指差呼称の効果ややり方について~ヒューマンエラーの防止策~

人間に危険をおよぼす職場では安全が第一です。
職場の安全を守るためにも、必要な知識を身につけなければなりません。
安全衛生のキーワードには「指差呼称」という言葉があります。
職場でのミスやヒューマンエラーを防止するためにも指差呼称について知りましょう。これから、指差呼称の効果ややり方、定着、目的など詳しく説明していきます。
職場での安全対策に関係する人はぜひ参考にしてください。

  1. 指差呼称の効果
  2. 指差呼称のやり方
  3. 指差呼称の定着と目的
  4. まとめ

1.指差呼称の効果

危険な職場では危険予知活動として「指差呼称」をします。
信号や標識、作業対象、安全確認のために指差をしながら声に出して確認する行為です。
指差呼称には一体どんな効果があるのでしょうか。
これから一緒にチェックしていきたいと思います。

1‐1.意識レベルが向上する

気をつけていても毎日同じことのくり返しでは必ずヒューマンエラーが起こります。ヒューマンエラーを防止するには働いている人たち1人1人が意識を高めなければなりません。
そこで、「指差呼称」が大きく役立ちます。
1994年、財団法人鉄道総合技術研究所が指差呼称の実験をしました。
鉄道関係の職場では必ず指差呼称をします。
指差呼称をしなかった場合、操作ボタンの押し間違い発生率が2.38%という結果になりました。
一方、呼称だけした場合の発生率はおよそ1.0%と発生率が1.38%も違う結果になったのです。
必ずしも指差呼称だけで防ぐことはできません。
けれども、指差呼称でヒューマンエラーが防止できることが実験で証明できました。

1‐2.確認の精度が向上する

人は感情や気持ちの変化によって確認ミスをしてしまいます。
気分によって確認しないケースが非常に多いのです。
しかし、指差呼称をするという義務があれば確認ミスは起きません。
必ずしなければならない作業にいれることで確認の精度が向上するでしょう。
実験研究からも指差呼称は「確認の精度向上に有効な手段」とわかっています。
指差だけや呼称だけでなく、指差呼称が一緒になることで精度が格段にあがるのです。危険な職場では少しのミスが命とりになります。
ミスを減らすためにも、指差呼称は有効的です。

1‐3.認知機能が活性化する

人は頭を使わなければ認知機能が衰えてしまいます。
最近は認知症になる人が急激に増えてきました。
若者でも若年性認知症という病気になりやすいのです。
けれども、指差呼称をすることで認知機能の活性化が期待できます。
指を使って自分の目で確認する、そして声に出す作業が脳の活性化につながるでしょう。
たとえ、実感はなくても自然と脳は働いています。
指差呼称での実験では黙読や呼称だけの方法よりも、血中酸素かヘモグロビンの変化量が非常に多かったのです。
実験でも証明しているほど、指差呼称にはさまざまな効果があります。
人間の不注意や錯覚、近道反応などの働きを防止にもなるでしょう。
より指差呼称の効果を生み出すには正しいやり方ですることが大切です。

2.指差呼称のやり方

2‐1.指差呼称の基本は4つ

指差呼称は誰でもできますが、正しい知識を身につけなければなりません。
指差呼称の基本は「口」「目」「耳」「指・腕」の4つです。
まず、「目」は確認すべき対象に向けてしっかり見つめます。
確認すべきところを見つめた後は「指・腕」の出番です。
親指が後ろになるよう、左手を腰にあてます。
右腕をまっすぐ伸ばして人差し指で対象を指してください。
対象となるものの名前を呼んだ後、耳元まで右手を振り上げます。
本当に合っているかどうかを確かめたうえで「よし!」と声に出してください。
声を出して確かめた後は、上げていた右手を振り下ろしましょう。
大切なポイントは、はっきりと声で確認することです。
小さい声では確認もできません。「耳」はしっかりと自分の声を聞くように心がけましょう。
以上の4つは基本形になるので頭にいれておいてください。

2‐2.指差呼称をする際のポイント

指差呼称の基本をマスターすると同時に、ポイントをしっかりチェックしてください。指差呼称のポイントは2つです。
まず1つ目は「動作をきびきびとすること」になります。
基本形をマスターしても動作がゆるく中途半端なら意味がないです。
できるだけ意識を集中するために動作には緊張感を持ってください。
緊張感があればあるほど、きびきびとした動作になるでしょう。
そして、2つ目のポイントは「呼称の注意力」です。
注意対象を口に出すときはできるだけ細かくすることが大切になります。
たとえば、「温度!」ではなく「温度○度、よし!」が最適です。
呼称内容は適当にするのではなく、具体的な内容が好ましいでしょう。
より具体的に注意対象を呼んだほうが注意力が向上します。

3.指差呼称の定着と目的

3‐1.指差呼称の定着

注意喚起や認知機能の活性化など、指差呼称は非常に大切です。
しかし、実際、指差呼称は難しい、面倒くさいと思っている人がほとんどでしょう。
定着しているかどうかは職場によって異なります。
指差呼称が定着できるかどうかは、職場の意識にかかっているのです。
指差呼称を定着するには、「毎日全員で声をそろえる」行為が1番効果を発揮します。
1人だけでは面倒に感じさぼりがちです。
よって、職場の全員で指差呼称をするように心がけてください。
職場の安全対策を練っている人は全員で指差呼称をするよう呼びかけましょう。
最初は面倒に感じる従業員もいますが、毎日全員で続けていけば指差呼称が当たり前になります。
そして、効果が現れ始めるでしょう。

3‐2.指差呼称の目的

従業員の全員に指差呼称をするためには、指差呼称の目的を明確にしなければなりません。
基本的に、指差呼称の目的はヒューマンエラーや不注意、確認ミス、事故を防ぐためのものです。
目的を明確にしておけば、従業員たちも納得して指差呼称ができます。
また、指差呼称のやり方を決める前に指差呼称の必要な部分を選定するといいでしょう。
たとえば、今まで起こった事故や災害が起きた業務、手順を間違えたときに起こる重大な事故・災害の報告などです。
以上の内容を全員で共有することが大切になります。
ちなみに、業務が複雑の場合は簡潔なやり方に変えるのも指差呼称のポイントです。
似ている業務内容があるなら間違えやすい部分を明確にして伝えましょう。
できるだけ具体的に改善するためにも、従業員からやりにくい業務を聞き出してください。
現場の声をきちんと聞く人は指差呼称の指導や注意喚起もできます。

4.まとめ

指差呼称の効果ややり方、定着、目的について説明しましたが、いかがでしたでしょうか。
指差呼称は職場の安全を確保する大切な行為です。
きちんとやり方を確認して現場で働いている人たちに指導してください。
間違ったやり方は現場をさらに危険な状態にしてしまいます。
職場の安全対策をする人はやり方をマスターするだけでなく、従業員がみずから指差呼称をするように意識をあげていかなければなりません。
説得力のある人でなければ従業員たちは従ってくれないでしょう。
日ごろから働ている人たちの話を聞き、意見に耳をかたむけることが大切です。
地道な努力が現場で働く人たちの信頼を得ることができます。
また、指差呼称が定着するには、目的を明確にしなければなりません。
目的をしっかり明確にしたうえで従業員たちに注意喚起の必要性を伝えてくださいね。