衛生管理者の種類にはどんなものがある? 資格取得の方法やコツを詳しく!

「衛生管理者の資格に興味があるが、種類や違いを知りたい」とお考えではありませんか。衛生管理者は、職場における衛生管理の専門家として必要な資格です。しかし、衛生管理者は、種類ごとに受験資格や職務・資格取得方法が異なります。

そこで今回は、衛生管理者の種類と取得方法について詳しく解説しましょう。

  1. 衛生管理者の種類
  2. 衛生管理者の職務や選任義務
  3. 第一種・第二種衛生管理者は国家試験を受験
  4. 衛生工学衛生管理者の所定の講座を受講する
  5. ​衛生管理者の種類に関するよくある質問

この記事を読むことで、衛生管理者の種類についてよく分かり、資格取得に向けて効率よく準備することができます。まずは、記事を読んでみてください。

1.衛生管理者の種類

最初に、衛生管理者の種類やそれぞれの違いなどを見ていきましょう。

1-1.衛生工学衛生管理者

衛生工学衛生管理者は、法定の有害業務のうち、一定の業務を行う有害業務事業場(多量の高熱物体を取り扱う業務など)で選任されることができます。また、常時1,000人を超える労働者を使用する事業場などでは、衛生管理者のうち1人を必ず衛生工学管理者免許を持つ者から選任することが必要です。

1-2.第一種衛生管理者

第一種衛生管理者は、農林畜水産業・鉱業・建設業・製造業などの指定業種を含む職場で、衛生管理者として選任可能です。ただし、法定の有害業務のうち一定の業務を行う有害業務事業場では、単独で衛生管理者に選任できません。なお、第一種衛生管理者試験に合格した者は、衛生工学衛生管理者取得のための講座の受講資格を得ることができます。

1-3.第二種衛生管理者

第二種衛生管理者は、ビル管理・小売・宿泊施設などで衛生管理者に選任可能です。一般的に、危険業務を伴うことがなく、衛生管理者の中では最も初心者向けの資格となります。最初に第二種を取得して衛生管理者としての実務経験を積めば、第一種衛生管理者や衛生工学衛生管理者の取得にも役立つでしょう。

2.衛生管理者の職務や選任義務

衛生管理者の主な職務や選任義務のある職場について解説します。

2-1.衛生管理者の職務

衛生管理者の主な職務には、以下のようなものがあります。

  • 労働者の安全と健康の確保
  • 作業環境の管理
  • 労働衛生教育の実施

また、少なくとも毎週1回職場を巡視し、衛生管理が適切に行われているかチェックする義務があります。

2-2.常時50人以上の従業員が在籍する職場で選任義務がある

常時50人以上の従業員が在籍する職場では、所定人数以上の衛生管理者を選任する義務があります。具体的には、以下を参考にしてください。

  • 50~200人:1人
  • 201~500人:2人
  • 501~1,000人:3人
  • 1,001~2,000人: 4人
  • 2,001~3,000人:5人
  • 3,001人~:6人

事業所は上記の選任義務が発生した時点から、14日以内に衛生管理者を選任し、所轄の労働基準監督署に申請する必要があります。なお、より詳しい内容については、厚生労働省の衛生管理者ページを参考にしてください。

3.第一種・第二種衛生管理者は国家試験を受験

第一種・第二種衛生管理者を取得するには、国家試験を受験することになります。

3-1.受験には所定の学歴や実務経験が必要

第一種・第二種衛生管理者の受験資格には、以下のようなものがあります。

  • 大学・短期大学・高等専門学校を卒業後1年以上労働衛生の実務経験がある
  • 高等学校・中等教育学校を卒業後3年以上労働衛生の実務経験がある
  • 10年以上労働衛生の実務経験がある

そのほかの受験資格については、公益財団法人安全衛生技術試験協会の受験資格ページを参考にしてください。

3-2.全国7か所の会場で毎月1回以上の受験チャンス

試験日程:第一種・第二種とも毎月1~5回程度
受験地:全国7か所の安全衛生技術センター(北海道・東北・関東・中部・近畿・中国四国・九州)
受験料:第一種・第二種共に6,800円
申し込み方法:受験申請書を郵送もしくは各安全衛生技術センターの窓口に持参

なお、より詳しい内容は公益財団法人安全衛生技術試験協会のホームページをご覧ください。

3-3.試験は3科目合計3時間の筆記試験

衛生管理者の試験内容は、以下を参考にしてください。

  • 試験時間:第一種・第二種共に3時間
  • 試験科目:労働衛生(第一種17問・第二種10問)・労働生理・関係法令(第一種17問・第二種10問)
  • 実地試験:なし
  • そのほかの注意点:筆記試験は5肢択一のマークシート方式

3-4.各科目40%以上・合計60%以上の得点率が必要

衛生管理者の合格基準は、第一種・第二種共に、各科目40%以上・合計で60%の得点率となります。ひとつでも合格基準に達しない場合は、不合格です。確実に合格するためには、不得意科目を作らないよう、まんべんなく試験対策することが必要でしょう。なお、平成29年度の合格率は、第一種が45.0%・第二種が54.9%です。受験資格に実務経験が問われることを考慮すると、難易度は中程度と言えるでしょう。

3-5.過去問を繰り返し解き良質の教材で得点力を高める

衛生管理者に合格するためには、基礎知識を身につけると共に、過去問を繰り返し解いて得点力を高めましょう。過去問は、公益財団法人安全衛生技術試験協会の公表試験問題ページからダウンロードできます。過去問を解くことは、試験の出題形式に慣れ、苦手分野を発見するという意味でも重要です。苦手分野は、市販の教材で評判の良いものを利用し、早めに克服してください。

4.衛生工学衛生管理者の所定の講座を受講する

衛生工学衛生管理者の資格取得方法を詳しく解説します。

4-1.資格取得には所定の講座を受講・修了する

衛生工学衛生管理者になるためには、第一種衛生管理者を取得後、所定の講座を修了することで取得可能です。全科目修了者には修了証が交付されます。その後、管轄する都道府県労働局長に免許申請すると、衛生工学衛生管理者免許が取得可能です。

4-2.第一種衛生管理者に合格済みなどの受講資格が必要

衛生工学衛生管理者の講座は、以下のような受講資格が必要です。

  • 大学または高等専門学校で工学または理学に関する過程を修了・卒業した者
  • 職業能力開発総合大学校における長期課程の指導員訓練を修了した者
  • 第一種衛生管理者に合格した者
  • 大学で保健衛生に関する学科を専攻し卒業した者で、労働衛生に関する講座または科目を修めた者
  • 労働衛生コンサルタント試験に合格した者
  • 作業環境測定士となる資格を有する者

4-3.5日間受講の場合は116,640円の受講料

衛生工学衛生管理者の講座概要や内容は、以下をご覧ください。

  • 受講日程:5日~半日(受講資格の内容による)
  • 受講地:札幌・仙台・東京・名古屋・大阪・広島
  • 受講科目:労働基準法 ・労働安全衛生法・労働衛生工学に関する知識 ・職業性疾病の管理に関する知識 ・労働生理に関する知識
  • 受講料:東京安全衛生教育センターの場合5日間で116,640円

より詳しい内容は、東京安全衛生教育センターの受講案内ページを参考にしてください。

4-4.受講科目免除や受講費用が軽減できるか確認しよう

衛生工学衛生管理者の講座は、現在取得済みの資格により以下のように受講科目の免除を受けることができます。また、受講科目の免除に伴い受講費用も軽減可能です。

  • 第一種衛生管理者免許試験に合格した者:労働衛生工学に関する知識・職業性疾病の管理に関する知識を4日間受講、87,480円
  • 労働衛生コンサルタント試験(保健衛生)に合格した者:労働基準法・労働衛生工学に関する知識を3日間受講、70,200円
  • 作業環境測定士となる資格を有する者:労働基準法・職業性疾病の管理に関する知識・労働生理に関する知識を2日間受講、47,520円

なお、より詳しい内容は東京安全衛生教育センターの衛生管理講座案内ページを確認してください。

5.衛生管理者の種類に関するよくある質問

最後に、衛生管理者の種類に関する質問に回答します。それぞれ確認しておいてください。

Q.第一種衛生管理者は第二種の取得義務がある?
A.ありません。第一種は第二種の上位資格ですが、第二種を取得しなくても問題なく受験できます。

Q.第二種衛生管理者を取得しただけではダメ?
A.一般企業のオフィスなどで働く場合は、第二種衛生管理者だけの取得でも問題ありません。製造業・電気業・ガス業・水道業など特定企業で活躍するためには、第一種や衛生工学衛生管理者の取得が必要です。

Q.衛生管理者は更新が必要?
A.一度取得した後は、全種類で更新は不要です。ただし、本籍地・氏名・国籍に変更があったときは、免許の書き換えが必要になります。

Q.衛生工学衛生管理者を取得するメリットは?
A.以下のようなメリットがあります。衛生管理のスペシャリストを目指すのなら、取得を目指して損はないでしょう。

  • すべての業種で選任可能となり専門性が高くなる
  • 就職・転職に有利
  • 年収アップや昇進の手がかりになる

Q.第一種・第二種衛生管理者を併願することは可能?
A.できません。いずれの試験も、午後から同時間帯に行われるからです。両方の取得を希望する場合は、日程をずらして受験してください。

まとめ

今回は、衛生管理者の種類について詳しく解説しました。衛生管理者には、衛生工学衛生管理者・第一種衛生管理者・第二種衛生管理者の3種類があります。衛生工学衛生管理者は所定の講座を受講し、修了することで取得可能です。第一種衛生管理者・第二種衛生管理者は国家試験に合格する必要があります。いずれも、受講資格・受験資格を満たしているか確認してください。将来、衛生管理者として幅広く活躍するためには、製造業などで選任可能な第一種衛生管理者・全業種で選任可能な衛生工学衛生管理者の取得をおすすめします。