安全衛生委員会とは?安全衛生の規則や定義・講習会について

労働者が働く環境と健康を守るには衛生管理者が必要不可欠です。そして、衛生管理者が役割を果たしつつ、事業場や作業場全体で取り組むためには委員会の設置が必要になります。

では、安全衛生委員会とは一体何なのでしょうか。安全衛生委員会の定義や内容、安全衛生委員会に関する資格、テキスト、講習会・セミナーなど詳しく説明します。衛生管理者になりたい人、安全衛生委員会について知りたい人はぜひ参考にしてください。

  1. 安全衛生委員会の定義
  2. 安全衛生委員会について
  3. 安全衛生委員会の内容
  4. 安全衛生委員会に関する資格
  5. 安全衛生委員会と講習会、セミナーについて
  6. テキストについて
  7. 安全衛生委員会に関するよくある質問

この記事を読むことで、安全衛生委員会について深く知ることができます。

1.安全衛生委員会の定義

安全衛生委員会とはどんな委員会でどんな目的を持って設立されるのでしょうか。安全衛生委員会の定義について詳しく説明していきたいと思います。

1-1.安全衛生とは

安全衛生とは、労働者が健康を維持しながら安心して働ける職場の環境づくりです。職場にはさまざまな危険がひそんでいます。労働者が危害・損傷・損害の恐れがない様子を「安全」、身のまわりを清潔にして健康を維持するのが「衛生」です。以上の2つが組み合わさったものを安全衛生と呼びます。

1-2.安全衛生委員会の概要

安全衛生委員会は労働安全衛生法によって定められています。現場で働いている労働者の意見を取りいれつつ、安全衛生の対策を立てる制度です。つまり、労働者が安心して働くための大切な委員会になります。安全衛生委員会は常に労働者へ意識を向けておかなければなりません。

1-3.安全衛生委員会の目的

安全衛生委員会の目的は起きやすい労働災害を防ぐためです。労働災害防止は労働者はもちろん、委員会一体となって取り組みをしていかなければなりません。よって、安全衛生委員会を設立することで対策・調査審議をおこなうことができます。

1-4.安全衛生委員会の必要性

労働者が働く現場・事業場の環境、労働者の健康を守るために安全衛生委員会が存在しています。そもそも、安全衛生の目標はより良い職場環境づくりだけでなく、労働者に安全衛生を意識づける点もあるのです。よって、安全衛生委員会も設置することで労働者に安全衛生の大切さを意識づけていかなければなりません。

1-5.安全衛生委員会の実施者

安全衛生委員会の実施者は事業者です。事業者は責任を持って働いている労働者たちの健康・安全を守る義務があります。ちなみに、安全衛生委員会は事業者が実施して毎月1回以上開催しなければなりません。

2.安全衛生委員会について

安全衛生委員会の定義を把握したうえで、次は規定や対象者、議長、選任義務などについて詳しく見ていきたいと思います。

2-1.安全衛生委員会の規定について

安全衛生委員会を設置するにあたり、規定・規則をきちんと把握しておかなければなりません。規定は第1条~第10条まであります。内容は調査審議事項、構成員、任務、任期など安全衛生委員会の設立に必要な内容ばかりです。作成例は東京労働局ホームページで確認できます。ぜひチェックしてみてください。

東京労働局ホームページ

2-2.対象者

安全衛生委員会を設立するには構成委員を選出しなければなりません。委員会の構成は「委員長」「会社側委員」「労働者側委員」の3つの立場で成り立ちます。事業の実施を統括する社長や役員が委員長、会社が指名するのが会社側委員、そして、労働組合の推薦によって会社が指名するのが労働者側委員です。労働者側委員は安全衛生に関して経験を持っている人の中から選ばれます。

2-3.議長について

安全衛生委員会の委員長は議長を務めます。社長や取締役が務めることはなく、ほとんど人事部長・支店長のどちらかが議長になるのです。議長は委員会で出た対策・案件を決定、推進していきます。それぞれ立場の人から平等に意見を聞き入れていかなければなりません。

2-3-1.選任義務

安全衛生委員会設立のためにはメンバーを選出していかなければなりません。メンバーのうち、最も大切なのが議長です。議長以外の委員には人事課長、人事担当者、衛生管理者、産業医、労働者になります。労働者がわは人事や安全衛生の内容にたずさわっている人が好ましいです。

2-3-2.統括安全衛生管理者

法律で決められている事業場は事業の実施を統括している管理者から「統括安全衛生管理者」を選ぶ必要があります。統括安全衛生管理者の役割は安全・衛生管理者や技術的事項管理者を指揮することです。つまり、議長=統括安全衛生管理者になります。さらに、労働者の健康障害を防ぐ取り組みや教育の実施などさまざまな義務の統括管理をおこなうことになるでしょう。

2-3-3.安全管理者

安全管理者は50人以上の労働者が働いている現場において有資格者から選ばれます。安全管理者の資格を持っていない人は対象外です。安全衛生について知識のある人の中から選出しなければなりません。また、安全管理者の人数は各都道府県が決めている生産施設単位ごとに異なります。

2-3-4.衛生管理者

衛生管理者は常に50人以上の労働者が働いている事業場で選出されるべき人です。安全管理者と同じく、衛生管理者の選任は業種に合った資格が必要とされています。

2-3-5.産業医

産業医は医学に関する知識を持っている人です。現場で働く労働者たちの健康を守っています。安全衛生委員会では常に50人以上労働者がいる現場から産業医を選任しなければなりません。労働者数が3,000人以上の場合は2人必要です。

2-3-6.そのほか

ほかにも、会社側では人事課長や人事担当者、労働者側からは営業部門の課長など人事以外の部署からも選任されることがあります。事業場や労働者の人数によって安全衛生委員会のメンバーは異なるのです。

2-4.安全委員会と衛生委員会の違い

安全委員会と衛生委員会は委員の構成と調査審議事項が違います。安全委員会における委員の構成は統括管理をおこなう者(議長)と安全管理者、労働者です。一方、衛生委員会の場合は統括管理をおこなう者(議長)と衛生管理者、産業医、労働者になります。また、調査審議事項における違いもハッキリしているのです。安全委員会の調査審議事項は安全に関する内容ですが、衛生委員会は衛生に関する内容になります。内容の詳細は以下のURLで確認できるのでぜひチェックしてみてください。

安全衛生委員会を設置しましょう(厚生労働省)

3.安全衛生委員会の内容

安全衛生委員会の内容について詳しく説明します。労働者たちの健康を維持するためには、内容をきちんと把握しておかなければなりません。

3-1.安全衛生委員会の議題について

安全衛生委員会の議題は安全・衛生に関係する内容です。たとえば、衛生委員会において労働者の健康障害防止・健康保持増進基本対策があります。安全委員会には労働者の危険を防止するための基本対策、危険の防止に関する内容などです。安全衛生委員会は安全委員会と衛生委員会の融合になります。課題は非常に幅広く、大切な内容ばかりなのです。

3-2.安全衛生委員会の構成

安全衛生委員会の構成は基本的に議長、衛生管理者、労働安全衛生義務の経験者、産業医、安全管理者です。安全衛生に関して知識を得ている労働者の中から数人選出することもあります。ちなみに、法律によると、議長以外の半数委員は事業者が指名しなければなりません。しかし、労働組合の推薦にもとづいて選びます。

3-3.安全衛生委員会議事録

安全衛生委員会を設置した後、話し合いによって重要な内容は記録しなければなりません。記録したものが「議事録」になります。法律によって、議事録は3年間の保存が義務づけられているのです。安全衛生を徹底させるためにも、大切に管理してください。

3-4.委員会による効果について

安全衛生委員会による効果はとても大きいです。何よりも労働者たちの安全衛生に向けた意識を高めることができます。委員会で意見や対策がまとまったとしても、委員会に参加していない労働者たちへしっかり伝えていかなければなりません。安全衛生の教育が大切なのです。しっかり労働者たちに伝えていけば、委員会でまとまった対策が実践できます。

3-5.その他

労働安全・衛生コンサルトという言葉を聞いたことはあるでしょうか。労働安全・衛生コンサルタントは労働安全衛生法にもとづき昭和47年に創設されました。労働安全・衛生に関するプロフェッショナルです。安全衛生の活動が停滞しているとき、安全衛生委員会の年間計画で困ったときなどコンサルタントの力を借りることができます。

一般社団法人 日本労働安全衛生コンサルタント会

4.安全衛生委員会に関する資格

安全衛生委員会のメンバーになるためには資格を取得しておかなければなりません。では、一体どんな資格が必要になるのでしょうか。安全衛生委員会に関する資格について詳しく説明します。

4-1.資格者について

資格者は安全衛生委員会のメンバーに選任されると同時に、キャリアアップが期待できます。これから、衛生管理者・安全管理者・産業医として働きたい人はぜひチェックしてください。

4-1-1.安全管理者

厚生労働大臣が定める研修を受講すれば安全管理者の資格が取得できます。厚生労働大臣が定める研修とは以下の内容です。

  • 学校教育法による大学、高等専門学校で理科系統の正規過程を修めて卒業した者。かつ、2年以上産業安全の実務に従事した者。
  • 学校教育法による高等学校、中等教育学校で理科系統の正規過程を修めて卒業した者。かつ、4年以上産業安全の実務に従事した者。

また、労働安全コンサルタントや厚生労働大臣が定める者も当てはまります。

4-1-2.衛生管理者

衛生管理者の資格は「衛生工学衛生管理者」「第1種衛生管理者」「第2種衛生管理者」の3種類です。業務の範囲が広い順から衛生工学衛生→第1種→第2種になります。ちなみに、衛生工学衛生管理者は1種を取得した後、講習を受講すれば取得できるのです。

4-1-3.産業医

産業医は労働現場において必要な医学の知識を身につけておかなければなりません。よって、資格取得にはさまざまな規定があります。

  • 労働者の健康管理などをおこなう必要な医学に関する知識についての研修を修了した者。
  • 医学の正規課程を設置している産業医科大学などが定める実習を履修した者。
  • 労働衛生コンサルタント試験に合格した者。かつ、試験の区分が保護衛生である者。
  • 学校教育法による大学で労働衛生に関する科目を担当する教授・講師の職にある、あった者。
  • 厚生労働省が定める者。

以上が産業医の規定になります。

5.安全衛生委員会と講習会、セミナーについて

日本全国において安全衛生委員会の講習会、セミナーが開催されています。安全衛生委員会について知りたい人はぜひ参考にしてみてはいかがでしょうか。

5-1.安全衛生委員会に関連する講習とは

安全衛生委員会に関連する講習は、厚生労働省令にもとづいています。「安全衛生推進者」「衛生推進者」を育てるための講習です。全体の講習は公益社団法人労務管理教育センターが受け持っています。

公益社団法人労務管理教育センター

5-2.講習資格

受講資格は特にないので安心してください。学歴・経験も不問です。安全衛生について興味がある人であれば誰でも受講できるチャンスでしょう。

5-3.講習概要

それでは、「安全衛生推進者」「衛生推進者」を育てるための講習概要について説明します。申し込みや講習日、場所、受講料など詳しく見ていきましょう。

5-3-1.申し込み

申し込みは公益社団法人労務管理教育センターのホームページからできます。受付中となっているところは申し込み可能です。すでに受付終了となっているところは申し込みができません。それぞれ講習によって定員が決まっています。絶対に受講したい場合はすぐに申し込みをしたほうがいいでしょう。

5-3-2.講習日

講習日は開催地区によってばらばらです。講習日の3か月前から受付を開始しているので、こまめにチェックしたほうがいいでしょう。

5-3-3.場所

講習がおこなわれる場所は東京・愛知会場、大阪会場、そのほか会場の3つにわかれています。そのほか会場では福岡や宮城など南と東北エリアですね。

5-3-4.受講料

受講料は11,290円~13,290円になっています。開催場所によって異なるので、申し込みをする前にしっかり確認しておきましょう。

5-4.講習内容

講習は2日間にわけておこなわれます。1日目は受付・開講挨拶・安全管理(2時間)・安全衛生教育(1時間)です。そして、最後に危険性または有害性などの調査およびその結果にもとづき講ずる措置など(2時間)があります。2日目は作業環境管理と作業管理(2時間)・健康の保持増進対策(1時間)・安全衛生関係法令(2時間)です。すべてが終了したら修了証授与があります。

5-5.問い合わせ先

講習会やセミナーについての問い合わせはホームページまたは電話で可能です。疑問があれば気軽に問い合わせてみてください。

問い合わせ先

6.テキストについて

衛生管理者など目指している場合、勉強に必要なのがテキストです。講習会の受講料にはテキスト代が含まれています。しかし、毎日テキストを開き続けるのは大変ですよね。そこで、おすすめのテキストを紹介します。

6‐1.第1種衛生管理者最短合格テキスト

DO BOOKSから発売されているのが「第1種衛生管理者 最短合格テキスト」です。重要頻出事項を絞り込んでいるため、忙しい人でも大切なところだけ学習できます。また、テキストで勉強した後は「第1種衛生管理者 最短合格問題集」で問題を解いてみましょう。

6‐2.最新7日間完成衛生管理者試験合格塾

日本実業出版社から販売されている「最新7日間完成衛生管理者試験合格塾」もおすすめのテキストです。過去の出題傾向を分析しています。よって、試験によく出る項目だけ勉強できるでしょう。

6-3.テキストを選ぶポイント

自分にとってわかりやすい内容・解説かどうか、毎日続けやすいかどうかが選ぶポイントです。たとえ、人からおすすめされたテキストだとしても自分に合っていなければ意味がありません。わかりやすい内容かどうか、実際に確認するのも良し、口コミをチェックするのも良いでしょう。

6-4.テキストのメリット

テキストを使用すれば、試験に合格するための必要な知識が身につきます。特に、通信講座のテキストは大切な部分だけピックアップしているのです。無駄な知識ははぶき、試験に必要な知識だけ頭の中にいれることができますよ。

7.安全衛生委員会に関するよくある質問

安全衛生委員会に関してよくある質問を5つピックアップしていきます。疑問点が解決しないまま勉強するよりも、解決したほうが勉強しやすくなるでしょう。

7-1.事業場って何?

安全衛生委員会を設置しなければならない「事業場」は、業種や規模によって単位が異なります。労働者が働いている工場や倉庫などさまざまな業種が当てはまるでしょう。事業場の業種区分は業態によって個別されるものと決められています。事業場の区分は以下のURLでチェックしてください。

厚生労働省

7-2.安全衛生教育はいつおこなうべきか?

安全衛生委員会で決まった取り組みは労働者に教育として伝えていかなければなりません。安全衛生教育は業務の1つとしておこなってください。労働者が休みの日や残業してまでする必要はないですよ。

7-3.安全衛生標語・安全衛生スローガンとは?

安全衛生への取り組みや意識を高めるために、安全衛生標語・安全衛生スローガンがあります。また、会社や企業、事業場が標語・スローガンを立てることで労働者・事業場が一体になるでしょう。中央労働災害防止協会では毎年、安全衛生標語の公募をおこなっています。ホームページでは歴代年間標語を記載しているのでぜひチェックしてみてください。

安全衛生標語 歴代年間標語

7-4.衛生管理者の合格率とは?

平成27年度における第1種衛生管理者の合格率はおよそ56%、第2種はおよそ70%でした。半分以上の人が受かっているので、難しい試験ではありません。きちんと勉強をしておけば合格できます。

まとめ

安全衛生委員会は事業場で働いている労働者を危険から守るためのものです。健康を維持し続けるためには事業場をより良い環境に改善し続けていかなければなりません。選任されたメンバーでしっかり話し合い、対策について話し合う必要があります。安全衛生委員会のメンバーになるには衛生管理者・安全管理者といった資格の取得が必要です。資格を取得するために、自分に合った方法で勉強を始めてくださいね。