健康配慮義務とは?企業における健康配慮義務を徹底解説!

健康配慮義務とは、何でしょうか。今回は、健康配慮義務について詳しく知りたい人に向けて基礎的な内容から資格に関する情報までを解説しましょう。記事を読み終えるときには、健康配慮義務の知識が身に付きますよ。

  1. 健康配慮義務に関する基礎知識
  2. 労働安全衛生法改正とストレスチェックの義務化について
  3. 健康配慮義務の詳細について学ぼう
  4. 健康配慮義務の義務違反と今後の課題
  5. 健康配慮義務に関するよくある質問
  6. 健康配慮義務の詳細について学ぼう

職場において、健康配慮義務の理解を深めることは大きなメリットがあります。健康配慮義務について正しい知識を身に付けて、仕事に役立ててください。

1.健康配慮義務に関する基礎知識

まずは、健康配慮義務に関する基礎知識を学びましょう。健康配慮義務とは何かだけでなく、準拠する法律や目的などについても理解してください。

1-1.健康配慮義務の概要

健康配慮義務とは、労働者が職場で安全かつ安心して働くことができるように配慮すべきだということです。企業が労働者を雇用するとき、生産力の向上や利益の増大を期待するのは否定できません。しかし、労働者を厳しい環境や条件で雇用することは認めてはいけないのです。企業は、健康配慮義務の規定に沿って快適な労働環境を整えるべきでしょう。

1-2.健康配慮義務を規定する法律

健康配慮義務は、労働安全衛生法で規定しています。労働安全衛生法は、労働者が職場で安全に働くことができるように1972年に制定された法律です。企業が健康配慮義務を守ることは、法律で規定があるため当然のことと理解しましょう。

1-3.健康配慮義務の目的や必要性

健康配慮義務の目的や、必要性について考えてみましょう。健康配慮義務の目的は、労働者の労働環境を適正に守ることに違いありません。また、健康配慮義務があることによって、労働災害の防止や労働中の病気を防ぐことができるのです。まずは、企業が健康配慮義務の目的や必要性をきちんと理解することが大切でしょう。

1-4.健康配慮義務が適用となる場所

健康配慮義務は、労働者を雇用する職場すべてに適用となります。企業の規模や労働者の数などにかかわらず、必ず守るべき内容だと認識しましょう。たとえば、労働者が数人だけの職場であっても、労働者の健康を守るためにさまざまな努力をするべきです。健康配慮義務によって、どんな職場で働いていても適切な労働環境が守られることを学びましょう。

2.健康配慮義務の詳細について学ぼう

では、健康配慮義務について詳しく学びましょう。内容を深く理解することは、正しい運用のためにも必要なことです。

2-1.健康配慮義務の主体とは

健康配慮義務の主体は、あくまでも労働者本人であることを忘れてはいけません。確かに、健康配慮義務は使用者への義務となります。しかし、健康配慮義務は労働者の利益を守るための意味合いからも、労働者自体が強く意識して取り組むことが重要なのです。労働者が主体となって健康配慮義務に従うことで、労働安全が守られると認識しましょう。

2-2.健康配慮義務の内容を理解しよう

健康配慮義務に関する具体的な内容については、下記をご覧ください。使用者は、労働者に対して下記の内容のすべてを配慮する義務があります。

  • 適正労働条件措置(そち)義務:労働条件を適正に保つ義務
  • 健康管理義務:健康診断やストレスチェックの実施・健康管理を啓発する義務
  • 適正労働配置義務:労働者の病歴や体調を考慮した配置をする義務
  • 看護・治療義務:病気を発症したりケガをしたりしたときに看護や治療を行う義務

上記のうち適正労働条件措置(そち)義務は、労働時間・休憩時間・休日・労働密度・休憩場所・人員配置・労働環境などを、適正に保つことを要求しています。

2-3.健康配慮義務に伴う健康診断

健康配慮義務には、定期的な健康診断の実施も含みます。労働者に対して健康診断を実施することは、病気の早期発見と治療のためにも欠かすことができません。労働者も健康診断を受けることで、健康管理に対する意識を高めることができます。健康診断の実施は、健康配慮義務を順守するためにもあらゆる意味で重要だと考えましょう。

2-4.健康配慮義務に伴うストレスチェック

健康配慮義務には、ストレスチェックの実施も含みます。健康配慮義務には、身体の健康だけでなく精神の健康に配慮することが含まれると認識してください。労災を防ぐためにも、労働者に過度のストレスが掛かった状態を見逃すわけにはいきません。使用者は、労働者に対してストレスチェックを実施することで不適切な状態を早期発見することができます。また、精神的に追い詰められている労働者に適切なケアを提供することも可能になるでしょう。

2-5.産業医について理解しよう

産業医とは、事業所において労働者の健康管理を主に行う医師です。産業医の職務は、具体的に以下となります。

  • 労働者からの健康相談を受けること
  • 定期健康診断の実施
  • ストレスチェックの実施
  • 労働者に対する衛生教育
  • 労働者が発症した健康障害の原因調査と改善努力

なお、常時雇用している者が50人以上の職場では、必ず産業医を選任しなければなりません。

2-6.健康配慮義務に関するそのほかのこと

健康配慮義務のひとつとして、労働者の休憩室や男女別のトイレの設置なども考える必要があります。労働者には、休憩時間を含めて適切な環境を用意する義務があると考えてください。なお、休憩時間に労働を強制することも違反となります。健康管理の点からも、労働者が自由に休憩するための環境を整えましょう。

3.労働安全衛生法改正とストレスチェックの義務化について

労働安全衛生法改正に伴うストレスチェックの義務化についても、解説します。労働者が安心して働くために必要なため、内容をしっかり確認してください。

3-1.労働安全衛生法改正に伴う義務化について

労働安全衛生法改正に伴って、労働者に対してストレスチェックを行うことが義務化されました。職場におけるストレスは、労働者の精神衛生に大きく影響します。企業は労働者のストレスチェックを行い、ストレスが掛かり過ぎていないか管理することも責務となったのです。

3-2.労働安全衛生法はいつ改正になったか

労働安全衛生法の改正によるストレスチェックの義務化は、平成26年6月に公布・12月に施行(しこう)になりました。つまり、ストレスチェックの義務化が明言されてからまだ日が浅いと言って良いのです。そのため、職場によってはまだストレスチェックについて十分な認識を持っていないことも珍しくありません。

3-3.メンタルヘルスおよびストレスチェックとは

メンタルヘルスとは、精神の健康を意味します。労働者のメンタルヘルスを適正に保つことは、企業にとっても生産性を維持するために大切なことと認識してください。さて、労働者のメンタルヘルスを管理するためにも、ストレスチェックを適宜行うことが大切です。また、ストレスチェックを行うことによって労働者が自分のストレス状態を知って早めに対応できるというメリットもあります。

3-4.ストレスチェックに必要な有資格者とは

労働安全衛生法に基づくストレスチェックを行うには、特定の資格が必要となります。たとえば、どんな資格が必要かについては以下を参考にしてください。

  • 医師(産業医など)
  • 保健師
  • 看護師(規定の研修を受けた者)
  • 精神保健福祉士(規定の研修を受けた者)

ストレスチェックは、労働者のメンタルヘルスを管理するための重要なものです。上記以外の人間が行うことは、認めてられていません。

4.健康配慮義務の義務違反と今後の課題

健康配慮義務に違反した場合の対応や、今後の課題についても考えてみましょう。健康配慮義務には、課題も多くあります。また、健康配慮義務に対応できる資格者についても、理解してください。

4-1.健康配慮義務の違反とは

健康配慮義務は、労働安全衛生法によって義務化となっています。つまり、健康配慮義務を怠ることは法律違反になると考えましょう。具体的には、以下のような内容があります。

  • 規定の休日や休憩を与えなかった
  • 長時間労働を強要した
  • 適切な空調管理をしなかった
  • 職場の喫煙対策を怠った
  • 健康診断の実施をしなかった
  • ストレスチェックを実施しなかった
  • 適切な休憩スペースが無い

このほかにも、使用者が健康配慮義務を怠ったことによって従業員が病気になれば健康配慮義務違反と言えます。

4-2.パワハラ・セクハラ・うつ病などの課題について

職場の上司や同僚によるパワハラやセクハラ、またはうつ病などは大きな問題です。パワハラやセクハラに対する考えは、個人によって違います。たとえば、職場で啓発会議を開くなど、労働者に対して正しい教育を行う必要もあるでしょう。また、ストレスチェックの結果などから、労働者がうつ病を発症することを防ぐ努力も必要です。労働者のメンタルヘルスを良好に保つためにも、パワハラ・セクハラ・うつ病に関してきちんと対策を行うことが必要でしょう。

4-3.健康配慮義務は企業の対応力も必要

健康配慮義務は、企業の対応力の高さも必要です。法律で決まっている内容であっても、企業がきちんと認識していない限りは、無駄になってしまいます。企業の考え方しだいで、健康配慮義務が行き届くかどうかが決まるのです。健康配慮義務を重視している企業の中には、さまざまな健康イベントを開催しているところもあります。たとえば、ウォーキングイベントを開催して労働者に日常的な運動を促すきっかけを提供するなどですね。また、定期的に健康管理や衛生管理についての社内誌を発行するなど、企業によっては健康配慮義務に関してとても力を入れていることも知っておきましょう。

4-4.健康配慮義務のために必要な資格者について

健康配慮義務のために必要な資格には、以下のものがあります。

  • 安全管理者
  • 衛生管理者
  • 産業医

上記のうち、衛生管理者資格に関しては、以下の教材で内容を深く学ぶことができます。健康配慮義務を徹底するためにも、衛生管理者資格の学習・受験をすることも考えてみてください。

5.健康配慮義務に関するよくある質問

ここでは、健康配慮義務に関するよくある質問に回答します。ほかの皆さんが疑問に持ちやすい点も、確認しておきましょう。

5-1.労働者が勤務中にうつ病を発症した場合、健康配慮義務を怠ったことになりますか?

うつ病の原因は、とても広範囲に亘(わた)ります。職場や仕事のストレスが原因のこともあれば、仕事に関係が無いこともあるでしょう。そのため、労働者が勤務中にうつ病を発症しても、健康配慮義務を怠ったとは言えません。しかし、うつ病になった原因が労働環境にあったかどうかをはっきりすることが大切です。労働環境に問題があった場合は、速やかに改善をして再発を防いでください。

5-2.職場で実施する健康診断を受けない労働者がいる場合、企業責任になりますか?

健康配慮義務の内容として、使用者は労働者に対して健康診断を実施する義務があります。また、労働者も健康診断を受ける義務があることを知っておきましょう。何らかの理由で健康診断の受診を拒否している場合、正当な理由が無い限りは企業も労働者も処罰の対処になる可能性があります。健康診断を受けない労働者には、速やかに受診するように説得しましょう。

5-3.健康配慮義務のひとつとして受動喫煙に関する対策を求めることはできますか?

喫煙者の周辺にいる人が、受動喫煙の被害に遭うことが問題になっていることをご存じでしょう。喫煙は、健康に悪いものという事実および認識があるため、喫煙スペースを設置したり社内禁煙としたりすることも健康配慮義務の範囲に入ります。もしも、職場が受動喫煙に対して対策をしていない場合は、健康配慮義務違反の可能性があるでしょう。職場に対しては、速やかに受動喫煙対策を依頼してください。

5-4.健康配慮義務違反の疑いに関する相談はどこにするべきでしょうか?

たとえば、職場に健康配慮義務違反の疑いがあるときは、本来なら産業医や衛生管理者などに相談したり改善要求をしたりすることになります。しかし、どんな手段をしても社内で問題解決できないときは外部に相談してください。なお、健康配慮義務違反に関する相談先は、下記となります。

参考:厚生労働省の働く人のメンタルヘルス・ポータルサイトこころの耳のホームページ

5-5.健康配慮義務が行き届いた企業に転職するメリットは?

健康配慮義務に関して積極的に考えている企業は、労働者にとって働きやすい労働環境が整っている証拠となります。労働者の健康管理や労働環境の整備に力を入れていたりする企業に就職することは、自分自身の健康にも大きなメリットとなると考えて良いでしょう。働きやすい職場で健康に暮らしたいのなら、健康配慮義務に対する姿勢をチェックしてください。

まとめ

今回は、健康配慮義務についてあらゆる点から解説しましたがいかがでしょうか。今、記事を読み終えた皆さんは、健康配慮義務について深い知識が身に付いているはずです。健康配慮知識について詳しくなることは、職場の安全衛生の点でとても有意義なことと言えるでしょう。健康配慮義務は、労働安全衛生法で規定のある内容です。法律を守るためにも、衛生管理者の資格取得も考えてくださいね。