衛生管理者の兼務の条件について解説! どのような条件ならば兼務可能?

衛生管理者とは、従業員が健康かつ衛生的に仕事ができるよう、職場環境を整える職務を担うための国家資格です。職種を問わず、50名以上の従業員が所属している事業所には選任が義務づけられているため、取得すれば転職などに役立ちます。資格取得を目指して勉強に励んでいる人もいるでしょう。一方、事業所の中には「衛⽣管理者の数が足りないので、2つの事業所で兼務してほしい」と考えているところもあると思います。そんなことはできるのでしょうか?

そこで、今回は衛生管理者の選任条件について解説します。

  1. 衛生管理者の選任条件は?
  2. 衛生管理者が兼務を認められる条件
  3. 衛生管理者の資格取得方法
  4. 衛生管理者の兼務に関するよくある質問

選任条件を詳しく知ることができれば、不測の事態が起きたときも対応に悩むことはありません。衛生管理者の選任条件を詳しく知りたい人は、ぜひ読んでみてくださいね。

1.衛生管理者の選任条件は?

はじめに、衛生管理者の仕事内容や選任条件を紹介します。衛生管理者には第一種と第二種がありますが、行える仕事内容に変わりはありません。

1-1.衛生管理者の仕事と選任条件

衛生管理者の仕事には、以下のようなものがあります。

  • 週に1度の職場巡視
  • 従業員への衛生教育
  • 衛生委員会(安全衛生委員会)の設立と運営
  • 健康診断の計画と実施、結果の管理
  • ストレスチェックの実施補助
  • 産業医と従業員の橋渡し
  • 労働災害が起こった際、再発防止に努める

また、前述したように衛生管理者は、職種問わず従業員が50名以上所属している事業所に選任が必要です。なお、200名以上500名未満の事業所には2人、500人以上1,000人未満の事業所では3人の選任が必要になります。従業員の雇用形態は関係ありません。正社員1名にパートやアルバイトが49人でも、選任は必要です。

1-2.衛生管理者の専属について

衛生管理者は、原則として専属です。複数の事業所を1名の有資格者が「衛生管理者」として兼務することは認められません。ただし、従業員が200名以上所属している事業所で2名の衛生管理者が選任され、そのうち1人が労働衛生コンサルタントの資格を有している場合、もう1名は専属でなくて大丈夫です。そのほか、兼務が許される条件については、次の項で詳しく紹介します。

1-3.衛生管理者の雇用形態について

衛生管理者は、原則として正社員が選任されます。ただし、第二種衛生管理者が衛生管理を行うことのできる職場では、条件付きで派遣社員も選任が可能です。パートやアルバイトは選任できません。また、施設長などの役職についている人が衛生管理者を兼ねることはできます。

2.衛生管理者が兼務を認められる条件

以下のような場合は、衛生管理者が複数の事業所で兼務を認められます。

  • 親会社が分割して子会社を作り、子会社の事業所が親会社の事業所の一部を分割された場合
  • 親事業者の事業所と子事業者の事業所が同一敷地内であるか、隣接している場合
  • 親会社と子会社の事業内容が分社化前に比べて変わりない場合
  • 分社化しても、安全衛生に関する協議組織が設置されるなど安全衛生管理が親会社と子会社で相互に密接して行うことができる場合

つまり、1つの事業所が2つに分かれ、なおかつ業務の内容に変化がなく事業所が密接している場合などは、兼務が可能です。ただし、可能ならばできるだけ早く1事業所に1人ずつ衛生管理者を選任しましょう。もし、分からないことがあった場合は、管轄の労務局に相談してください。

3.衛生管理者の資格取得方法

この項では、衛生管理者の資格取得方法を紹介します。

3-1.衛生管理者の資格取得方法は2つ

衛生管理者を取得するには、安全衛生技術試験協会が主催する試験に合格するか、医師・薬剤師・保健師などの資格を取得し、各都道府県の労働局に申請を行いましょう。ただし、医師・薬剤師・保健師の資格を取得後に申請した場合、取得できるのは第一種だけです。

3-2.衛生管理者の試験の特徴

衛生管理者の試験は、全国の安全衛生技術センターでほぼ毎月実施しており、1年に何度受験してもかまいません。また、全国どこでも受けることができます。東京や大阪など大都市にあるセンターでは月に複数回試験が行われるので、国家試験の中では最も受験しやすいでしょう。

ただし、試験会場には定員が定められており、定員に達すると試験を申し込める期間の最中でも募集が締め切られます。試験の申し込みは試験日の1か月前から行えますが、土日祝日に試験を受けたい場合は、早めに申し込みを行うことが大切です。まずは安全衛生技術試験協会のホームページから、正確な試験日を確認しましょう。

なお、年に1度、安全衛生技術センターがない県でも出張試験が行われます。センターが遠方という場合は出張試験を利用してください。

3-3.衛生管理者試験の受験資格について

衛生管理者の資格試験を受けるには、衛生管理の実務経験が必要です。実務経験の長さは、学歴によって異なるため、詳しくは、安全衛生技術試験協会のホームページを確認してください。

受験資格を満たしている人は、まず全国の安全衛生技術センターや安全衛生技術試験協会で配布されている願書を入手しましょう。ホームページで郵送を申し込むこともできます。願書が手に入ったら必要事項を記入し、実務経験を証明する書類と学歴証書(卒業証書など)を添付して、試験を受けたい安全衛生技術センターに送付しましょう。電子申請は行っていません。受験料は、第一種・第二種とも6,800円です。

3-4.衛生管理者試験の勉強方法

衛生管理者の試験科目は、「労働衛生」「関係法令」「労働生理」の3科目です。資格区分による違いはありません。試験は過去問と似たような問題が出されることが多く、独学でも参考書や過去問題集があれば合格に必要な知識を身につけることができます。

4.衛生管理者の兼務に関するよくある質問

この項では、衛生管理者の兼務に関するよくある質問を紹介します。

Q.衛生管理者の兼務は、第一種・第二種どちらの資格区分でも可能ですか?
A.はい。可能です。第一種は兼務不可という決まりはありません。

Q.事業所は、どこまで近ければ兼務が可能ですか?
A.具体的な数値は定められていませんが、徒歩で移動できる距離と考えておきましょう。

Q.衛生管理者と安全管理者を2つの事業所でかけもつことはできますか?
A.いいえ。できません。

Q.衛生管理者を兼務する場合、何か所まで兼務できますか?
A.2か所までと考えておきましょう。

Q.どうしても衛生管理者の有資格者が見つからない場合、期間限定で兼務できる条件を満たしていない事業所へ、衛生管理者を兼務させることはできますか?
A.基本的にはできません。最寄りの労務局や労働基準監督署にまず相談し、対策を立てましょう。従業員に資格を取得してもらうのが一番の方法です。

まとめ

今回は衛生管理者の兼務について解説しました。事業が大きくなって事業所を分割する場合、衛生管理者が一時的に不足する事態が起こりやすくなります。兼務は条件付きで認められていますが、できる限り避けたほうがいいものです。衛生管理者の試験は年間を通して行われているので、可能ならば従業員に衛生管理者の資格を取得してもらいましょう。