうか?

1-1.職場の喫煙問題とは?

30年ほど前まで、職場ではごく一般的に喫煙が行われていました。現在でも職場の一部に喫煙スペースを設け、形ばかりの分煙を行っているところも多いことでしょう。喫煙の害というと臭いや煙を挙げる方が多いのですが、タバコの煙にはたくさんの有毒物質が含まれています。分煙を行ってもタバコの煙が部屋中に充満していれば、非喫煙者も喫煙をしているのと同じことです。これを受動喫煙といいます。
また、タバコは小さいとはいえ裸火(はだかび、むき出しの火のこと)を使いますので、火災の危険が高まることでしょう。これも、喫煙問題の一つです。

1-2.国の喫煙対策について

2003年に制定された健康増進法では、「不特定多数が利用する施設での受動喫煙の防止」が義務づけられています。そのため、2003年以降、公共施設や商業施設などでは「喫煙室」を設け、タバコの煙をフロア全体に流さない工夫をするようになりました。
また、自治体によっては路上喫煙も防⽌条例が制定されています。

では、職場は不特定多数が利用する場所か? というと意見が分かれるところです。小売業のように来客が絶えず訪れるような職場ならば、全面禁煙でも問題ありません。しかし、職場の中には喫煙者の方が多いというところもあるでしょう。このようなところは、全面禁煙や完全分煙が難しいのが現実です。

1-3.職場の喫煙の課題について

労働者は、誰でも安全かつ衛生的に仕事を行う権利があります。喫煙者にとって、タバコはお茶やコーヒーと同じようなリフレッシュアイテムです。しかし、非喫煙者にとっては健康を害するものでしかありません。喫煙者と非喫煙者がお互いに気持ちよく仕事をするには、分煙の徹底が大切です。

外に喫煙室を作れる場合は、外部に喫煙所を作るのが一番コストもかからないでしょう。屋上などが喫煙場所になっている職場もあります。しかし、オフィスビルに入っている会社などは、屋外に出るまでに10分以上かかるところも珍しくありません。喫煙室を作ることができればよいのですが、そんなスペースもないというところもあるでしょう。

厚生労働省は、シャワーカーテンなどビニール製のカーテンで仕切りを作り、換気扇や空気清浄機を備えて喫煙スペースを作ることを推奨していますが、完全に煙を防ぐことはできず、これからの課題となっています。

2.労働衛生と喫煙対策

この項では、労働衛生と喫煙対策の関係や、職場の喫煙対策を行う職務などを解説します。どのような役職が喫煙対策を行うのでしょうか?

2-1.労働衛生って何?

労働衛生とは、労働者が健康的に働けるように職場環境を整えることです。会社が年に1度行う健康診断も労働衛生の一環になります。厚生労働省では、労働安全と併せて、作業環境管理・作業管理・衛生管理の3つを職場の3管理と名付け、重要視しているのです。

2-2.労働安全衛生法とは?

職場における労働衛生や労働安全は、労働安全衛生法に基づいて整備されます。労働安全衛生に関する決まりはもともと労働基準法の一部でしたが、昭和47年に労働安全衛生法として独立しました。労働安全衛生法では、経営者が労働者が安全かつ健康的に働けるように行うことや、禁止事項・さらに労働安全や労働衛生を整備するため、選任しなければならない有資格者などが定められています。経営者だけでなく従業員もぜひ一度目を通しておきましょう。

2-3.労働衛生と喫煙対策

前述したように、喫煙者はタバコがリフレッシュアイテムとなっているため、タバコが吸えないと生産性が落ちたりストレスが溜まったりすることもあるでしょう。その一方で、非喫煙者にとってタバコは健康を害するものでしかありません。労働衛生は、衛生管理者・安全衛生推進者などが行いますが、両方の意見を聞いて双方が可能な限り納得できるようなルールを作ることが大切です。

最近は、受動喫煙の被害だけでなく、タバコ休憩による生産性の低下も問題視されるようになりました。タバコを1度吸いに行くと、5分~10分かかります。1日に何本もタバコを吸う人は、それだけの時間仕事をさぼっているという考え方です。そのため、職場の中には、就業時間中は全面禁煙になったというところもあります。これもひとつの方法ですが、喫煙者が多い職場で一方的に全面禁煙を決定すれば、反発を招くことでしょう。安全衛生委員会などで話し合い、喫煙可能時間の短縮などの妥協点を見つけることも必要です。

職場によっては衛生教育の一環として、従業員に喫煙の害を教えて禁煙を推奨するところもあります。オフィスワークなど危険の少ない職場で、喫煙者が一定数いる場合はそのようにして喫煙者を減らしていくのも一つの方法です。

3.労働衛生に関する資格について

この項では、衛生管理者や労働衛生コンサルタントについて解説します。資格取得を考えている方は、ぜひ参考にしてくださいね。

3-1.衛生管理者とは

衛生管理者とは、前述したように職場の衛生管理を行うことのできる国家資格です。第一種と第二種があり、第一種はすべての職場で衛生管理の仕事を行うことができます。第二種は、小売業など労働災害の危険が比較的少ない職場で衛生管理を行うことが可能です。
衛生管理者は、職種に関わらず50名以上の従業員が所属している職場で選任が必要になります。
衛生管理者の資格を取得するための詳しい方法は、こちらの記事に記載されているので、ぜひ読んでみてください。

3-2.労働衛生コンサルタントとは?

労働衛生コンサルタントは、衛生管理者と同じように職場の衛生環境を整える仕事を行うことができる資格です。衛生管理者が選任された事業所でしか衛生管理業務を行えないのに対し、労働衛生コンサルタントは求められれば他の職場でも衛生管理の指導やチェック、教育などを行うことができます。衛生管理者の上位資格といってもよいでしょう。長年衛生管理者として働いてきた方が、独立をしたり今までの知識を生かして他の場所で働いたりしたいと考えている場合、取得しておくと何かと役に立ちます。

3-3.労働衛生コンサルタントの資格を取得する方法

労働衛生コンサルタントは、衛生管理のスペシャリストであり、資格を取得するには試験に合格する必要があります。最低でも7年間は衛生管理者としての実務経験がなければ資格試験の受験資格はありません。労働衛生コンサルタントの資格試験は、衛生管理者と同じく安全衛生技術試験協会が主催しています。詳しい受験資格などを知りたい方は、必ずホームページを確認しましょう。なお、類似資格に労働安全コンサルタントがありますので、混同しないように気をつけてください。受験の申し込みは、願書を購入し、必要事項を記入して協会へ送付します。添付書類が多いので電子申請は行えません。注意してください。

3-4.労働衛生コンサルタントの受験勉強方法

労働衛生コンサルタントの試験には、記述試験と口述試験があります。記述試験は労働衛生一般・法令・労働衛生工学・健康管理からなり、択一式と記述式で行われるのです。口述試験は東京と大阪でのみ行われ、記述試験に合格した方だけが受験できます。

労働衛生コンサルタントは労働安全コンサルタントに比べると受験者数が少ないため、参考書も種類があまりありません。日本労働安全衛生コンサルタント会が参考書や問題集を発行していますので、そのようなものを利用して勉強しましょう。

4.職場の喫煙対策に関するよくある質問

Q.職場の喫煙対策ですが、必ず守らなければならないことなどはありますか?
A.受動喫煙を防止するために、タバコの煙が喫煙スペースから出ないようにしましょう。

Q.喫煙者ばかりの職場では、喫煙対策は必要ありませんか?
A.顧客が来訪する職場では、顧客が非喫煙者である可能性があります。その方のために禁煙スペースを確保しましょう。

Q.タバコの自販機を撤去してほしいという意見があります。従ったほうがよいのでしょうか?
A.誰か一人の意見であった場合は、安全衛生委員会で審議した方がよいですね。

Q 経営者が喫煙者のため、喫煙対策がすすみません。
A 経営者が喫煙者でも、喫煙対策は労働者の健康を守るために必要です。経営者の意見ばかりを尊重してはいけません。

Q 喫煙対策に予算が少なく、苦労しています。
A お金をかけて喫煙スペースを作らなくも、シャワーカーテンなどを利用し、安価で喫煙スペースを作ることが可能です。

5.おわりに

いかがでしたか。今回は職場の喫煙対策についていろいろとご紹介しました。喫煙対策はやみくもに禁煙を推奨すればよいというわけでもありません。禁煙も大切ですが、タバコが大切な嗜好品である方の意見も尊重しましょう。空気清浄機や換気扇の周りを、煙を通さないカーテンで覆うだけでも簡易的な喫煙室ができます。また、定期的に禁煙車と喫煙者、双方の意見を聞いて喫煙対策を進めていくことが大切です。オフィスビルに複数の会社が入っている場合は、共同出資で喫煙ルームを作るという方法もあります。