快適職場づくりの内容とは? 職場環境を改善するポイントは?

快適職場づくりとは、労働安全衛生法第71条の2や3で経営者の努力義務に定められているものです。仕事による疲労やストレスを感じにくい職場が理想とされ、快適職場指針も定められています。この指針に沿って、職場の環境改善を目指している衛生管理者の方もいることでしょう。

そこで、今回は快適職場づくりを行うメリットや、職場環境の改善をスムーズに行う方法を紹介します。

  1. 快適職場づくりっていったい何?
  2. 快適職場づくりをスムーズに行うコツ
  3. 衛生管理者の役割や資格を取得する方法
  4. 快適職場づくりに対するよくある質問

この記事を読めば職場の環境改善を行う際、気をつけることなども分かることでしょう。衛生管理者の資格取得を目指す方も、ぜひ読んでみてくださいね。

1.快適職場づくりっていったい何?

はじめに、快適職場つくりの意義やメリットなどを紹介します。職場の安全衛生と、どのような関係があるのでしょうか?

1-1.快適職場の定義

快適職場とは、前述したように従業員が仕事によるストレスや危険を感じることなく働ける職場のことです。「仕事をすること自体がストレス」という考えの方もいると思いますが、それでも気持ちよく働ける職場の方が、不快感を覚えやすい職場よりもストレスを感じにくいことは確かでしょう。

厚生労働省では、職場のあんぜんサイトの中で、「職場が快適でないと、従業員が不幸であり生産性も落ちる」と説明しています。快適な職場を作る努力義務は経営者にあり、実際の職務は衛生管理者や安全管理者が行うことが一般的です。

1-2.快適職場指針とは

快適職場指針とは、快適な職場形成のための指針として1992年に厚生労働大臣によって公表されたものです。

  • 作業環境の管理
  • 作業方法の改善 
  • 労働者の心身の疲労の回復を図るための施設や設備の設置、整備
  • その他の施設・設備の維持管理

からなり、この4つの視点から快適職場を実現するための措置が必要とされています。

なお、これはあくまでも指針であり、この通りに快適な職場づくりを行わなかったとしても罰則等はありません。

1-3.快適職場づくりを行うメリット

従業員が、ストレスや身の危険を感じることなく仕事を行うことができれば、効率もあがります。また、ケガや仕事が原因で病気を発症することも少なくなるので、労働災害の発生件数も減るでしょう。
誰にとっても快適な職場を作るのは大変難しいですが、より多くの従業員にとって働きやすい職場づくりを行うことはできます。また、経営者が快適職場づくりを目指している姿を見せるだけでも、従業員のモチベーションアップになるでしょう。

2.快適職場づくりをスムーズに行うコツ

この項では、快適職場づくりで行う内容や、職場の環境改善をスムーズに行うコツなどを紹介します。どうすれば、効率よく行えるのしょうか?

2-1.快適職場づくりの内容とは?

快適な職場というのは職種によってことなりますが、快適職場指針に沿って、

  • ケガの危険がある仕事の道具にカバーなどをつける
  • ケガの予防対策を行う
  • 整理整頓を実行する
  • 定期的に仕事の方法を見直す
  • 休憩室を整備する
  • 分煙を徹底する
  • 職場の人間関係を相談できる窓口を作る
  • 残業時間について見直しをする

などを行うのが一般的です。ひと昔前までは、保養所などを持っている会社も多かったのですが、現在はそのような福利厚生施設を持っている会社はほんの一部でしょう。そのため、指針に入っている「労働者の心身の疲労の回復を図るための施設や設備の設置、整備」は、毎日使う休憩室などを整備するとよいですね。

2-2.従業員の声を反映させる

どうすれば心地よく仕事ができるかは、従業員が一番よく分かっています。ですから、快適職場づくりは経営者が主導で行いますが、アンケートなどを取るなどして、従業員の意見を反映させましょう。経営者の考えと従業員の望みがずれてしまえば、せっかくの快適職場づくりもうまくいきません。衛生管理者や安全管理者が選任されている職場ならば、安全衛生委員会の議題にするのもよいでしょう。

2-3.少数者の意見も反映させる

多数決ですべて決めてしまうと、少数者の不満が溜まっていきます。たとえば、タバコは健康を害する恐れがある一方で、喫煙者にとってはリラックスアイテムです。職場に喫煙者と非喫煙者が両方いる場合は、喫煙できるスペースも確保しておくとよいでしょう。

3.衛生管理者の役割や資格を取得する方法

この項では、快適職場づくりの役割を担うことの多い衛生管理者の役割や、資格を取得する方法を紹介します。なぜ、衛生管理者が快適職場づくりを行うことが多いのでしょうか?

3-1.衛生管理者と快適職場づくり

衛生管理者とは、従業員が健康かつ衛生的に仕事が行えるように職場環境を整える仕事ができる国家資格です。従業員が50名以上所属している職場には、職種に関係なく選任が義務づけられています。

ここまで記事を読まれてきた方にはお分かりだと思いますが、衛生管理者の職務と快適職場づくりのための仕事は重なる部分が多いため、衛生管理者が職務を適正に行っていれば、自然と快適な職場になっていくことでしょう。安全管理者が選任されている職場では、安全管理者と協力して快適職場づくりを行うこともあります。

3-2.衛生管理者の職務内容について

衛生管理者の主な職務に、週に1度の職場巡視や健康診断の実施や、結果管理があります。それを行うだけでも、職場が抱えている問題や改善点に気づくことができるでしょう。また、従業員の相談に乗ることで、人間関係や働き方の改善点も見えてきます。
衛生管理者がしっかりと仕事を行っている職場は、改めて快適職場づくりをしなくても、従業員が衛生管理者を通して経営者に職場環境の改善点を伝えるだけで、職場が快適になっていくこともあるでしょう。

なお、衛生管理者が選任されていれば、衛生管理の仕事を複数人で行うことも可能です。

3-3.衛生管理者の資格を取得する方法

衛生管理者の資格を取得するには、一定の実務経験を積んだ後で、安全衛生技術試験協会が主催する資格試験を受験し、合格する方法と、大学で理学部など特定の学科を卒業した後で、厚生労働省が定める講習を受講して修了する方法があります。割合としては、試験に挑戦する人の方が多いでしょう。

衛生管理者は1種と2種があり、1種はすべての職場で衛生管理の仕事を行うことができます。2種は、店舗で商品を販売する小売業や、事務仕事が中心の職場など、危険な仕事が少ない職場で衛生管理が行える資格です。

衛生管理者の試験内容などは、こちらの記事に詳しいのでぜひ読んでみてください。

4.快適職場づくりに対するよくある質問

Q.衛生管理者が選任されていない職場では、誰が中心となって快適職場づくりを行えばよいでしょうか?
A.衛生管理や安全管理の仕事の実務経験者が安全衛生推進者として選任されます。推進者が中心となって行うことが一般的です。

Q.従業員が今の職場環境で満足している場合は、何もしなくてもよいのでしょうか?
A.現状維持が続けられるように努力は必要です。改善点をすぐに報告できるようなシステムを作っておくのもよいでしょう。

Q.衛生管理者は、学歴に関係なく受験可能ですか?
A.実務経験の条件さえ満たしていれば問題ありません。

Q.衛生管理の仕事をしながら、快適職場づくりの仕事をすることが困難な場合は、どうしたらよいでしょうか?
A.衛生管理者の監督下で、衛生管理の仕事を行う人を増やしてもらうのがおすすめです。安全管理者とも協力しましょう。

Q.従業員からの意見を経営者が聞き入れない場合は、どうしたらよいですか?
A.経営者に受け入れられない理由がある場合は、説明してもらいましょう。頭ごなしに否定される場合は、労働基準監督署に相談してみるのも一つの方法です。

5.おわりに

いかがでしたか? 今回は快適職場づくりの内容や推進の方法を紹介しました。ひと昔前までは、「身を粉にして働く」ということが美徳でしたが、現在ではそのような働き方を社員に強いる企業は、ブラック企業というレッテルを貼られ、信用もなくなるでしょう。従業員がストレスなく働ける仕事場を作れば、作業効率もあがってきます。
また、衛生管理者の資格を取得すれば転職にも有利です。衛生管理者の補助として衛生管理の仕事を行い、受験資格を得られたら、ぜひ取得しておきましょう。