衛生委員会の議題が決められない! 会議の進め方や設置方法について

労働者にとって、安全・安心な職場を整えることはとても大切なことです。安全・安心な労働環境を整えるために、大きな役割を担っているのが「衛生委員会」と言われています。衛生委員会は、常時50人以上の労働者を使用する事業場ごとに設置しなければなりません。衛生委員会の定義や目的などの知識を把握することで、快適かつ安全な労働環境を整えることができるでしょう。

本記事では、衛生委員会の基礎知識や設置方法・議題・関連する資格などについて説明します。

  1. 衛生委員会の基礎知識
  2. 衛生委員会の設置について
  3. 衛生委員会の議題について
  4. 衛生委員会に関連する資格は?
  5. 衛生委員会に関してよくある質問

この記事を読むことで、衛生委員会の役割を果たすために必要な知識を身につけることができます。安全衛生委員会の議題について知りたい方や資格取得を考えている方は、ぜひ参考にしてください。

1.衛生委員会の基礎知識

労働者に安心・安全な職場環境を提供できるかどうかは、衛生委員会の役割が大きく関係しています。まずは、安全衛生の定義や衛生委員会の内容・必要な職場・主な目的・実施者・安全委員会との違いについてチェックしていきましょう。

1-1.安全衛生について

安全衛生は、「健康に、かつ安全に」働くためのさまざまな決まりを示しています。労働安全衛生法に基づいた決まりであり、安全衛生のポイントは2つです。1つ目は、労働者が健康に危険なく、安心して働くことができる環境づくりとなります。そして、2つ目は、安全衛生に対する取り組みを日々実践することで、安全衛生水準を高めることです。そもそも、安全は危害または損傷・損害を受けるおそれのないこと、衛生は身のまわりを清潔にして健康を保ち、病気にかからないことを意味しています。これら2つを組み合わせて行う環境づくりが、安全衛生なのです。

1-2.衛生委員会とは?

労働安全衛生法に基づき、一定の基準に該当する事業場では安全委員会・衛生委員会を設置しなければならないこととなっています。衛生委員会の場合、一定の基準とは、「常時使用する労働者が50人以上の事業場」です。衛生委員会が、職場における安全衛生を維持し続けるポイントとなります。

1-3.どんな職場に必要か?

衛生委員会は、どのような職場においても、常時50人以上の従業員が所属している職場に設置しなければなりません。職場ごとに決まっているのではなく、そこで働いている人数が関係しています。工場や工事現場・一般企業など、50人以上の従業員がいる職場が対象です。

1-4.主な目的

衛生委員会設置の目的は、労働災害防止です。たとえ、環境が整っている現場だとしても、人為的ミスによって労働災害が起きる可能性はあります。できるだけ、労働災害を起こさないためには、衛生委員会において基本となるべき対策を定めておかなければなりません。労働者の健康障害防止・健康促進のための対策など、快適かつ安全な環境づくりを行います。労働者からの意見を取りまとめつつも、労使が一体となることが大切です。

1-5.実施者について

衛生委員会の実施者は、事業者となります。常時50人以上の従業員を抱えている事業者は、衛生委員会のメンバーを指名しなければなりません。事業場の衛生委員会設置のほか、実施体制や社内規定などを労働者に知らせることが義務づけられています。

1-6.安全委員会との違い

衛生委員会と同じく、安全委員会も労働者の環境づくりに大切なものです。安全委員会の場合は、常時使用する労働者が50人以上の事業場で、林業・鉱業・建設業・清掃業など該当する業種が決まっています。また、常時使用する労働者が100人以上の場合も、設置しなければならない業種が決まっているのです。基本的に、安全委員会では、労働者の危険防止対策と労働災害の原因および再発防止対策などを検討します。

2.衛生委員会の設置について

衛生委員会の設置方法や主な活動・開催時期などについて説明します。

2-1.設置方法

衛生委員会を設置する場合は、規定や議長とメンバーの選び方について把握することが大切です。それでは、詳しくチェックしていきましょう。

2-1-1.規定について

衛生委員会の設置規定は、労働安全衛生法第18条にて定められています。常時使用する労働者が50人以上の事業所を運営している者は、速やかに設置しなければなりません。事業者は、規定に基づいて、衛生委員会のメンバーを指名します。

2-1-2.議長とメンバーについて

衛生委員会のメンバーは以下のとおりです。

  1. 総括安全衛生管理者またはそれ以外の者で、当該事業場において事業の実施を統括管理するもの、もしくはこれに準ずる者:1名(議長)
  2. 衛生管理者:1名以上
  3. 産業医:1名以上
  4. 当該事業場の労働者で衛生にかんし経験を有する者:1名以上

事業者は、事業場の労働者で、作業環境測定を実施している作業環境測定士をメンバーとして指名することもできます。議長以外の委員半数については、当該事業場に労働者の過半数で組織する労働組合・労働者の推薦に基づいて指名しなければなりません。

2-2.主な活動・開催時期

事業者は、安全委員会・衛生委員会を含めた安全衛生委員会を、毎月1回以上開催することが義務づけられています。主な活動は、労働者の健康障害防止および健康の保持増進・労働災害の防止に関する対策を講じることです。衛生に関する規定の作成や安全衛生に関する計画・実施・改善などを行います。

2-3.そのほか

衛生委員会を設置した後、事業者は労働者に向けて、委員会開催の都度や議事の概要を伝えていかなければなりません。労働者に周知させる方法は、以下のとおりが挙げられます。

  • 常時各作業場の見やすい場所に掲示し、または備えつけること
  • 書面を労働者に交付すること
  • 磁気テープ・磁気ディスク、そのほかこれらに準ずるものに記録し、各作業場に労働者が当該記録の内容を常時確認できる機器を設置すること
  • 事業者は、委員会における議事で重要なものにかかわる記録を作成して、これを3年間保存しなければならないこと

3.衛生委員会の議題について

衛生委員会で話し合う議題は、環境づくりにとても大切なことです。議題内容や開催時期との関連・議題の決め方・悩んだときの対処法について説明します。

3-1.議題について

衛生委員会の調査審議事項(議題)は幅広く、あらゆる内容が含まれています。大まかな内容は、労働者の健康を保持し、安全・安心な環境づくりを行うためにするべきことです。詳細は、労働安全衛生規則第21条および第22条をチェックしてください。

3-2.どんな議題があるか

すべてをピックアップするとキリがないため、重要な議題をいくつか紹介します。

  • 衛生に関する規定の作成について
  • 衛生に関する計画の作成・実施・評価および改善に関すること
  • 衛生教育の実施計画作成に関すること
  • 定期健康診断などの結果に対する対策の樹立に関すること
  • 長時間にわたる労働による、労働者の健康障害防止を図るための対策樹立に関すること
  • 労働者の精神的健康保持増進を図るための対策樹立に関すること

これらの内容をきちんと審議して、事業者に意見を述べることが大切です。

3-3.開催時期との関連について

衛生委員会で審議する内容と開催時期は、密接に関係しています。たとえば、労働者の健康を脅かす細菌・ウイルスが感染しやすい時期が出てくるでしょう。代表的な流行り病のインフルエンザは、冬場に感染しやすい傾向があります。労働者の健康を守るために、衛生委員会は流行時期前に対策を立てて、労働者に呼びかけなければなりません。

3-4.議題の決め方

衛生委員会における議題の決め方は、年間スケジュールの作成が大きなポイントです。年間スケジュールは、季節やその時々の状況に合わせて選ぶことがポイントとなります。たとえば、4月は5月病、5月は食中毒、6月は熱中症、7月は職場の湿温度管理など、季節・状況に合ったテーマを掲げてください。

3-5.議題に悩んだときはどうすべきか?

議題に悩んだときは、現在の職場環境を見直してみてください。労働者からの意見も取り入れて、職場の問題点をピックアップしてみましょう。できるだけ、労働者にとって快適かつ安全・安心な職場づくりをすることが衛生委員会の役目なので、現場の意見を聞くことは大切なことです。なかなか見えなかった問題点が出てきますし、解決するためには何をすべきか、対策・改善策について話し合うことができます。

4.衛生委員会に関連する資格は?

衛生委員会に関連する資格は、安全管理者・衛生管理者・産業医などが挙げられます。それぞれの資格について、詳しくチェックしていきましょう。

4-1.安全管理者

安全管理者は、労働安全衛生法第11条に基づき、一定の業種および規模の事業場ごとに選任することが義務づけられています。安全衛生業務のうち、安全にかかわる技術的事項を管理する者のことです。建設物・設備・作業場所などの危険に対する応急・防止処置や作業安全についての教育・訓練、消防および非難の訓練なども行います。

4-2.衛生管理者

労働安全衛生法に基づき、労働条件・労働環境の衛生的改善と病気予防処置などを担当するのが衛生管理者です。一定規模以上の事業場においては、衛生管理者免許・医師・労働衛生コンサルタントなどの免許を有する者から選任が義務づけられています。衛生管理者の業務内容は、労働災害の防止・自主的活動の促進・快適な職場環境の形成などです。

4-3.産業医

産業医は、事業場において労働者の健康管理などを行います。一定規模の事業場には、産業医の選任が義務づけられているのです。また、産業医は専門的な立場から指導・助言ができる、医師のような存在と言えます。具体的な職務に関しては、労働安全衛生規則第14条第1項に記しているので、ぜひチェックしてみてください。

5.衛生委員会に関してよくある質問

衛生委員会に関してよくある質問を5つピックアップしてみました。

5-1.衛生委員会の開催時間は?

衛生委員会の開催時期は、原則、業務時間内とされているため、業務時間外に行うことはできません。毎月1回、産業医が訪問する際に実施する企業が多く、およそ30~40分ほど話し合うことになります。

5-2.ストレスチェックとは?

ストレス社会と言われている現社会において、衛生委員会では「ストレスチェック」の実施が注目を浴びています。ストレスチェックとは、労働者自身の気づきを促す一次予防が目的です。労働者に対してストレスチェックを行い、改善・対策を立てます。ストレスはメンタル・身体に悪影響をおよぼすため、ストレスフリーとなる環境づくりに努めることが大切です。

5-3.理想的な衛生委員会の運用サイクルとは?

衛生委員会は、労働者・事業者全員が一体となって実施しなければなりません。衛生委員会で調査・審議を行い、人事部などで実効性の確認を取ります。その後、取締役会で職場改善に努める意志・実施計画を固めるのです。そして、再び衛生委員会で調査・審議を行うという流れが、理想的な衛生委員会の運用サイクルと言えます。

5-4.委員会設置以外に事業者がすべきことは?

対象となる事業者は委員会の設置だけでなく、安全または衛生に関する事項について、労働者の意見を積極的に聞かなければなりません。たとえば、アンケートや面談など、多くの労働者から意見を聞く機会を設ける工夫が大切です。

まとめ

衛生委員会は、その場で働いている労働者から意見を取り入れて、労働者の健康障害防止・健康促進のための対策など、快適かつ安全な環境づくりを行う委員会のことです。委員会で話し合う内容に基づき、対策や改善策を取り上げていきます。そして、実施するための取り組みを行わなければなりません。衛生委員会のメンバーは、議長や衛生管理者・産業医などで構成されます。あらかじめ、衛生委員会の目的や議題・会議内容などについて把握しておけば、スムーズに行うことができるでしょう。