特殊健康診断とはどんなことをするの?対象者や検査項目とは?

会社は、年1回従業員に健康診断を受けさせなくてはなりません。
これは、労働基準法で定められた決まりです。
しかし、職場の環境によっては、年1回の健康診断では従業員の体調を把握しきれないところもあります。
そのような職場が行うのが特殊健康診断です。
そこで、今回はその検査項目をご紹介します。
また、いったいどのような職場が特殊健康診断をしなければならないのでしょうか?
興味がある方は、ぜひこの記事を読んでみてくださいね。

  1. 健康診断と特殊健康診断の違いとは?
  2. 特殊健康診断の項目とは?
  3. 健康診断の結果、異常が見つかった場合は?
  4. 健康診断をできるだけ全員に受けてもらうための注意点とは?
  5. おわりに

1.健康診断と特殊健康診断の違いとは?

ひとりでも従業員を雇用している職場では、一部を除いて年1回の健康診断の実施が義務づけられています。
この健康診断は、雇用状態にかかわらず行わなければなりません。
健康診断を行う目的はふたつあります。
ひとつは、従業員の健康状態を把握するため。
そしてもうひとつは、職場の環境が労働に適したものであるか確認するためです。
職場環境が労働に適さない場合は、従業員の健康状態が同じように悪化するでしょう。
個人の生活環境や食生活が原因で健康状態が悪化するならば、改善をうながしたり専門医を受診したりするようにするように勧めるしか、会社側にはできません。
しかし、職場環境の改善が必要な場合は、すぐに行わないと労働災害に発展する可能性があります。
一方、特殊健康診断は健康に悪影響を与えやすい物質を扱っている職場の従業員が受ける健康診断です。
一例をあげると、粉じんや有機溶剤。
これらは健康に害があることが化学的に立証されていますし、職場も対策を立てているでしょう。
しかし、それでも健康に被害が出ることもあります。
そのため、健康に被害が出やすい箇所の検査を定期的に行うことで、従業員の健康状態と労働環境の情報をチェックするのです。
これが、特殊健康診断の目的になります。

2.特殊健康診断の項目とは?

この項では、特殊健康診断の項目や特殊健康診断を行わなければならない業種についてご説明します。
この項目は法律で定められていますので、勝手に変更することはできません。

2-1.特殊健康診断の項目とは?

特殊健康診断には、以下の7つの項目があります。

  • じん肺健康診断・有機溶剤中毒予防健康診断
  • 鉛健康診断
  • 四アルキル鉛健康診断
  • 特定化学物質健康診断
  • ​高気圧作業健康診断
  • 電離放射線健康診断

これらの健康診断は、それぞれ法律によって実施が義務づけられています。
健康診断が年に1回なのに対し、特殊健康診断は3か月~6か月ごとに1回するように義務づけられているのです。
また、入社時だけでなく、退職時にも健康診断を義務づけているものもあります。
これらの健康診断の結果は、一定期間保管が義務づけられているのです。
物質によっては、体に悪影響が出るまで何十年とかかるものもあるでしょう。
石綿(アスベスト)などがその一例です。
ですから、退職した従業員の健康状態が悪化したときの労災認定にも必要になります。

2-2.行政指導による健康診断とは?

前述した特殊健康診断は、有機溶剤や鉛、さらに化学物質を使っている職種を対象にしたものです
。しかし、それ以外にも特定の仕事をしている人だけが、健康に悪影響が出る可能性がある物質を扱うこともあるでしょう。
たとえば、病院のレントゲン技師は電離放射線の一種であるX線をひんぱんに浴びています。
また、重いものを運んだり常に振動し続ける工具を扱ったりしている方は、腰痛や振動障害などを発症する確率が高いでしょう。
ですから、そのような仕事をしている方には通常の健康診断に加えて、特殊健康診断のような故障が出やすい場所の検診をするよう努力してほしい、と行政が指導しているのです。
ちなみに、毎日パソコンを使って長時間仕事をしている場合も、VDT作業といって対象になります。
視力検査や腰痛検査をするよう努力してほしい、と行政が指導しているのですね。
この健康診断の内容は年ごとに追加されたり改定されたりして、通達されます。
ですから、健康保険組合からのお知らせをよく把握しておきましょう。
ちなみに、この健康診断は実施しなくても罰せられることはありません。

3.健康診断の結果、異常が見つかった場合は?

特殊健康診断の結果、従業員に異常が見つかった場合は衛生管理者と安全管理者が協力して、原因を究明しましょう。
従業員が自分で安全対策を行った結果ならば、従業員教育を見直さなければなりません。
また、複数の従業員に同じ異常が出た場合は、早急に職場環境の改善が必要です。さ
らに、病院に通院したり休職が必要になったりした場合は、労災扱いになる可能性もあるでしょう。
その場合も、衛生管理者が労働基準監督署に必要な書類を提出するなどする必要があります。
また、企業の経営者側との話し合いも必要でしょう。
これがうまくいかないと、労災の有無を巡って労働者側と企業側で裁判になることもあります。

4.健康診断をできるだけ全員に受けてもらうための注意点とは?

では最後に、健康診断を従業員全員に受けてもらうための注意点をご紹介しましょう。
特に、特殊健康診断の対象者を抱えている企業に勤めている衛生管理者は、参考にしてください。

4-1.健康診断の日程の組み方

特殊健康診断は3か月~6か月に1度の頻度で行います。
ですから、なかなか日程の組み方も難しいでしょう。
とはいえ、1日つぶれるような検査でもありません。
できるだけ仕事が忙しくない時間帯、や時期を狙って日程を組みましょう。
1日かけてもよいのならば、数組ずつ従業員を分けて、作業がストップしないようにローテーションを組んでいけばよいですね。

4-2.健康診断の重要性を説明する

特殊健康診断を実施することにより、体調の異変により早く気づくことができます。
どんな病気であれ、早めに治療を始めるほど効果が出やすいでしょう。
従業員の中には健康診断の重要性が分からない方もいるかもしれません。
ですから、まずは健康診断の大切さとそれを受けないことのリスクを説明しましょう。
特に、有機溶剤の中毒症状は、症状が急に出る場合もあります。
また、健康に悪影響が出るばかりでなく麻薬のように中毒症状が出ることもあるでしょう。
扱っている職場も多いので、ぜひ健康診断の受診をてっていさせてください。

5.おわりに

いかがでしたか?
今回は、特殊健康診断の項目などについてご紹介しました。
特殊健康診断をしなければならない職場、というのは皆様が思っている以上に多いのです。
また、行政指導による健康診断を含めると、世の中の8割くらいの仕事が当てはまる可能性があります。
しかし、企業側にしたらできるだけ従業員にかけるコストを抑えたい、と思っているところも少なくないでしょう。
でも、健康診断の費用や手間を怠った結果、従業員に労災が発生したり、損害賠償を払わなければならなくなったりしたら、そちらの方が余計にコストはかかります。
また、企業のイメージも社会的な評価も下がるでしょう。
ですから、決められたことや推奨されていることは、きちんと行った方がよいのです。
今は、健康保険組合の方で健康診断を実施してくれる病院なども紹介してくれることもあります。
ぜひ利用してみてください。
衛生管理者の方が中心になって、従業員が受けやすい健康診断を実施しましょう。