労働衛生学の基本知識! 労働衛生の3管理について!

労働衛生学は私たちの健康に大きくかかわる学問です。興味を持っている方も多いと思います。労働衛生学と言えば、『労働衛生の3管理』が基本です。詳しく知りたいと思っている方も多いことでしょう。

そこで、今回は労働衛生の3管理とは一体どのようなものなのか、簡単に解説していきたいと思います。ぜひ、最後までお付き合いください。

目次

  1. 労働衛生学と労働衛生の3管理
  2. 作業環境管理について
  3. 作業管理について
  4. 健康管理について
  5. 労働衛生教育について
  6. 統括管理について

1.労働衛生学と労働衛生の3管理

労働衛生学とは、産業活動における労働者の病気やケガを予防・解明することで、労働者の健康を維持する学問。別名で『産業保健学』や『産業医学』とも呼ばれているようです。

かつては職業病を主な対象として原因究明と対策を行っていましたが、現在は事務作業なども含めて労働者の総合的な健康増進を図るものとなっています。

1-1.労働衛生の3管理とは

基本的に労働衛生は『作業環境管理』、『作業管理』、『健康管理』の3管理から成り立っています。この3管理に『労働衛生教育』と『総括管理』の2管理を加え、5管理(3管理+2管理)とすることもあるようです。

2.作業環境管理について

労働者を雇用し企業活動を行う事業所は、その事業内容により労働環境は異なります。労働者の身体に悪影響を与える労働環境ではないように、事業主は管理していかなくてはいけません。

その義務の1つとして、有害因子に対するリスクの評価やリスクの低減を労働安全衛生法にのっとり管理する作業を『作業環境管理』といいます。

有害因子の例

  • 放射性物質
  • 化学物質(有機溶剤・特定化学物質・有害金属類)
  • 粉じん
  • 電離放射線
  • 電磁波
  • 有害光線
  • 騒音
  • 振動
  • 高温
  • 低温
  • 高湿

作業環境管理を進めるためには、作業環境において上記のような有害因子がどの程度存在し、その作業環境で働く労働者がこれらの有害な因子にどの程度さらされているのかを把握しなければなりません。この把握作業を『作業環境測定』と呼んでいます。

2-1.作業環境測定での評価基準

作業環境測定では、どのような基準でどのように評価されるのでしょうか。

作業環境測定では『作業環境評価基準』により、『第1管理区分』、『第2管理区分』、『第3管理区分』に分けて評価されます。

  • 第1管理区分……作業環境管理が適切であると判断される状態
  • 第2管理区分……改善の余地があると判断される状態のこと
  • 第3管理区分……作業環境管理が適切でないと判断される状態

作業環境測定を行った際に第2管理や第3管理の区分となった作業場所においては、すべての労働者(派遣・パート社員等を含む)に作業環境測定の結果を開示する必要があります。

また、2012年10月1日に『女性労働基準規則』の改正版が施行され、対象とする物質の作業環境測定において第3管理区分となった場合は女性の労働が禁止となりました。

2-2.作業環境測定を行うべき10の作業場

  1. 土石、岩石、鉱物、金属または炭素の粉じんを著しく発散する屋内作業場
  2. 暑熱、寒冷または多湿の屋内作業場 
  3. 著しい騒音を発する屋内作業場
  4. 坑内作業場(炭酸ガスの停滞場所・通気設備のある坑内・28℃以上の場所) 
  5. 中央管理方式の空気調和設備を設けている場所 
  6. 放射線業務を行う作業場(放射線業務を行う管理区域・放射性物質取扱作業室・坑内核原料物質採掘場所) 
  7. 第1類もしくは第2類の特定化学物質を製造、または取り扱う屋内作業場 
  8. 粉状の鉛、または溶融鉛を取り扱う屋内作業場 
  9. 酸素の欠乏する危険な作業場 
  10. 有機溶剤を製造、または取り扱う屋内作業場

3.作業管理について

作業管理とは、環境を汚染しないような作業方法や、有害要因のばく露や作業負荷を軽減するような作業方法を定めて、それが適切に実施できるように管理することです。しかしながら、労働の内容によっては軽減が困難なものも存在するでしょう。その場合は服装や器具、作業手順などを工夫して適正化します。

適正化する対象

  1. 作業量、作業強度
  2. 作業姿勢、動作
  3. 緊張度、単調度
  4. 拘束時間、実労時間、連続作業時間、休憩時間
  5. 年間労働時間、休日、交代勤務
  6. 作業手順、作業基準
  7. 疲労、ストレス調査
  8. 労働衛生保護具の選定、配置、点検、装着指導

4.健康管理について

健康管理とは主に以下のようなことをすることです。

  • 労働者個人個人の健康の状態を健康診断により直接チェックする。
  • 健康の異常を早期に発見する。
  • 健康以上の進行や増悪を防止する。
  • 元の健康状態に回復するための医学的、および労務管理的な対応をとる。
  • 労働者の高齢化に伴って健康を保持増進して労働適応能力を向上する。

これらを達成するために、事業者は、労働者に対して1年に1回の定期健康診断を実施しなければいけません。また、労働者側も、健康診断を受診する義務があります。そのほか、深夜業等に従事する労働者、有害物を取り扱う労働者については、特別な健康診断を実施しなければいけません。

健康診断を実施した後はその結果を受診した労働者に通知するとともに、結果を記録・保存する必要があります。また、健康診断の結果について医師の判断を仰ぎ、必要な処置を行わなければなりません。

5.労働衛生教育について

労働災害を防止するためには、有害物質などの物的要因を除去することが最も大切なことです。しかし、同時に人的要因の排除も大切。そのためには、作業者に対して労働衛生管理体制や労働衛生3管理について教育し、正しく理解してもらう必要があります。この教育が労働衛生教育です。

6.統括管理について

労働衛生管理の中で最も重要なのは『労働衛生3管理』です。しかしながら、総合的に労働衛生対策を効果的に進めるためには、産業医や衛生管理者等の労働衛生専門スタッフが連携をとっていかなければいけません。そこでピックアップされるのが総括管理です。

総括管理は、『健康管理』、『作業管理』、『作業環境管理』、『労働衛生教育』が、適切に展開されるために必要な職務。労働衛生管理体制の構築、労働衛生関係諸規則の整備、年間計画の策定など、労働衛生管理の基盤整備にかかわります。

まとめ

いかがでしたか?

今回は労働衛生の3管理についてご紹介しました。

  1. 労働衛生学と労働衛生の3管理
  2. 作業環境管理について
  3. 作業管理について
  4. 健康管理について
  5. 労働衛生教育について
  6. 統括管理について

まとめると、以下のようになります。

『労働衛生学』とは、産業活動における労働者の病気やケガを予防・解明することで、労働者の健康を維持する学問です。労働衛生は『作業環境管理』、『作業管理』、『健康管理』、『労働衛生教育』、『総括管理』から成り立っています。

『作業環境管理』とは、作業環境における有害要因の状態を把握し、できるかぎり良好な状態で管理していくことです。作業環境における有害因子の状態を把握するには、作業環境測定が行われます。

『作業管理』とは、環境を汚染しないような作業方法や、有害要因の解明や作業負荷を軽減するような作業方法を定めること。また、それが適切に実施できるように管理することです。

『健康管理』とは、労働者個人個人の健康の状態を健康診断によりチェックすることで、病気の早期発見や進行を防止し、元の健康状態へ回復させること。

『労働衛生教育』とは、作業員に対して労働衛生管理体制や労働衛生3管理について教育することです。

『統括管理』とは、上記の4管理が適切に展開されるために、労働衛生管理体制の構築や年間計画の策定などにかかわる職務をいいます。

何となく理解はできましたか? 少々複雑ですが、しっかりと覚えておきましょう。