酸素欠乏症は死に至る恐れもある!原因と対策を知って安全な作業を

製造業・建築業など、作業にかかわる方々は酸素欠乏症とは無縁だと捉(とら)えているケースが目立ちます。しかし、酸素欠乏症は身近で発生しやすい病気で、万が一かかってしまっても後遺症を残さない素早い応急処置を覚えておくことも大切です。
作業現場での酸素欠乏症を予防するための対策も知っておくといいでしょう。安全に業務を行うためのポイントをご紹介します。

  1. 酸素欠乏症とは
  2. 酸素欠乏症の危険がある作業
  3. 酸素欠乏症の原因と対策
  4. まとめ

1.酸素欠乏症とは

酸素欠乏症とは、酸素が不足している起こる病気です。どのような病気なのか、詳しく見ていきましょう。

1-1.肺の酸素が奪われる

酸素濃度が18%以下になると発症します。通常の酸素濃度は21%程度で、人間の肺では16%とされ、呼吸をすることで常に空気の交換が行われているのです。
酸素濃度が高いところから低いところへ送られるのが一般的ですが、酸素欠乏症になってしまうと肺の空気がどんどん流れ出てしまいます。酸素が欠乏した状態は、ほかの器官に酸素が送られなくなり、全身状態悪化を招いてしまうのです。

1-2.酸素濃度が低下すると起こる症状

酸素が欠乏すると、さまざまな異常が出やすくなります。突然意識を失うなど、危険な状態に陥ることもありますので、注意が必要です。

  • 酸素濃度16%以下(吐き気・頭痛・呼吸と心拍の増加)
  • 酸素濃度12%以下(筋力低下・めまい・体温上昇)
  • 酸素濃度10%以下(意識不明・吐き気・チアノーゼ)
  • 酸素濃度6%以下(ひきつけ・呼吸停止)

酸素濃度が低くなると症状が重たくなり、脳へのダメージも大きくなります。後遺症の心配も増えるでしょう。
酸素欠乏症では、ほんの少し酸素濃度が低下するだけで症状を感じることもあります。いつもと違うと感じることがあるなら、体調に注意すべきです。

1-3.体質にも影響する

酸素が低下すると、正常な身体を維持することができません。長期間酸素欠乏が続けば、体質にも影響を与えてしまいます。全身疾患への影響を考えると、常に安全性を考えて作業に従事することを優先すべきでしょう。
酸素欠乏が招く体調不良や体質の変化は次のとおりです。

  • 痩せにくい
  • 常に眠気が起こる
  • 慢性疲労
  • 集中力低下
  • 視力低下
  • 偏頭痛
  • 冷え
  • むくみ
  • 肩こり

2.酸素欠乏症の危険がある作業

酸素欠乏症になりやすいのは、通気性が悪くて酸素消費量が多い場所。酸素欠乏症の定義として、空気中の酸素濃度が18%より低い状態を指しています。酸素欠乏症等防止規則にも記載されている内容です。酸素欠乏症にかかる恐れがあるのは、どのような仕事があるのでしょうか?

2-1.通気の悪い場所

空気循環が悪く、通気性のない場所では注意が必要です。タンク内部・トンネル・井戸などは、有毒ガスも蓄積しやすい環境ですので、酸素欠乏症が発生しやすくなります。
閉鎖された環境で、空気の流れがない場所で仕事をする場合は、安全性を確保して作業にあたることが求められるのです。

2-2.マンホール

マンホールは下水管です。悪臭も漂い、空気循環がない場所。加えて、閉鎖された環境であり、微生物の発生による酸素消費が激しいもの。
卵が腐ったような臭いとして知られている有毒ガス・硫化水素も発生しやすく、酸素欠乏症だけではなく硫化水素中毒の不安もある場所です。

2-3.貯蔵庫や倉庫

気密性の高い貯蔵庫や倉庫も注意すべき場所です。貯蔵庫では野菜や穀物を保管しますが、酸素消費量も多い場所でもあります。金属や鉄くずなどは酸化する過程で酸素消費していくため、倉庫でも酸素欠乏症になってしまうでしょう。

2-4.焼き物を作る窯元

陶芸が好きな方も多いと思いますが、通気や換気には注意して作業するべきです。閉鎖されたまま、焼き物を燃やしてしまうと、酸素欠乏症発症リスクを高めてしまいます。
普段とは異なる環境で作業するときは、一人で作業することは避け、意識低下などがあってもすぐに応急処置が行える体制作りが大切です。

3.酸素欠乏症の原因と対策

酸素欠乏症は、全身への影響も大きいことから予防対策がとても大切です。酸素濃度18%以下・硫化水素濃度10ppm以上になると発症します。作業中は保護具を使用して換気を心がけるなど、労働環境を見直すことも行いましょう。

3-1.ガスの吸入が原因

酸素欠乏症は、体内の酸素が低下している状態です。多くの場合、有毒ガスや不活化ガスを吸入したことが原因となっており、低酸素状態になると数分で心肺停止に陥ることもあります。
特に、脳は酸素を多く必要としている組織で、酸素濃度が低下すると大きな障害や後遺症を残すとされ、注意すべきです。低酸素状態は、細胞組織・小脳・大脳・脳幹部と侵食していきます。

3-2.作業主任者の設置

安全に作業を進めるために、酸素欠乏危険場所における作業主任者の選任が必要。作業主任者には2種類あり、酸素欠乏危険作業主任者と酸素欠乏・硫化水素危険作業主任者で技能講習を受けて得られる資格です。
作業従事者の身体や環境に異常が発生したときに、空気中の酸素や硫化水素濃度測定を行います。作業者の安全性に配慮した作業方法の提案を行うのも、作業主任者の職務です。

3-3.応急処置

酸素欠乏症と硫化水素中毒は、できる限り早く応急処置を行う必要があります。安全な場所へ移動して水平に寝かせ、心肺蘇生(そせい)措置とAEDの手配が急務です。酸素欠乏症を発症してから3分以内に心肺蘇生(そせい)を行うことが大切。3分を過ぎると蘇生(そせい)率が低下するため、迅速な応急処置が求められます。同時に救急隊へ連絡し、早く医療機関を受診するようにしましょう。
ほかの人は、作業現場の安全性が確認できるまで立ち入らないようにしてください。低酸素・一酸化炭素・硫化水素・シアン化水素など、人体に有害なものが充満している中へ入ってしまうと二次災害に発展する恐れもあるでしょう。

4.まとめ

酸素欠乏症についてご紹介しました。

  • 酸素欠乏症とは
  • 酸素欠乏症の危険がある作業
  • 酸素欠乏症の原因と対策

酸素欠乏症は、酸素濃度が18%以下になると発症します。硫化水素が10ppm以上になると、硫化水素中毒も引き起こすので注意すべきです。
酸素濃度が低下すると全身状態が数分で悪化し、心肺停止後は死に至るケースもあります。通気の悪い環境や閉鎖された空間では、酸素欠乏危険作業主任者と酸素欠乏・硫化水素危険作業主任者の設置が必要です。
作業者と環境に異常がないかを把握しながら、安全に作業できるよう配慮することが大切でしょう。