疾病労災って何?どんな種類があるの?

仕事は安全が第一ですが、仕事が原因で病気になったり体が不自由になったりすることもあるでしょう。
仕事が原因で病気になることを、疾病労災といいます。
そこで、今回は疾病労災についてご説明しましょう。
ひとくちに病気、といってもいろいろな種類があるのです。
また、たとえ休暇中に病気で亡くなっても疾病労災と認められることもあるでしょう。
その理由もご説明します。労災の種類や定義について知りたいという方は、ぜひこの記事を読んでみてくださいね。

目次

  1. 疾病労災とは?
  2. 疾病労災の認定基準とは?
  3. 労災と認められない場合は?
  4. 疾病労災を防ぐためにはどうしたらいいの?
  5. おわりに

1.疾病労災とは?

まず始めに、疾病労災とはどんなものかということをご説明しましょう。
ケガとは異なり、休暇中に発病しても労災と認められる理由などもご説明します。

1-1.災害性疾病

これは、就労中のアクシデントがもとで疾病になるケースです。
たとえば、化学工場で働いているときに有毒ガスが漏れる事故が起こり、有毒ガスを吸った結果肺の疾病にかかった場合などは、災害性疾病に相当します。
また、通勤中や出張中にアクシデントに合った場合も、仕事に関わった行動の最中ということで災害性疾病に認められるでしょう。
ただし、帰宅途中に仕事に関係のない別所に寄り、そこで事故にあったという場合は認められないので注意してください。

1-2.職業性疾病

これは別名職業病と呼ばれるもので、特定の職業に就いているとかかりやすい病気を発症した場合に認められます。
一例をあげると潜水病や皮膚疾患ですね。
最近では、アスベストを取り扱っている会社で長年働いた結果発症したじん肺などの疾病も、認められるようになりました。
アスベストが原因のじん肺は発症して症状が出るまでに、長い時間がかかります。
ですから、退職後に発症して認められたというケースもあるのです。
職業性疾病は、発症者の数も多く一番労災と認められやすい疾病でしょう。

1-3.作業関連疾患

これが今、急速に認定者を伸ばしている疾患です。
仕事が引き金になって、元々病気になりやすかった人が病気を発症してしまった場合に認められます。
といっても、これだけでは何のことが理解できない方もいるでしょう。
一例をあげると、元々高血圧の持病があった人が連日の残業続きで脳出血を起こして倒れてしまった場合などです。
これは元々高血圧でリスクがあったにせよ、連日の残業が発症の引き金になったということになります。
脳疾患のほかにも、心臓病や精神疾患にも認められるでしょう。
さらに、元々心臓病の持病があったが健康診断を受けて問題ないといわれていた。
だから、病院がない場所に仕事に行ったら心臓病を発症。
病院への搬送が遅れて亡くなってしまったという場合も、作業関連疾患に相当します。
最近では、うつ病や過労死なども作業関連疾患の一種であると認めてほしいと願っている人も多いでしょう。

1-4.休暇中に発症しても認められる?

疾病はケガとは異なり、症状が現れるまでに時間がかかります。
たとえば、連日遅くまで働いていた人が、弾の休暇でのんびりしていたら脳疾患や心臓疾患を発症したという場合も、労働との関連が認められれば労災に認定されるのです。
「就業中に倒れて救急車で病院に搬送されなければ労災とは認められない」ということはありません。

2.疾病労災の認定基準とは?

疾病労災には認定基準があります。
といっても複雑なものではなく、「疾病の発症や悪化が業務との間に深い因果関係があったか」で判断されるのです。
災害性疾病や職業性疾病の場合は、因果関係も証明しやすいでしょう。
特に、職業性疾病の場合はその仕事に長年就いていないと発症しないものも多いのです。
しかし、作業関連疾患の場合は話がややこしくなりやすいでしょう。
たとえば、仕事のストレスが疾病の発症原因になったと主張しても、それを立証することは難しいのです。
ストレスの感じ方は人それぞれ。
また、体力のある人は何十時間働いてもぴんぴんしている人もいます。
逆に、仕事内容が自分に合っていない場合はそれほどハードな仕事でなくても強いストレスを感じて病気になる場合もあるでしょう。
作業関連疾患の場合は残業時間やストレスの度合いなど基準が設けられていますが、必ずしも当てはまらないケースも多いのです。

3.労災と認められない場合は?

企業が疾病を労災と認めた場合は、話が早いです。
保険金が支払われたり、場合によっては損害賠償金を受け取れたりするでしょう。
しかし、作業関連疾患は企業が仕事との因果関係を認めない場合が多いのです。
その場合は、民事訴訟が起こされることもあります。
現在、作業関連疾患の労災認定を巡って多くの裁判が行われているのです。

4.疾病労災を防ぐためにはどうしたらいいの?

では最後に、疾病労災を防ぐための対策方法をご説明します。
衛生管理者にできることはあるのでしょうか?

4-1.職場の安全に気を配る

これは、災害性疾病の予防につながります。
交通事故や災害などどうやっても防げないこともありますが、職場の安全ならば安全管理者とともに保つことができるでしょう。たとえ、危険なものを扱っていない会社でも、事務所が乱雑だったりすると思わぬ事故が起きます。
ですから、常に整理整頓を心がけておきましょう。

4-2.健康診断の結果で職業病の有無を把握する

衛生管理者の仕事のひとつに、健康診断の結果を管理することがあります。
職業性疾病が発症すれば、多くの従業員に同じ症状が出るでしょう。
ですから、健康診断の結果、同じところに異常が出た人がたくさんいた場合は要注意です。
すぐに安全管理者や経営者に連絡を取って対策を立てなくてはなりません。
また、潜水病など昔から知られている職業病の場合は、「この仕事に就いていると、このようなリスクがあります」ときちんと従業員に説明しましょう。
そうすれば、体の異常にも気づきやすくなります。

4-3.職場巡視で話を聴く

衛生管理者の仕事のひとつに、職場巡視があります。
仕事のストレスでうつ状態になると、いろいろな疾病を発症しやすくなるでしょう。
また、心疾患や脳疾患などは過労状態になれば発症するリスクがアップします。
ですから、職場巡視の際に気になった人がいた場合は産業医との面談を設定しましょう。
産業医が脳疾患や心疾患、さらに精神疾患の専門医でなくても、話を聴いて専門医の診察を受けるように勧めることはできますし、紹介状も書いてもらえます。

5.おわりに

いかがでしたでしょうか?
今回は疾病労災に就いてご説明しました。
まとめると

  • 疾病労災とは仕事が原因で病気になることである。
  • 職業病や災害性疾病などの種類があるが、今は作業関連疾患が増えている。
  • 疾病労災の認定を巡って裁判も起こされている。

ということです。
時々テレビや雑誌を賑わせている過労死の労災認定を巡る裁判も、作業関連疾患に関わるもの。
日本の就労環境は格段に進歩して、災害性疾病や職業病は減ってきました。
しかし、作業関連疾患は年々増加しています。
でも、作業関連疾患の場合は仕事との因果関係を立証するのが難しいため、裁判になることもあるのです。
そうなった場合は、企業側も大きなダメージを受けるでしょう。
疾病を予防するためには過労の防止と定期的な健康診断が大切。
つまり、衛生管理者の仕事に関わる部分が大きいのです。
また、労災に認定されるかどうかわからないという場合は、労働基準監督署に相談してみましょう。