フレックスタイム制のメリット・デメリットとはどんなもの?

1988年に導入されたフレックスタイム制は、「働く時間を自分で決められる制度」として大きな話題になりました。
しかし、導入から17年目の現在、思ったほどフレックスタイム制を取り入れている会社は増えていません。
それはいったいなぜでしょうか?
そこで、今回はフレックスタイム制のメリットとデメリットをご紹介します。
また、フレックスタイム制を取り入れるために行っておくべきことや、注意点などもご紹介しましょう。
興味がある方や従業員の健康管理を行っている衛生管理者の方は、ぜひこの記事を読んでみてくださいね。

目次

  1. フレックスタイム制とはどんな制度?
  2. フレックスタイム制のメリットデメリットとは?
  3. 失敗しないフレックスタイム制の導入方法とは?
  4. おわりに

1.フレックスタイム制とはどんな制度?

フレックスタイムとは、「1か月間の勤務時間を定め、従業員が自分の好きな時間に出社・退社できる制度」です。
日本では、ほとんどの会社で始業時間と終業時間が決められています。
また、どの会社もほぼ同じ時間に始業するでしょう。
社員の勤務時間が同じならば、管理する方は楽です。
しかし、受け持っている仕事によっては終業時間近くにならないと、仕事がほとんどないというケースもあるでしょう。
また、通勤ラッシュも同じ時間に仕事が始まる会社が多いからこそ起こるへい害です。
さらに、平日に用事ができた場合は、遅刻や早退をしなければなりません。
また、経営者側としても残業する従業員が多ければ、残業代がかさむというデメリットもあります。
フレックスタイム制を導入すれば、従業員は自分の働きやすい時間や仕事が集中する時間に合わせて出勤できるのです。
また、1か月の間「これだけの時間働きなさい」と定められた時間分働けばよいので、働く時間もある程度調整できるでしょう。

2.フレックスタイム制のメリットデメリットとは?

さて、一見するとメリット満載のフレックスタイム制ですが、デメリットもあります。
この項では、フレックスタイム制のメリットをもう少し詳しく説明するとともに、デメリットもご紹介しましょう。

2-1.フレックスタイム制のメリット

フレックスタイム制のメリットは、前述したもののほかに残業代の軽減があげられます。
たとえば、仕事のピークが16時45分~18時半にくる従業員が9時から出勤していれば、残業代が発生するのです。
しかし、フレックスタイム制にして12時ごろから出勤した場合は、残業代は発生しません。
従業員も、むだに暇な時間を会社で過ごさずに済みます。
また、従業員が精神的に余裕を持って仕事に取り組めるようにもなるのです。
通勤ラッシュに巻きこまれずに済むだけで、前向きな気持ちで仕事に取り組める方も多いでしょう。
さらに、平日にしかできない用事ができた場合も有休を使わずに済むのです。

2-2.フレックスタイム制のデメリットとは?

フレックスタイム制を導入すると、社員の管理が大変になります。
いくらフレックスタイム制とはいえ、22時を超えて仕事をしている場合は深夜勤務手当を払う必要があるのです。
ですから、出勤時間をある程度は決めておかないと、深夜勤務手当目当てに夕方から出勤してくる従業員ばかりになるかもしれません。
また、自己管理ができない従業員の場合は仕事に深刻な影響が出てくるでしょう。
さらに、取引先との時間調整が難しくなるのです。
自社がフレックス制を導入していても取引先が従来どおりならば、「今までどおりに出勤してくるのが一番楽」ということになることもあります。
また、小さな会社の場合は、従業員がバラバラに出勤してくると全員がそろうまで少人数ですべての業務を行わなければなりません。
電話や来客の対応に追われて自分の仕事が進まなかった、ということもあるでしょう。
ですから、中小企業はフレックス制を導入している会社が少ないのです。

3.失敗しないフレックスタイム制の導入方法とは?

では、フレックスタイム制を上手に導入するには、どういった工夫が必要なのでしょうか?
フレックスタイム制の導入事例とともにご紹介していきます。

3-1.従業員に理解を求め、試用期間を定める

フレックスタイム制は、会社全体で一斉に導入しなくてもかまいません。
まずは、一部署から始めてもよいのです。
実際の導入事例を見てみると、まずは一部署から、しかも期間を決めて行った会社は少なくありせん。
また、フレックスタイム制を導入するには、従業員との労使協定を結ぶ必要があります。
届け出などは不要ですが、従業員も経営者も納得できるようにフレックスタイム制に対する理解を求めてください。
フレックスタイム制は、単に好きなときに出勤して働く制度ではありません。
1週間や1か月単位で働かなければならない時間は決まっています。
ですから、初めは1週間の勤務表などを従業員に作成してもらうと勤務時間も把握しやすいでしょう。

3-2.コアタイムを設けるという方法もある

コアタイムとは、「従業員が全員出勤していなくてはならない時間」です。
取引先の会社がフレックスタイム制を導入していなければ、電話や来客の多い時間は決まっています。
その時間帯に従業員が少なければ、対応が大変になるでしょう。
ですから、「この時間は、必ず出勤しているように」と会社が決めておけば、出勤人数の偏りを防げます。
完全に出勤時間を従業員に決めさせるより、社員の管理も容易になるでしょう。
フレックスタイム制を導入している会社でも、コアタイムを設けているところは多いです。

3-3.シフト制とどちらがよいか、検討してみる

従業員の出勤時間をずらす働き方としては、「シフト制」という方法もあります。
病院の看護業務など、24時間人手が必要な職場では、昔から導入されてきました。
こちらも、忙しい時間が毎日決まっている会社では有効です。
従業員と相談してシフト制とフレックス制、どちらがよいか決めましょう。
従業員から意見を集めた結果、シフト制の方がよいという結論に達した会社もあります。

3-4.社員の気質(きしつ)を見極めて導入を決める

世の中には、「自由にしていいよ、と言われるとかえってとまどう」という方も、少なくありません。
特に、1日中一定の仕事があるという方は、「今まで通りの働き方でよい」という人もいるでしょう。
また、自己管理がどうしてもうまくできない、という方もいます。
ですから、自社の社員の気質(きしつ)を見極めたうえでフレックス制を導入するかどうか決めましょう。
衛生管理者が社内で選出されている場合は、従業員の意見をまとめてもらってもよいですね。
フレックスタイム制にした方が、従業員が健康的に働けるというならば、導入を考えてください。

4.おわりに

いかがでしたか?
今回は、フレックスタイム制のメリットやデメリットなどをご紹介しました。
まとめると

  • フレックスタイム制とは従業員が自分で出勤時間や終業時間を決められる制度である。
  • 定められら時間分働けばよいので、仕事をする時間もある程度調整できる。
  • 従業員が余裕を持って仕事ができる。
  • 自己管理ができない従業員だと、なまけてしまう場合がある。
  • 取引先との都合がつけにくくなり、調整が難しくなる。

ということです。
フレックスタイム制を導入すると、給与を計算する経理の負担も増すでしょう。
そのため、何時間働いたら残業代が発生するかということや、深夜勤務手当をつけ始める時間をしっかり決めておかなくてはなりません。
また、もし定められた時間に実際に勤務した時間が足りなかった場合の対処方法も決めておきましょう。