化学物質が原因で起こる中毒や健康障害とは?対処法はあるの?

私たちが普段使っている製品を製造するためには、さまざまな化学物質が使われます。
その中には、体に有害な物質も少なくありません。
そこで、今回は化学物質が原因で起こる中毒や健康障害についてご説明しましょう。
化学物質による健康障害は、即効性のものばかりではありません。
物質によっては障害が出るまでに時間がかかるものもあるのです。
また、化学物質のリスクアセスメントもご紹介しましょう。
衛生管理者の方や化学物質を扱う職場で働いている方は、ぜひこの記事を読んで対策の参考にしてください。

  1. 化学物質による中毒とは?
  2. 化学物質による健康障害とは?
  3. 化学物質のリスクアセスメントとは?
  4. 衛生管理者ができることは?
  5. おわりに

1.化学物質による中毒とは?

化学物質とは、文字どおり化学的に合成された物質のことです。
接着剤や塗料、インクなどさまざまな種類があり、私たちの生活は化学物質なしには成り立ちません。
もちろん、産業にも化学物質は欠かせないでしょう。
しかし、化学物質の中には有害なものも少なくないのです。
代表的なものが、有機溶剤。
有機溶剤は水で溶けにくい物質を溶かすことができるので、塗料やインクなどに幅広く使われています。
しかし、有機溶剤は人体にとって有害なので、吸いこみ続けるとめまいやけん怠感などが出てくるでしょう。
また、有機溶剤の中には吸いこむと多幸感を覚えるものもあり、中毒になってしまう方もいます。
このような職場で使う化学物質による健康障害を、別名「産業中毒」ともいうのです。

2.化学物質による健康障害とは?

化学物質による健康障害には、いろいろな種類や症状があります。
この項では、その一例を具体的にご紹介しましょう。

2-1.急性障害

急性障害とは、文字どおり化学物質が体内に入るとすぐに中毒症状が出ることです。
濃度の高い化学物質を体内に入れたり、化学物質の毒性が高かったりするときに起こりやすい症状になります。
また、化学物質自体の毒性は高くないものの密閉された場所で使っていたために濃度が高まって中毒を起こすこともあるのです。
急性中毒の場合は、意識を失ってそのまま死に至ることも少なくありません。

2-2.慢性障害

慢性障害とは、長い時間をかけて化学物質が人体をむしばんでいくことです。
このような障害は内臓に重い障害が出ることもあります。また、発がん性は究極の慢性障害ともいえるでしょう。
慢性障害は症状が出るまでに時間がかかります。ですから、発見が遅れて大勢の方が被害にあうことも少なくありません。
2015年12月にも、印刷会社で働いていた従業員のガン発症率が高いことが問題になりました。
また、障害によっては退職後に症状が現れることもあるので、責任の所在を巡って裁判になることも少なくありません。

3.化学物質のリスクアセスメントとは?

リスクアセスメントとは、職場にある有害物質の特定や事故を防止するための取り組みのことです。
では、化学物質のリスクアセスメントとはどのように行うのでしょうか?
この項で対処法などをご紹介します。

3-1.有害物質の特定

まず、最初に行うのは有害物質の特定です。
たとえば、塗料ならばその中の成分の何が健康障害を引き起こすのか、調べることになります。
現在は、体に有害な化学物質が含まれている製品は、必ずその旨の説明があるはずです。
しかし、長年無害だと思われてきたものが実は有害だった、というものもあります。
一例をあげると、石綿とフロンガス。石綿は防火性が高いので、多くの建物に使われてきました。
しかし、石綿の細かい繊維が体内に入ると、肺がんのリスクが格段にアップするのです。
ですから、建設業の方や解体業に従事していた方の健康被害が拡大しました。

3-2.特定された有害物質のリスクを見積もる

有害な化学物質が特定されたら、それによる健康被害のリスクを見積もります。
有機溶剤を例に取ると換気を十分にすれば健康被害は防げるのか、それとも専用のマスクなどをつけないと中毒の危険性があるかでも、リスクは変わってくるでしょう。
リスクを見積もれれば、対処法も分かってきます。

3-3.リスクを低減するための対処法を考える

最後に、リスクを低減するための対処法を考えます。
具体例をあげると

  • 従業員への教育の徹底。
  • 化学物質の危険性がすぐ分かるようにマークなどをつけておく。
  • 化学物質の隔離。
  • 化学物質を使用した際に使った器具の取り扱い方を決める。
  • 化学物質を使った仕事の手順をマニュアル化する。
  • 化学物質の代替品の検討。

など。
特に、従業員への教育は大切です。
安全に配慮して仕事を行うためには、時間と手間がかかります。
ですから、慣れてくると「少しくらいよいだろう」と考えて、決められたマニュアルを守らずに仕事をする人が出てくるのです。
今までに起こった化学物質の中毒事故の多くが、このような慣れからくるヒューマンエラーが原因でした。
ですから、マニュアルを作成して配って終わりではなく、定期的に講習会などを開きましょう。
そうすれば、従業員も理解が深まります。

4.衛生管理者ができることは?

衛生管理者の業務の中に、健康診断の結果の管理があります。
健康診断は企業ならば必ず年1回は行わなければなりません。
そのときに、慢性中毒の症状が出ていれば従業員の多くに検査結果の異常が見られるでしょう。
特に、肝臓や腎臓などは体内の毒素を集めて排出する役目があります。
ですから、この数値が悪いと化学物質による健康障害が出ている可能性が高いのです。
さらに、肺も吸いこまれた化学物質が一番先に到達するところですから、物質によっては肺の機能も悪くなるでしょう。
健康診断の結果が悪かった場合は、すぐに原因を突き止めなくてはなりません。
経営者だけでなく安全管理者とも協力して、早急に行ってください。
さらに、特定の化学物質を扱っている場合は特別健康診断を実施しなくてはなりません。
労働基準法に定められていますので、必ず守りましょう。
また、せっかく健康診断の機会を設けても、従業員が受けなければどうしようもありません。
ですから、仕事が忙しくない時期に健康診断を実施するように日程を調整してください。
さらに、健康被害を訴える従業員と産業医を面談させる段取りを組むのも大切な仕事です。
従業員の業務形態にかかわりなく、健康被害の相談を受けたら産業医と面談させましょう。

5.おわりに

いかがでしたか?
今回は化学物質による健康障害の原因やその対処法についてご紹介しました。
今は、日本企業の多くが従業員の健康的に仕事ができるように設備などを整えてくれています。
しかし、せっかく設備が整っていても従業員がそれを使わずに危険な作業をしていては、効果がありません。
もし、「安全性に気を配って作業をしていると、仕事が間にあわない」ほど忙しいのであれば、経営者とかけあって仕事量を調節してもらう必要があるでしょう。
一度健康被害が出てしまえば、企業の信用は一気に落ちます。
また、従業員が裁判を起こせば経済的な損失も大きくなるでしょう。
ですから、従業員ひとりひとりが気をつけるだけでなく、職場が一丸となって安全対策に取り組む必要があります。
その為には、安全管理者とも協力してリスクアセスメントに取り組んでいきましょう。


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