事務所の環境測定とはどのようなもの? 測定義務はあるの?

事務所とは、事業所において多数の労働者が仕事を行う場所を指します。そのため、労働者が安全かつ衛生的に仕事を行うことができるよう、 労働安全衛生法に基づく 事務所衛生基準規則が定められており、事業者はその規則を遵守しなければなりません。しかし、遵守するために必要なことが、よく分からないという人も多いでしょう。

そこで、今回は 事務所衛生基準規則を守るために必要な、環境測定の義務について解説します。

  1. 事務所の環境測定とは?
  2. 建物の種類による環境測定基準
  3. 環境測定を行う人とは?
  4. 職場環境を整える職務を行える資格について
  5. 事務所の環境測定に対するよくある質問

この記事を読めば、事務所の環境を整える大切さもよく分かるでしょう。衛生管理者の資格取得を目指している方も、ぜひ読んでみてくださいね。

1.事務所の環境測定とは?

はじめに事務所の環境測定とは、どのようなことをするのかということを解説します。なぜ、事務所の環境測定が重要視されるのでしょうか?

1-1.環境測定の必要性

前述のとおり、事務所は労働安全衛生法に基づく 事務所衛生基準規則が定められています。経営者は、労働者が安全かつ衛生的に仕事ができるように事務所環境を整える義務があるのです。事務所衛生基準規則には、

  • 事務所の空気環境
  • 採光・照明
  • 騒音
  • 空調(暖房・冷房)
  • 給排水設備
  • 清掃および害虫などの駆除
  • 洗面所やトイレの設置
  • 休憩所の設置
  • 更衣室の設置

の基準が定められており、それらを満たしていないと安全衛生法違反となります。つまり、屋根と壁がついていて仕事ができれば、どこでも事務所にしてよいというわけではありません。この規則の中には、空気中の二酸化炭素の量などの基準が決められていますので、定期的に環境測定が必要です。
なお、この環境測定は人体によって有害な物質を扱っている工場などで行う作業環境測定とは異なります。事務所で安全かつ快適に仕事ができるように環境を整えるために行う測定ですので、職種に関係なく行う必要があるのです。

1-2.環境測定の種類や管轄

環境測定は、空気管理や照明の状態など定期的に測定するものがある一方、事務所の建築・大修繕・大模様替時におけるホルムアルデヒドの臨時測定など、特定の時期に行えばよい測定もあります。これらの環境測定は、「産業保健」という分野に分類されているのです。労働者健康安全機構という団体では、各地の産業保健センターなどを通じて環境測定のやり方や器具の貸し出しなどを行っています。

なお、環境測定の中で事務所の建築・大修繕・大模様替時におけるホルムアルデヒドの測定は、新築や改築時を行ってから6か月以内に行うこと、と義務化されているので忘れないように行いましょう。

また、環境測定ではありませんが事務所の大掃除は6か月に1度行うように定められています。

1-3.環境測定の重要性

現在のところ、空気環境や照明の明るさを測定したものをどこかに提出しなければならない、ということはありません。ただし、全く測定していない場合は、労働災害が起こった際にその点を厳しく追及されたり、労働者から告発があった場合は、厳しく罰せられたりするでしょう。
ですから、定期的な測定をしておき、その結果を5年間ほどは保管しておくといいですね。

2.建物の種類による環境測定基準

前項で、事務所の環境測定は 事務所衛生基準規則に沿って行われると紹介しました。この他にもう1つ環境測定の基準となる法律があります。それが、ビル管理衛生法(通称、ビル管法)です。こちらの法律は建物の床面積が3,000m2(学校の場合は8,000m2)以上ある建物に適応されます。大阪や東京などの都市部では、事務所を高層のオフィスビルに構えているところも多いでしょう。このように大きな建物の一部を事務所として借りている場合は、事務所衛生基準規則に加えてビル管理衛生法に沿って、環境測定を行わなければなりません。

3.環境測定を行う人とは?

環境測定を行うには、以下のような方法があります。

  • 会社が専門の測定業者を雇い、測定をしてもらう
  • 衛生管理者が産業保健センター等から検査器具を借りて行う
  • 安全衛生推進者が産業保健センター等から検査器具を借りて行う
  • 建築物環境衛生管理技術者が責任を持って業者等に依頼し、測定を行う

ビル管理衛生法の対象となる建物は、建築物環境衛生管理技術者の責任で環境測定を行うのが一般的です。そのほかの事務所では、従業員が50名以上所属している会社の場合は衛生管理者、50名未満の会社は安全衛生推進者など職場の衛生管理や安全管理を行う職務者が行うのが一般的でしょう。また、ホルムアルデヒドの検査などは専門の業者に依頼するのが一般的です。

4.職場環境を整える職務を行える資格について

この項では、職場環境を整えることができる資格について解説します。資格取得を目指す方は、ぜひ参考にしてください。

4-1.建築物環境衛生管理技術者

建築物環境衛生管理技術者は、不特定多数が利用するビルや商業施設、地下街などに設置されている電気設備・給排水設備・空調設備などの点検・整備を行う仕事に就く人を、統括できる資格です。床面積が3,000m2(学校の場合は8,000m2)以上ある建物に選任が義務づけられており、ビルメンを一生の仕事とする場合は、資格を取得しておいて損はありません。

4-2.衛生管理者

衛生管理者とは、従業員が健康かつ衛生的に仕事ができるよう、職場環境を整えることができる国家資格です。第一種と第二種があり、主な職務内容としては、健康診断の計画と実施、結果の管理・週に1度の職場巡視などがあります。前述したとおり、職場の環境測定も職務の一部ということもあるでしょう。

ちなみに、第一種はすべての職場の衛生管理を行うことができ、第二種は、オフィスでの事務など危険が少ない職務を行う事業所で衛生管理を行うことができます。事務所の場合は第二種でも衛生管理が可能です。

衛生管理者は職種に関係なく50名以上の従業員が所属している職場に選任が義務づけられているため、取得すれば給与アップや昇進・転職などにも役立つでしょう。

5.事務所の環境測定に対するよくある質問

Q.事務所の環境測定は行わなくても罰則はないのですか?
A.労働基準監督署などに告発があり、行われていない事実が発覚すれば労働安全衛生法に基づき罰則が与えられます。

Q.事務所の環境測定を行う義務は、誰にあるのですか?
A.事務所の経営者にあります。

Q.環境測定について相談したいのですが、どこに相談すればよいですか?
A.産業保健センターなどに相談してください。

Q.オフィスビルに入っていれば、ビル管法が適用されますか?
A.床面積が8,000m2ならば適用です。

Q.測定をする専門の資格は必要でしょうか?
A.いいえ。必要ありません。

おわりに

今回は、事務所の環境測定などについて解説しました。有害な物質を扱っている作業場所の環境測定に比べると軽視されがちですが、大切なものです。できれば半年に1度は検査しましょう。労働安全衛生法を順守しているということで、企業の評判も高まります。検査機器等は、産業保健センターなどでレンタルできるところもありますので、問い合わせてみると便利です。また、どうしても自分たちで行えないという場合は、業者などに依頼するのもよいでしょう。